古今東西、女子は禁断の恋に憧れるもの。障害があるからこそ燃えあがる想いの丈。燃えあがりすぎて暴走するのもまた、醍醐味のひとつ。『死神憑きの天宮さん』(アメノ/白泉社)は、秘めた恋心が高じてストーカーになった死神と、熱烈ロックオンされてしまった女子高生の同棲(!?)を描いたファンタジーラブコメです。
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この世には神様憑きの人間というものが存在するらしい。
そんなモノローグから始まる本作。事故に遭いかけた女子高生・千冬を助けたのはなんと大鎌を持った死神・黒波。彼いわく、死神の仕事は命を奪うことではなく、対象者の行き先を天国か地獄か見定め導くこと。千冬を判定すべく生態を観察し続けていた結果、ストーカーへと進化を遂げてしまった黒波は、命を助けた代わりにとりつかせろと無体に千冬に迫ります。死神の仕事を辞めてまで千冬にまとわりつき、近づく男を撃退しようとするならいざしらず、ベッドに潜りこむわ、湯船に沈んで待ち構えるわ、わりとガチで狙ってくる若干エロ変態な黒波を、全力拒否する千冬の攻防戦。その隙間で少しずつ縮まっていく2人の距離に、笑いとときめきが潜んでいます。
そして見逃せないのが、千冬の周囲に現れる“お仲間”たち。勝利の女神・ニケーナに一目惚れされた百戦百勝のラッキーボーイ・久我先輩。実家を代々繁栄させてくれるお狐様に憑かれた御曹司・須藤先輩。ぼくはかわいい男の娘な疫病神のせいで災厄まみれの笹澤くん。そして堅物で理屈っぽい稲穂のおじさん神様に辟易しているチャラ保健医・名取先生。と、一筋縄じゃ行かない神様たちと同居ライフを営む新キャラが続々と登場し、物語を賑やかしてくれるのです。
疫病神や貧乏神は絶対いやですが、富や名誉をくれる神様ならぜひともどんどんとりついてほしい……と思うところですが、恩恵を受ければそのぶん代償もあるわけで。それぞれの孤独や心の穴が垣間見えたり、黒波を連れ戻そうとする死神たちの存在も見過ごせなかったり、ギャグコメディのように見せながらも少しずつ物語が転がっていきそうなところに期待感がふくらみます。
やおよろずの神様にちなんで八百万まで増やして大丈夫! というアメノさんの意気込みに期待して、神様憑きの世界が2巻以降どのように広がっていくのか、先が楽しみの1冊です。
文=立花もも