現在の中国でもっとも注目を集めている言葉の1つに「匠の精神」を挙げることができる。中国人旅行客が日本で電気炊飯器や温水洗浄便座などを爆買いしたことに対し、中国国内では「日本の製品が細部までこだわって造られており、それは日本人に匠の精神があるからだ」とする論調が高まったためだ。
中国メディアの中国青年報はこのほど、中国にとって高速鉄道こそ「匠の精神」を代弁する存在であり、中国高速鉄道は今や「世界を追う立場」から「追われる立場」になったと主張した。
記事は、世界の高速鉄道は1964年に日本で誕生したと指摘する一方、「その後はしばらく局地的な発展にとどまった」と主張。国土が大きく、人口も多い中国において、高速鉄道が導入されたことで「高速鉄道は一部の人が使用する交通機関から大衆向けの交通機関へと発展を遂げた」などと論じた。
さらに、中国は世界最長の高速鉄道網を有するだけでなく、世界最高の技術を掌握し、「高速鉄道帝国における匠となった」などと主張。さらに、中国は匠の精神によって、「ものづくりにこだわると同時に、細部までこだわる理念と追求心を示した」としたうえで、「世界最先端の技術を吸収し続けることも匠の精神によるもの」と主張した。
中国高速鉄道は新幹線をはじめとする各国の技術が導入されていることは周知のとおりだが、こうした技術の導入も「匠の精神によるもの」とした。2011年に温州市で発生した高速鉄道の衝突脱線事故のことには一切触れず、掌握したと主張する技術を以って中国高速鉄道は世界市場へと歩みを加速させているなどと主張した。
また記事は、中国が「技術を導入する立場」から「技術を輸出する立場」へとごく短期間で「華麗に転身した」などとしたうえで、こうした「華麗な転身」は中国高速鉄道に匠の精神があったからこそ成し遂げられたのだと論じた。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)