高級ブランド「クリスチャン・ディオール」が展示会で公開した1枚の写真が、韓国で物議を呼び、“炎上”している。
4月8日、ディオールは韓国一のセレブ街・清潭洞(チョンダムドン)にある店舗「ハウス・オブ・ディオール」で、新作を宣伝するための展示会「レディ・ディオール・アズ・シーン・バイ・ソウル」(Lady Dior as Seen by-Seoul)を開催した。同展示会には韓国人写真家や美術家の作品が数多く展示されたのだが、そのうちのひとつ、写真家イ・ワン氏が出品した「韓国女」という写真作品が問題となった。
この写真作品には、ハイヒールを履き、肩を露出した黒いワンピースをまとった女性が、ディオールのバッグを持って、歓楽街の前にたたずむ姿が描写されている。問題となったのは、その背景に「ソジュバン(焼酎ルーム)」「ルーム費無料」「パーティータウン」などの文字が入った看板が写り込んでいる点だ。
実はこれらは、韓国の風俗やキャバクラを意味する看板。韓国のインターネットコミュニティーからは、写真が「韓国人女性が体を売って高級ハンドバッグを購入しているかのように見える」と批判が殺到しているわけだ。ネットユーザーの一部は、写真家だけでなく、展示を決定したディオールにも問題があると食ってかかっている。
なお、写真を撮影したイ・ワン氏は、ディオールのインタビューに対し「写真が持つ象徴的な意味を強調するため、合成技術を使用した。(中略)クリスチャン・ディオールの製品は、効率中心の資本主義的生産方式とは異なる価値を持つが、それが韓国でどのように消費されているか表現した」と述べている。
遠回しな言い回しのため、何が言いたいのか、いまいちはっきりしないが、批判されているような皮肉を作品に込めたというふうに捉えられなくもない。「作品が誤解された」というよりも、ほぼ“確信犯”に近いような気がする。
一方、イ・ワン氏やディオールを擁護する意見も少なくない。これを報じた聯合ニュースのコメント欄には「事実なのに何が問題なの?」「え? 現実的な写真じゃん」「卑下ではなく事実」などのコメントが多数寄せられている。中には「ディオールは誰もが手にすることはできない、希少価値の高いブランド。それを、韓国人女性は皆、体を売ってでも手に入れようとするという批判的な作品。叩かれる要素がまったくない」と説明している。
韓国人男性の一部は、一度の食事代に匹敵するような高級コーヒーや、海外ブランドを好む半面、自分で経済的活動をせず男性に依存する女性を「テンジャンニョ(みそ女)」と呼び、見下している。それら女性を蔑視するキーワードに対し、女性人権団体が是正を求めるという騒動も頻発中だ。今回、ディオールが展示した「韓国女」の炎上も、それと似たような現象といえる。
同作品が象徴するものは、女性蔑視なのか、それとも“事実”なのか。今後も韓国では、女性を取り巻く表現について意見が分かれそうである。
(取材・文=河鐘基)