iPSから皮膚組織=マウスで成功、再生医療期待―理研など | ニコニコニュース

 マウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、毛を生み出す「毛包」などを含む皮膚組織を丸ごと再生したと、理化学研究所や北里大、オーガンテクノロジーズ社などの研究チームが1日付の米科学誌サイエンス・アドバンシーズに発表した。将来、人のiPS細胞から皮膚組織ができれば、重いやけどや負傷、脱毛症の再生医療に使えると期待される。

 理研の辻孝チームリーダーらは、大半の臓器が胎児期に上皮細胞と間葉細胞の相互作用でできることに着目し、試験管のコラーゲンゲルの中で再現する「器官原基法」を2007年に発表。これまでにマウス胎児の細胞から歯や涙腺、唾液腺を再生し、成体マウスや人間の毛包幹細胞から毛髪の再生に成功した。

 辻リーダーらは今回、マウスのiPS細胞を使用。1週間培養すると外側に上皮細胞、内側に間葉細胞がある球状の固まり「胚様体」ができた。コラーゲンゲルに胚様体を約30個入れ、生きたマウスの腎臓皮膜下に移植すると1カ月後、移植した物の内部に皮膚組織ができた。

 毛が生えない免疫不全マウスの背中に移植した結果、血管や神経が接続して定着した。毛が自然に生え替わり、少なくとも3カ月はがんにならなかった。

 辻リーダーは「人のiPS細胞から完全な皮膚を作り再生医療に使うには、安全性を確保するため試験管内で作る必要がある」と話している。試験管で培養できる組織の大きさは現在、約5ミリが限界。血管を作るなどして組織内部に酸素と栄養を供給する技術の開発が課題となる。