長い金髪に大きな目、ネット上に突如として現れたキャラクター「エレン・ベーカー先生」が、大きな話題を呼んでいます。発信源は、なんと4月から使われ始めた中学英語教科書「NEW HORIZON」(東京書籍)。何が、ネット住民の心をつかんだのでしょうか。イラストを担当した電柱棒さんから未公開のラフ画をいただき、お話をうかがいました。
キャラソングまで有志が作成
新しい教科書が使われ始めたばかりの4月5日。ツイッターにイラストが「可愛すぎ」と投稿があり、火がつきました。
登場人物のイラストが、教科書らしくないアニメ調の可愛らしいイラストで描かれています。中でも人気が集中しているのが、アメリカから来たエレン・ベーカー先生です。
もともとアニメ調のエレン先生を、別のアニメ画像にはめこんだコラージュ画像が、ネット上にあふれ始めています。ニコニコ動画では有志が「久々にアイドルの器があるキャラクターが出てきた」と、キャラクターソングを作成。再生回数は1日で1万回を超えました。
今回、イラスト担当の電柱棒さんに、デザイン時のラフ画を2枚提供いただきました。教科書向けという枠組みの中で描いたからこそ、「健全なかわいさを追求できた」といいます。
友達感覚のお姉さん表現
――エレン先生のデザインは、どのような点を意識されたのですか?
「より親しみを感じてもらうため教師然とした大人というよりも、友達感覚のお姉さんというイメージを大事にしました」
――ほかのキャラクターも生き生きと描かれています。
「咲はオーソドックスに素直で元気な感じ。光太はやんちゃっぽさ。ディーパはバンドをやっているという設定から咲よりはもう少しませた感じ、アレックスは当初はもっと長髪でインドア派な感じでしたが、短髪がいいとのことでああなりました。とにかく『かわいい・かっこいい』という点に気を配ったつもりです」
――過去の教科書のイラストは参考にされたのですか?
「服装は『中学校の生徒としてふさわしいもの』という決まりがあり、そのイメージのラインとして参考にさせていただきました。それ以外は、教科書のイメージを一新したいというお話でしたのであえて意識はしませんでした」
――ご自身のイラストが教科書に掲載されたことは、どう感じられていますか。
「正直自分自身でもこのようなお仕事に関わらせていただく事になるとは思ってもみませんでした。時代の流れのおかげかなぁという感じでしょうか」
――教科書を使う子どもたちへの、メッセージをうかがわせてください。
「親しみがわいてもらえるように描いたつもりです。勉強というよりは友達と遊ぶことを楽しむような感覚で、英語を覚えていってもらえたらなと思って います」
「前例ない」大転換に理由
「NEW HORIZON」は、1966年度から使われている伝統ある英語教科書です。
にもかかわらず「前例がない」という大胆なリニューアルをした背景について、出版元の東京書籍は「グローバル化の時代に合わせた取り組み」と説明します。
国の施策を含め、生徒全員の英語力を高める必要性が叫ばれているものの、生徒によって英語への関心はまちまちなのが現状。同社は「できるだけ多くの生徒に学習意欲を持ってほしいと思い、生徒に関心の高いタッチのイラストに変えることにしました」といいます。
「教科書発」の意外なブーム。グローバル社会に子どもたちが羽ばたく、後押しにもなるかもしれません。