「ICARUS ONLINE」は,一周年を迎える4月からのアップデートラッシュでさらなる高みへ──運営プロデューサーに聞く現状と今後の展開
4Gamer
WeMade OnlineとNHN ハンゲームが共同でサービスを展開している「ICARUS ONLINE 」。2015年4月28日に正式サービスを開始した本作だが,これまでに着々とアップデートを重ね,間もなく記念すべき一周年を迎えることになる。
今回,そんな本作の現状と,2016年のアップデート予定を教えてもらえるということで,WeMade Onlineの広報プロデューサー 横山 遼氏にインタビューすることになった。運営を1年やってきて「いくつかの問題点が見えてきた」と話す横山氏。いったいどのような問題なのか。また,今後どんなアップデートが控えているのか,いろいろ聞いてみた。
■新規プレイヤーが増えて分かったICARUS ONLINEの問題点?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。正式サービスが開始されたのが2015年4月28日ということで,少し早い(2016年3月25日収録)ですが,一周年おめでとうございます。横山遼氏(以下,横山氏):
ありがとうございます。サービスインからいろいろとありましたが,無事に一周年を迎えられそうです。4Gamer:
前回のインタビュー は,新クラス「レンジャー」や大型アップデート「不死の砂漠」直前のタイミングでした。その後の状況はいかがですか。横山氏:
サービスから時間が経過するにつれて,どうしてもアクティブなプレイヤー数は減少してしまうものですが,レンジャー実装のタイミングで新規で始めてくださるプレイヤーさんが多くいらっしゃいました。おかげさまでゲーム内は賑やかになったのですが,途中から新規プレイヤーが増えたことで,コンテンツの歪みといいますか,いくつかの問題点が見えてきました。4Gamer:
具体的にどんな問題を認識したのでしょうか。横山氏:
最前線で頑張っているコア層と,ミドル/ライト層の装備レベルの格差が,ほかのMMORPGと比べて大きいんですよ。後発のレンジャーは,レベルアップがスムーズにできるように調整しているのですが,その弊害として,レベル50到達時の装備の水準,資金力,コミュニティの形成力といった部分が,先行してプレイされている方々より疎かになる傾向があり,レベルキャップ到達後に離脱してしまうケースが多く見られたんです。4Gamer:
装備や資金の格差もそうですが,プレイ時間が短縮されるということは,コミュニティを形成したり,加わったりする機会も少なくなるわけですから……。横山氏:
ええ。ですので,そうした問題を解消するべく,GMイベントでギルドの応援をしてプレイヤー同士が出会える機会を作りました。3月17日に実装した「次元の亀裂」は,別サーバーのプレイヤーと一緒に冒険ができるというもので,ミドル層やライト層の方々が,いわゆる野良パーティを組みやすい状況にするのが狙いでした。 データとしては,次元の亀裂以降,ダンジョンの攻略回数が約2倍に増えていますので,まだ改善の余地はあるとはいえ,一定の効果はあったようです。4Gamer:
ちなみに,例えばサーバー統合などで1か所にプレイヤーを集めるのではなく,次元の亀裂のようなインスタンスダンジョンだけ別サーバーの人と協力できるというシステムを採用したのは,なぜでしょうか。横山氏:
ICARUS ONLINEは「フェロー」が魅力のひとつで,中にはレアなものもいます。もしサーバーを統合してしまうと,それが取り合いになってしまうんです。フェローは装備の強化にも使用しますので,結果として装備の格差がさらに開く危険性がありました。4Gamer:
確かに,人が増えれば取り合いも増えますよね。そう言えば3月31日に,サーバー「ネルヘス」がオープンしてサーバーが全部で3つになりますし,次元の亀裂の効果でパーティを組む機会が増えそうです。横山氏:
そうですね。新サーバーのオープンは,Pmangさん(ゲームオン)とのチャネリングサービスを開始するタイミングに合わせました。新サーバーでは,リリース直後と同じような横並びでスタートするワクワク感があると思いますので,ぜひ新規の方にプレイしてもらいたですね。4Gamer:
分かりました。話を戻しますが,ダンジョンの攻略回数が増えているとのことで,ヴァルカラン装備(※)の産出量も増えているんですよね? これがライト/ミドル層に行き渡るようになれば装備格差も多少緩和されそうですが。※本作で初めて実装された伝説等級装備。まずはこれを集めて,より高性能の装備を目指すことになる
横山氏:
産出量は確実に増えていますので,そろそろライトからミドル層の方々でも手の届く装備になっていると思います。運営の方向性として,昨年の12月までは,各種調整をしながらコンテンツ量を増やしていくオーソドックスな運営を行ってきましたが,2016年は,プレイヤーの装備水準やプレイ環境を重視した運営に切り替えています。 というのも,6月にレベルキャップ開放と新エリアの実装という大型アップデート「エローラの聖域」が予定されていますが,この難度がかなり高く設定されているんです。当初,この新エリアをちゃんと楽しめるのが上位一割ぐらいではないかという試算になっていたので,ミドルからライト層のプレイヤーさんに装備水準を高めていただく必要性を感じていたんです。4Gamer:
プレイヤー全体の底上げを狙っているわけですね。ちなみに,現状で最高難度のレベル50の伝説ダンジョンの攻略状況はどうなっているのでしょうか。横山氏:
周回しているのは一部のコアプレイヤーさんが中心ですね。実は,ミドル層の方々でもクリアできる程度の装備水準には達しているはずなのですが,最初に体験したときの「難しいし,時間が掛かる」という印象から,なかなかチャレンジしない,できない傾向にあるようです。4Gamer:
最初が散々だと,ちょっと腰が重くなりますよね……。ともあれ,レベルキャップが引き上げられれば,今よりも楽に攻略はできるようになるでしょうし,挑戦する人も増えますね。■レンジャーが抜きん出たクラスバランスは,6月のレベルキャップ開放で解消される?
4Gamer:
クラス間のバランスについても教えてください。これまでにも,各クラスのバランス調整は行われているようですが,現状はどうなっているのでしょうか。横山氏:
強さで言うと,レンジャーが頭一つ抜きん出た状況です。ただ,これは現時点での話で,レベルキャップが55になると各クラスの強さが均一になるようにバランスは調整されているんですよ。4Gamer:
ああ,そうなんですね。ちなみに,プレイヤーが遊んでいるクラスの分布は,どんな感じですか?横山氏:
人口比率で見ると,レンジャーが多く,もっとも少ないのはバーサーカーですね。4Gamer:
そうなんですか。個人的には,ガーディアンが少ないと思っていました。バーサーカーは当初から「弱い」と言われることも多かったですが,スキルの調整で強くなった印象がありましたし。横山氏:
そうですね。今年の1月に実装した「挑戦の塔」は,ソロプレイで階層を攻略していくコンテンツで,攻略状況に応じてポイントが表示されてランキングが行われます。上位はレンジャーが多いのですが,バーサーカーでもレンジャーと同等のポイントを獲得されている方もいらっしゃいます。バーサーカーは攻撃力が高い半面,防御が弱いため扱いが難しく,それが人口が増えない要因になっているのかもしれません。4Gamer:
一方,レンジャーはソロでも安定した強さがありますし,見た目も格好良いので人気があるのは分かりますね。横山氏:
レンジャー実装時に新規で始めたプレイヤーさんも多かったですし,正式サービスから始めた古参の方でも,サブでレンジャーを育てているケースが多いようです。ちなみに,レンジャーの次に人口が多いのはプリーストですね。4Gamer:
プリーストの人気は変わらず安定していますね。ところで,レンジャーの登場で,ウィザードの影が薄くなったのでは……と個人的に感じているのですが。横山氏:
大きくパワーアップしたわけではありませんが,スキル調整でマナシールドが強化されてソロ性能も高まりましたし,もともとオンリーワンの範囲攻撃も持っているクラスですので,ほかのクラスと比較して弱いというわけではないと思います。4Gamer:
オンリーワンという意味だと,本作はクラスごとの役割がはっきりしていますよね。横山氏:
ええ。6人でフルパーティを組むときは,全6クラスすべてを入れるのが定石となっているくらいです。それもあって,弱いクラスだからパーティに入れないといったこともありません。しかし,クラス別の人口が偏ってしまうと,人口が多いクラスのプレイヤーさんがパーティに入りづらくなってきますので,そこは調整したいですね。■4月に待望の「フェロー牧場」が導入
4Gamer:
続いて,今後の展開について教えてください。まずは,4月に予定されているアップデートからお願いします。横山氏:
4月は,昨年のオフラインイベント でもお伝えした「フェロー牧場」が入ります。当初の予定より時間が掛かってしまいましたが,数多くの機能を盛り込んでプレイヤーの皆さんを満足させられるものになったと思います。4Gamer:
フェロー牧場は,日本の運営チームから提案したコンテンツということで,運営としても相当力が入っているのではないでしょうか。横山氏:
ええ,おっしゃる通りです(笑)。仕様が固まってからもいくつか機能追加の提案をしました。4Gamer:
フェロー牧場は,自分専用の牧場にフェローを放牧して育成させていくのが基本コンセプトですよね。機能的には,ほかにどんなものが盛り込まれているのでしょうか。横山氏:
「ハウジング」の要素を入れました。プレイヤー一人にひとつ,自分の“島”を与え,そこにいるNPCに話しかけて各種機能を使っていくイメージで,そこで放牧したフェローを成長させることもできます。4Gamer:
フェローを育てるために,ログインだけしてキャラクターは放置しておく……みたいなことがありましたが,それが今後なくなるかもしれませんね。横山氏:
キャラクターの放置は……次元の亀裂のときに導入した「釣り」コンテンツにシフトするように思います(笑)。4Gamer:
そう言えば,釣りがありましたね(笑)。釣りは3つの地域で行えて,それぞれ入手できるアイテムの傾向が異なりますよね。低確率であっても,結構良いものが取れますし。横山氏:
はい。ですので,釣りコンテンツは盛況です。一番人気の場所は,ヴァルカラン装備が入手できるかもしれない不死の砂漠です。ですので,まだまだ装備を求めている人が多いんだと実感しています。4Gamer:
話を戻しますが,フェロー牧場に関してほかにどのような機能がありますか?横山氏:
初期段階では導入できるかどうか微妙ですが,牧場のカスタマイズができるようになります。例えば,背景や土の質感を変えるようなイメージです。あと,フェローに「好感度」といいますか,なつき度のようなステータスを用意します。フェローにアイテムを与えるとこれが上がっていって,何らかの特典が得られるシステムですね。4Gamer:
つまり,フェロー牧場は実装以降も少しずつアップデートされていくわけですか。横山氏:
はい。アイデア段階まで含めると数多くの案を出していますし,導入当初は土台部分だけだと思ってください。技術的にどう再現するのかが課題になってきますが,プレイヤーさんの声を聞きつつ,メインコンテンツのひとつになるくらいにしたいです。4Gamer:
分かりました。4月はこのアップデートとは別に,一周年記念のキャンペーンも行われるのではと思いますが,教えてもらえたりはしますか。横山氏:
「フェロー総選挙」を企画しています。これはプレイヤーさんに好きなフェローを投票していただいて,一番人気のフェローを決める企画ですね。上位のフェローは何らかのリアルグッズを作りたいなと。4Gamer:
リアルグッズというとぬいぐるみとかですか。横山氏:
蜘蛛……のぬいぐるみとか,欲しいですかね?(笑)。4Gamer:
ニッチですよね(笑)。横山氏:
とにかく,まだ何が作れるかは分かりませんが,一位になったフェローに合ったグッズにしようと考えています。ほかにも,「武器コスチュームデザインコンテスト」など,一周年記念のイベントやキャンペーンは数多く用意しています。さらに5月の大型連休に合わせて,2回めのオフラインイベントを行います。4Gamer:
今年も開催されるんですね。横山氏:
1回めは東京で行いましたが,オフラインイベントを関東以外でやってほしいとの意見も多かったので,2回めは大阪で開催することにしました(関連記事 )。どちらかというプレイヤーさん同士,またプレイヤーさんと運営の交流が目的となっていまして,会場はライブハウスにしました。アップデート情報の先行公開なども行いますが,飲んだり食べたりしながら,楽しい時間を過ごしてもらいたいと考えています。4Gamer:
前回は実装するアイテムを決めるコーナーもありましたが,そこで決まったラビニマンのコスチュームはインパクトがありましたね(笑)。横山氏:
ええ。今年の1月に30日限定のコスチュームを配ったのですが,どこに行ってもラビニマンがいるという異様な光景になりました(笑)。評判も良かったですし,今回も実装アイテムを決めるコーナーは設けるつもりです。次こそはフェローになってほしいのですが……開催地が大阪なので,その場のノリでラビニマン2号になるのではないか,と今から不安だったりします。4Gamer:
うーん,振りにしか思えないですし,あえてフェロー限定にしないところを見ると,運営もノリノリなのではないかと思えます(笑)。■5月以降のアップデートが目白押し。下半期にはサーバー間の対決をフィーチャーした新規コンテンツも
4Gamer:
続いて,5月のアップデートのことを教えてもらえますか?横山氏:
5月にはPvP関連の「エクサラン魔石争奪戦」という新コンテンツと「決闘ランキング」システムを導入します。4Gamer:
エクサランと言えばPvPに特化したエリアですが,それに関連したアップデートは久しぶりですね。横山氏:
はい。エクサランに関しては,PvPに興味がないプレイヤーさんが多いことから,積極的なテコ入れはできていませんでした。ただ,特殊なエリアで魅力的なフェローも存在していますから,使わないのはもったいないです。そこで,開催時間やルールを設けたスポーツライクに楽しめるコンテンツとして,魔石争奪戦を企画しました。4Gamer:
どのようなものか教えてください。横山氏:
開催時間になると,「魔石が出現しました」というアナウンスが流れ,エクサランのどこかに魔石が出現します。プレイヤーがエクサランに入ると,自動的にクエストが発生して,これを受諾することで魔石争奪戦に参加できます。ルールは,魔石を手に入れて,クエストの指定地点まで運ぶことができれば勝利というものです。 魔石を持っている人は,フェローに乗れないし攻撃もできない,また移動速度も遅くなってしまいますので,ギルドや連合で協力して,魔石を持った人を守る必要が出てきます。4Gamer:
なんとなく,ラグビーのようなイメージですね。魔石の周囲では熾烈なバトルが展開しそうです。横山氏:
魔石を所定の場所に運んだプレイヤーだけではなく,所属するギルドや連合のメンバー全員が報酬を受け取れるので,チーム戦だと思っていただければと思います。4Gamer:
なるほど。それだと個々の責任も軽くなりますし,ワイワイとカジュアルに楽しめそうです。横山氏:
このPvPに関連して,「特性転換」というシステムも入れます。4Gamer:
それは,どういった機能ですか。横山氏:
あらかじめ2パターンの特性(※パッシブスキルようなもの)の組み合わせが用意できるようになり,例えばPvE用の特性とPvP用の特性を使い分けるといったことが可能になります。4Gamer:
それはPvPに限らず便利そうで,今からどう使おうか悩むところですね。 ここまでお聞きした感じだと,4月のフェロー牧場で装備を強化しつつ,5月の魔石争奪戦で,その実力を試す……みたいな流れになりそうですね。横山氏:
そうですね。5月の魔石争奪戦までに装備品に対する意識を高めてもらえると,6月に導入する「エローラの聖域」にもすんなり入れると思いますよ。4Gamer:
そのエローラの聖域についても教えてもらますか?横山氏:
先ほどもお話ししたように,エローラの聖域導入時点で,レベルキャップが55まで開放されます。アップデートの規模としては,5レベル分なので,レベル40→50で10レベル分だった不死の砂漠よりも,ボリューム自体は少なくなり,新しいデザインの装備品もありません。ですが,新しい地域に新しいダンジョン,そして新しいストーリーにフェローと,内容は盛りだくさんです。4Gamer:
新装備がないとのことですが,新ダンジョンではどういった報酬が手に入るのでしょうか?横山氏:
アクセサリーのような小物はあります。あと,装備以外で能力を向上させられるシステムを実装する予定なので,それに関連するアイテムですね。まだ先のコンテンツで調整中なところもありますから,報酬についてはお楽しみに,ということでお願いします。4Gamer:
分かりました。エローラの聖域はオフラインイベントでも軽く紹介されていましたが,緑豊かな場所ということで,不死の砂漠とはまた違った感じのフェローが登場しそうですね。横山氏:
基本的に,かわいい感じのフェローが多いです。例えば,妖精タイプや飛行するキツネに似たタイプのフェローは人気が出そうですね。また,毎度のことながら,ゴリラ型とか,一風変わったフェローも登場しますよ。4Gamer:
どんなフェローが出てくるのか期待しています。 2016年の上半期は結構な過密スケジュールでアップデートが行われていくことが分かりましたが,下半期についてはいかがでしょうか。横山氏:
下半期には,「アケロン無法地帯」という新しいPvPエリアを開放する予定です。この場所は全サーバーのプレイヤーさんが集結できる場所になっています。ここでも魔石争奪戦が行われるので,魔石をめぐってサーバー間で争うことになります。4Gamer:
全サーバーですか……どれくらいの人数が参加して,どんな戦いになるのか想像がつきませんね(笑)。サーバー間で戦うということになると,新サーバー「ネルヘス」は少し不利かもしれませんね。横山氏:
そうですね。ですので,サーバー間で装備などの格差が開きすぎないように,開発側と共にしっかり対策を考えていきます。4Gamer:
ちなみに,参加できる最大人数などは決まっているんですか。横山氏:
そのあたりの詳細は,あらためてお知らせします。ルールがない無差別のPvPが日本で流行らないことは,データ上でも明確に分かっていますが,魔石争奪戦のようなルールがあって多人数で競えるコンテンツに,どれだけの人数が集まるのか,個人的にも興味がありますね。4Gamer:
日本では,対人戦を盛り上げるのはなかなか難しいんですよね……。ともあれ,展開に期待していますね。最後に4Gamerの読者に向けてメッセージをお願いします。横山氏:
2015年のサービス開始から数多くのアップデートを行って,ICARUS ONLINEは少しずつ成長してきました。2016年も上半期からアップデートの目白押しで,下半期まである程度スケジュールが決まっている状態です。コンテンツはどんどん増えていきますので,いまプレイされている方は引き続きお楽しみいただき,休止中の方はキャンペーンや大型アップデートに合わせて,ゲームがどう成長しているのかを確認しに,気軽に遊びにきたいただけると幸いです。今後ともICARUS ONLINEをよろしくお願いします。4Gamer:
本日はありがとうございました。リンク:「ICARUS ONLINE」公式サイト
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