ニューヨークで開催された第3回 Socially Relevant Film Festival New York で、話題のドキュメンタリー映画『センス・ザ・ウィンド(原題) / Sense the Wind』について、クリスティン・ノウルトン監督が24日(現地時間)に行ったインタビューで語った。
本作は、アメリカの4人の視覚障害者の小型ヨット選手マット・チャオ、ナンシー・ジョディン、フィリップ・クム、インキアラ・センガリが、2013年に日本の神奈川県三浦市三崎町で開催されたブラインドセーリング世界選手権で活躍するまでの日々の生活とトレーニングをつづった作品。
ノウルトン監督は、健常者がすることをマットがこなしていることに驚かされたという。「それはマット自身が困難を乗り越え、一生懸命仕事をして成果を出してきた家族に育てられたから。エンジニアだった彼の父親は中国を離れ、後にアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)で働いた。彼の母親は英文学で博士号を得て、バーモント州のベニントン大学で教鞭をとりながら3人の息子を育てたの。マットは早産で生まれたため視力を失い、それ以降人生を異なった形で経験することになった。彼の母親は彼に他の視力のある兄弟と同様の期待を持っていて、彼は家で隔離されたり、守られたりはしていなかった」と述べた。
チームの構成と担当について「レースのヨットはJ/24(全長7.4m)で競い合い、ブラインドセーリングチームは4人で編成されるの。そのうち2人の視覚障害者がかじ取りと大きい帆を操って、2人の晴眼者(視覚に障害のない者)が小さい帆と視覚障害者の眼の役割を担当し、他のヨットと接触しないか、また折り返し地点までの距離などの状況を説明する。その時に視覚障害者は、視覚以外の感覚を研ぎ澄まして操っていて、風を頬や髪で感じているわ。他のヨットの動きや波のぶつかり具合も音で判断したりするの」と説明した。
観客に伝えたいことは「(人の)障害ではなく、能力に重点を置いている。本作を鑑賞して、視覚障害者を白い杖や車椅子などの過去の先入観ではなく、彼らの未知の才能、可能性、そして成果を通して、観客に影響を与えたい。彼ら視覚障害者は人生での可能性、勇気、情熱を示してきた。本作は豊潤なキャラクターによる希望を与えるドキュメンタリーなの。ポジティブなメッセージは世界の暴力、不和、そして否定的なことなどの解毒剤になる。われわれは人の物語を通して、お互いを高揚させ、喜びを広められるわ」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)