犯罪被害者に届かない加害者からの「賠償金」…支払わせるためには何が必要か? | ニコニコニュース

犯罪被害者に届かない加害者からの「賠償金」…支払わせるためには何が必要か?
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犯罪の加害者から被害者への「賠償金」が支払われない例が相次いでいると、朝日新聞が3月中旬に報じた。民事裁判で損害賠償命令が確定しても、支払われないまま、10年の時効を迎える前に再提訴を余儀なくされる遺族もいるという。

2003年に飲酒ひき逃げ死亡事故をおこした加害者の男性に対して、大分地裁は3月15日、約5000万円の賠償を命じる判決を言い渡した。毎日新聞の報道によれば、一度勝訴し同額の賠償命令が確定したものの、10年間支払いがなく、時効を迎えるために被害者が提訴していた。

遺族からは、賠償金を支払わせるための「履行措置」を望む声もあがっている。賠償金を支払わせるためには何が必要なのだろうか。宇田幸生弁護士に聞いた。

●損害賠償請求権は10年で時効

「犯罪の被害を被った場合、被害者やそのご遺族は、加害者に対し、不法行為に基づき損害賠償を請求することができます。そしてこのような場合、裁判所で高額の損害賠償を認める判決が下されることも珍しくありません。

しかし、判決は、加害者の財産から合法的に取り立てをしても良いという『許可証』としての意味しかなく、加害者に取り立てるべき財産がなければ、取り立ては事実上困難と言わざるをえません。

さらに判決で認められた損害賠償請求権は10年で時効となります。時効を止めるため、改めて裁判を起こすことになれば、それだけでも莫大な印紙代がかかります(1億円の場合32万円)。

多大な時間や労力を費やしてせっかく勝訴判決を得たとしても、現実に賠償金を取得できないのでは、司法制度そのものの信頼まで失いかねません」

●国が給付して、加害者に対して取り立てる

そこで、宇田弁護士は「国をあげて新たな法律や制度を作るべきだ」として、次のような提言をする。

「新たな制度としては、例えば、判決で命じられた金額について国が給付金として被害者に立替えて支払い、国が加害者に対して取り立てをするという制度が考えられます。

すでに兵庫県明石市では、平成26年4月に改正された被害者支援条例において、300万円を限度として判決で命じられた金額を被害者に支払い、かわりに明石市が給付した金額を加害者から取り立てるという画期的な制度も創設されています。

もっとも、最終的に加害者に財産がなければ、市としても取り立てはできず、被害者に給付した分の財源は税金に頼らざるを得ないという問題はあります。

そのため、制度設計にあたっては、誰もが犯罪被害者になりうるという観点のもと、国民の理解と協力を得ることが必要不可欠と考えます」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
宇田 幸生(うだ・こうせい)弁護士
愛知県弁護士会犯罪被害者支援委員会委員長。殺人等の重大事件において被害者支援活動に取り組んでおり、近時出版した著作「置き去りにされる犯罪被害者」(内外出版)では、本問題に対しての解決策についても紹介している。

事務所名:宇田法律事務所


事務所URL:http://udakosei.info/