いつか昆虫に復讐されっから、人類。
昆虫とテクノロジー、どんどん交わりつつありますよね(こちらはちょっと違いますが...)。シンガポールの南洋理工大学とカリフォルニア大学バークレー校のエンジニア・チームは、甲虫を遠隔からコントロールする技術を開発したと発表しました。学術誌「Journal of the Royal Society Interface」でその論文を読むことができます。
歩き方、歩幅や歩く早さまで微調整することもできるというから完全にコントロールですよね。生体テクノロジーの新しいドアが開かれた気がします。...ちょっと恐ろしいですが。
トルクアータという種類の甲虫の脚に電極を埋め込み、背中に付けられたマイクロチップから信号が送ることで動きを操るという仕組みだそうです。
昆虫の仕組みをロボットに活かすという技術はこれまで前例もあったのですが、「生きている昆虫の移動をコントロールし、歩き方、歩幅、歩く速度をユーザーが調整できる、最初の実例である」と研究チームは発表しています。
研究チームはまず甲虫の歩き方を詳しく研究し、それから動きを再現できる電気刺激システムを開発したとのこと。電極に送る刺激を調整することで、スピードから歩幅、歩き方まで変えられると。通常、甲虫は2種類の歩き方をするのですが、自然には行わない歩き方をさせることもできたとか。
甲虫が自然には行わない歩き方をさせる...想像してしまった(後悔)。
しかし電極が取り除かれた後、実験で使われた甲虫は健康な甲虫の寿命をまっとうできたそうです。研究チームはこのサイボーグ甲虫が、ドローンの代わりになるのではないかと考えているそうです。
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足を持つ形の人工ロボットは多くの小さな部品やセンサーやアクチュエーターを製造し、組み立てる必要がありますが、それとは違い、昆虫とコンピューターのハイブリッド・ロボットであれば自然が創ってくれたロボット・プラットフォームとして生きた昆虫をそのまま使うことができます。
昆虫コンピューター・ハイブリッド・ロボットを作るのに必要な唯一の「組み立て」と「作業」はミニチュア無線装置をくっつけることと、薄いワイヤー式の電極を適切な神経筋部位に埋め込むことだけです。それによって望んだ通りの運動もしくは行動を引き起こす電気刺激を送ることができます。
完成した甲虫ロボットが何に使われるかはまだ未定のようですが、技術としては感心せざるを得ません。
しかし容赦ない技術ですよね。アメリカでは昆虫ってやっぱり害虫としか見られてないんですかねーと思っていたら、米Gizmodoのコメント欄でも「倫理的に間違っている」という声が続出でちょっと安心です。
image by Nanyang Technological University and the University of California Berkeley
source: Journal of the Royal Society Interface via Dezeen
Jamie Condliffe - Gizmodo US[原文]
(塚本 紺)