4月6日の「ちちんぷいぷい」(毎日放送)で放送された「日本一厳しい」とされる新人研究の様子に、番組を見た視聴者から、「どう見ても洗脳」「完全にカルト教団で恐い」という非難の声が続々と上がっている。
京都・左京区のとあるセミナーハウスで行われた、この新人研修。会場の外にまで響いているのは、叫ぶような大きな声だ。部活でもしているのかと思うほどである。中に入ると、4人の新人社員らが背筋を限界にまで伸ばし、会社の企業理念や丸暗記した「社会人としての心得」などを、顔を歪ませながら大声で読み上げている。(文:みゆくらけん)
目に涙を浮かべている女子社員の姿も講師は、社員らの発する一言一句を聞き落とすまい、態度の一つひとつを見逃すまいと鬼のような表情で、まるで「スポ根漫画」に出てくるコーチのようだ。目に涙を浮かべている女子社員の姿もあった。
異様な雰囲気の中、次に行われたのは体操のテストだ。全身全霊を捧げ、4人の社員らは体操をしてみせる。「なぜ体操?」という疑問はこの際置いておくとして、とにかく体操をして講師から合格をもらわないと、次に進めないのである。
必死で体操した4人だが、合格して先抜けしたのは2人だけ。しかしこの先抜けした2人が講師の逆鱗に触れることに。それは、まだ合格していない残り2人に対する指導が甘い、という理由だった。
「ちょっと甘くないですかぁ? 本当に受からせようと思って見ていますか? 2人は一生懸命やってるんですよ! 一生懸命やっているけどできないの! それを気づかせるのが同期でしょ。本気で受からせたいと思うんだったら、残り3分で何とかしてください!」
まさかの刃が飛んできた先抜け社員らは大慌て。もう必死のパッチで同期を熱血指導する。無事に全員が合格できた時には、嬉しさのあまり抱き合って喜んでいた。
外部講師「会社のカラーに合わせた社員作りが目的」学生時代にバレーボール部に所属していたという新入社員のYさんは研修を終え、「部活をしていたので声を出したりしていたけど、こっちの方が声を出しています」と枯れた声で話した。同期のKさんも、苦笑いを浮かべてこう話す。
「正直なめていました。(何が一番しんどかったか、との問いに)しんどくなかったことがなかった」
今回の2泊3日の合宿研修中は、全時間を通して禁煙・禁酒、菓子類禁止、テレビ、音楽、雑誌も禁止で、腕組み、足組み、ポケットに手を入れる、テーブルにひじをつくのも厳禁だ。
この研修を受けたのは病院などで売店を運営する会社の新人だが、指導している講師はこの会社の社員ではない。「日本一厳しい」とされる人材育成会社アイウィルが、研修を受託しているのだ。ここまで厳しい研修をする理由について、担当者はこう話す。
「新入社員たちは『自分が、自分が』というのを出すと、どうしても学生の常識とか、子どものころの甘えが出る。基本的には『会社のカラーに合わせる自分作り』のため」
いや、分かりますけど。でも、あそこまでやる必要があるのだろうか。
「いい経験だったと思える日が来る」かもしれないけどそう思ったのは、筆者だけではないようだ。番組を見た視聴者からは、この研修に対する非難の声が多数あがっていた。
「おかしい…どう見ても洗脳だし奴隷育成にしか見えないんだけど」
「戸塚ヨットスクール企業版みたいな、鬼の新人研修とやらをやってる。恐怖心と萎縮と時々アメで揺さぶって人に何かを叩き込む手法がいつまでも『厳しい体験を乗り越えて』で美化されるんだなぁ」
「こうしてブラック企業が作られる、みたいな典型例を見てる。あほか」
「完全にカルト教団で恐い」
「これが生産性に繋がるのか疑問に感じる」
「ブラック臭がプンプン。こんなことしなきゃ育てられないような会社ってどうなの?」
「これ系でいくならサラリーマン金太郎でも読ませた方がいいんでないの?」
非難や疑問視する声が多い一方で、肯定的に捉える人も。やはり大声を出して社訓を言い、洗脳のような缶詰めの研修を経験。当時は嫌だったが、今思うと「辛い事も乗り越えられた」「時代は違うかもしんないけど、後にいい経験だったと思える日が来ると思います」ということだ。確かに記憶には残るし、思い出は美しく彩られていくだろうけど……。
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