「専業主婦という選択肢はどう転んでもない。結婚するしないは関係なく、働き続けるのがたぶんデフォルト。それが私たちの世代の女子の実感だと思う」
とくに打ちひしがれるでもなく淡々とそう語るのは、都内の大学に通う3年生のリコさん(20)。専攻は社会学。現在は就職活動の真っ最中だが、周囲を見渡しても「結婚までの腰掛け」気分で就活している女子はひとりもいないという。
■ バリキャリじゃなくて、リスクの問題
一昔前、「私は一生働いていく」というスタンスの女子は、バリバリとキャリアを積み重ねる、いわゆる“バリキャリ”志向と呼ばれていた。さらにはその反動からか「若い女性の専業主婦願望が高まっている」というニュースが話題になった時期もあった。だが、リコさんはそのどちらでもない。
「たんにリスクの問題です。だって今の日本の経済や社会について調べれば調べるほど、一生ひとりの男に養い続けてもらえる見込みなんてどこにもないじゃないですか(笑)。たとえ高収入の男と結婚できたとしても、不況で彼の年収が激減したら? その会社が倒産したら? 夫が浮気して離婚を突きつけられたら? わりとすぐ人生崖っぷちになっちゃうでしょ。女も男も、リスクに備えて生きていくなら経済力は手放すべきじゃないと思う」
■ 出産は20代のうちに済ませておきたい
ここ数年、リコさんのように冷静に将来を見た上で、「結婚は逃げ場になり得ない」と考える20代女子が増えているという。出版社に勤めるハルホさん(25)もそのひとり。彼女の目下の目標は、「20代のうちに結婚・出産を済ませること」だ。
「うちの会社の30・40代の女性の先輩たちを見ていると、仕事を優先させて結婚・出産を後回しにしている人ばかり。でも卵子も老化するわけだし、年齢が進むほど子どももできづらくなるじゃないですか? 実際、『☓☓さん、いま不妊治療やってるらしいよ』って噂もよく耳に入ってくる。41歳で1人目を出産した先輩は、育児と仕事の両立がめちゃくちゃ大変そうで育休明けに復帰したときはドッと老けこんでましたし。それなら体力がある20代のうちに産んで、仕事を頑張るのはその後でもいい気がする」
産休・育休を取るとなると、キャリアに約1年のブランク期間ができる。だが、これから一生働き続けていくのなら、20代で休もうと40代で休もうとたいして違いはない、むしろ20代で結婚・出産というライフイベントを済ませていくほうが賢明だとハルホさんは考えている。
「だって“産む体”的には20代のほうが圧倒的に有利じゃないですか。もし子どもができづらい体だとわかって不妊治療をすることになっても、それだって早いほうが絶対にいい。私の同僚や大学時代の友人も、わりとこういう考え方をしてる子が多いですよ」
確かに妊娠・出産という観点から考えるなら、いくら個人差があるとはいえ20代の体のほうが圧倒的に有利。それに仮に離婚してシングルになったとしても自分と子どもの食い扶持は確保しておくほうが安心だ。リコさん、ハルホさんのような聡明な20代女性はそのことにすでに気付いている。彼女たちは「専業主婦になるのを諦めた」というよりは、あらゆる状況を考慮した上で「働き続けるほうが自分のため」という結論に達したのだろう。「結婚・出産はキャリアを積んだ後で」という仕事優先型バリキャリ女子の価値観は、どうやらもう過去のものになりかけているようだ。(小鳥居ゆき)