いよいよ今期もドラマシーズンが始まりました! フジテレビ月9は『ガリレオ』第2シーズン以来、3年ぶりの連ドラ主演となる福山雅治(47)の『ラヴソング』。ヒロインには福山と同じアミューズの新人シンガーソングライター藤原さくら(20)が大抜擢されたというか、ネジ込まれたというか、まあ微妙なキャスティングではありますが、演出も『ガリレオ』と同じ西谷弘とのことなので、期待しましょう。
さっそく、11日放送の第1話。藤原さくら演じる佐野さくらは、子どものころから吃音に悩まされている女のコ。大型自動車販売店で、整備補助として働いています。黒髪美少女がツナギ&ヘルメット姿でラチェットを回す様子はなかなかの萌えポイントですが、会社ではほとんど口をきくことがありません。同僚女性と楽しくランチしているときでも、懐から赤いマルボロを取り出して、ひとり屋上へ。美味しそうに煙をくゆらせます。キャラ的にも、ノド的にも、心配になる場面です。
一方、福山さん演じる神代広平は、白衣姿で登場。さくらが勤める会社にカウンセラーとして派遣されているそうです。絵に描いたような流し目で、さっそく会社のおばちゃんを誘惑したりします。
そんな神代、仕事を終えるとギターケースを抱えてライブハウスへ。馴染みのマスターに古いギターのメンテを頼みつつ「みんな冷たくなっちゃったなぁ、結婚して……」と、「お前が言うな!」の大合唱が聞こえてきそうな愚痴をこぼしたり。元ミュージシャンで、臨床心理士で、ヒモなんだそうです。44歳で、それなりに収入のありそうな仕事もしていて、ヒモ。よくわかりませんが、恋が走り出しそうな気配は今のところ一切ありません。
そのころ、キキー! とバイクのブレーキ音をたててアパートに帰ってきたさくら。前輪ロックで後輪を跳ね上げて停車させるところを見ても(たぶんスタント)、堂々とした喫煙ぶりもそうですが、「ワイルドだろぉ?」とクドいくらいアピールしてきます。吃音者ですが、決して同情を誘うような、か弱いキャラではないようです。ちなみに、Gジャンは着ていません。同居人のド派手なキャバ嬢・中村真美(夏帆)に対しては、ドモリながらですが、よくしゃべります。職場のさくらに比べたら表情も豊かになっていますし、真美にだけは吃音を気にせず話せるのね。
そんなさくらと神代を出会いに導いたのは、“イヤな上司”役を演らせたら右に出る者はいない、当代きっての“イヤな役者”木下ほうか。ちなみにほうか、今クールだけで『ラヴソング』にくわえて『ナイトヒーロー NAOTO』(テレビ東京系)、『ドクターカー』(日本テレビ系)と3本の連ドラに出ています。何人もいるのかな、ほうか。
そんなほうかが、同僚に危険が迫っても声を出せないさくらをカウンセラー神代のもとに連れていき「こいつ、治してくれ」と頼むのです。神代は、例の流し目でさくらを診察室に招き入れます。
決して目を合わせようとしないさくらに「話したくなったら話して」と優しく諭す神代。熱いお茶を飲んで「だっ!」と小さく叫び、心配する神代にようやく「大丈夫です」と言葉を吐きだします。自らの膝を叩きながら、絞り出すように。そして、ポロポロと泣き出してしまうのです。涙を拭った手が油で汚れていたので、頬が黒くなってしまいます。その頬の汚れを優しく拭う神代……。さくらは何も言わず部屋を飛び出すと、ニヤニヤしながら仕事に戻ります。ハイ、実にわかりやすく恋が走り出しました。
そんなある日、さくらと真美、そして天野空一(菅田将暉)の幼なじみ3人組が仲良く部屋で食事の準備などしていると、呼び鈴が。新たな訪問者は、さくらを今の会社に紹介した野村さん(駿河太郎)でした。「野村さん来た! クビかも!」とビビりまくるさくらですが、なんと野村さんは、真美と結婚すると言いだしたのです。しかも、結婚式のスピーチをさくらに頼みたいと。吃音なのに! さくらは案の定、その場から逃げだしてしまいます。
ひとしきり外で缶ビールなどあおったさくらが部屋に戻ると、真美は「スピーチしなくていいからね、無理言ってごめんね」と告げますが、さくらは後日、神代を病院に訪ね、必死の思いで「吃音を治したい」と声を絞り出します。「早く治したい」と。それはもちろん、真美の結婚式でスピーチをするためです。
そんなさくらの気持ちを知らない神代は、「君は、君のままでいいんじゃないですか?」とか、トボけた優しさを披露。さくらは「もういいです」と、やけにスムーズに吐き捨てて病院を後にするのでした。乱暴な言葉だけすんなり出てくるところなど、同じく吃音者を扱った映画『英国王のスピーチ』を思い出します。
その後、自分ひとりで吃音を克服することを決意したさくら。居酒屋を訪れ、見事に「新歓の予約」という難題をクリアして見せます。その居酒屋には偶然、神代の姿も……しかし、さくらが必死の思いで予約した居酒屋は、同僚の気まぐれでキャンセルされてしまいます。
この一件でさくらはすっかりやさぐれてしまい、街で偶然出会った神代に噛みつきます。
「吃音じゃろうがなかろうが、うちの人生は変わりゃせん!」
そして、会社も無断欠勤。ブチ切れた真美と大ゲンカの末、「結婚なんかすんなや!」と言い放ってしまうのでした。
その後さくらは、なんやかんやで神代と過去にミュージシャン仲間だった言語聴覚士・夏希(水野美紀)のもとに連れて行かれます。さくらが会社の屋上で音楽を聞きながら鼻歌を歌っていたことを知っていた神代は、夏希に音楽療法を提案。夏希は、ピアノの音階に乗せて言葉を発するよう促しますが、さくらはなかなか声を出すことができません。
神代と夏希があきらめかけたそのとき……さくらの口から、歌声がこぼれます。それは、さくらが幼いころから口ずさんできた、大好きな曲でした。
おもむろにギターを持ちだし、たどたどしいさくらの歌声に伴奏を合わせていく神代。その曲は神代と夏希にとっても、ミュージシャン時代のかけがえのない一曲なのでした。
と、最後の最後でシンガーの本懐である歌を披露した藤原さくらですが、別に上手くないんですね。ポロポロと涙を流しながら、プロのシンガーが上手くない歌を歌っている。「歌が上手くない」という、まだ才能が開花していないという、そういう芝居をしてるんです。ここで圧巻の歌声を披露してしまえば、作品が終わってしまいます。
思い返せば、演技力が不安視されていた藤原さくらですが、ちゃんと芝居していました。ほの暗い瞳も、なかなか女優然としていて新鮮です。例えていえば『タイヨウのうた』の寡黙なYUIにも、『マエストロ!』の天真爛漫なmiwaにも、ついでにいえば『月とキャベツ』の山崎まさよしにも、存在感としてはひけを取っていなかったと思います。
一方、福山は安定の福山でしたが、さすがに老けた。おばちゃんがポヤヤーンとなったり、さくらの同僚が福山のルックスや雰囲気を絶賛したり、通りすがりのオカマから「あら男前」と声をかけられたりと、「女だったらこの人に憧れちゃって当然です」という演出側のメッセージはしつこいほど織り込まれていますが、いやー、さすがに老けました。アラフィフだもん。普通に考えて、さくらの恋愛対象としてはキツいです。映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』で橋本環奈(17)が長谷川博己(39)とキスしてて、よくできた娘っ子の老人介護みたいな雰囲気が漂っていたものですが、それ以上の年の差ですもんね。
かように今後、恋愛パートに入っていくと、福山ファンもそうじゃない人も「こりゃ見てられん」となりそうな気がしないでもないですが、とりあえず藤原さくらがガチで歌うシーンが出てくるまでは注目できると思いますよ。
あと、さくらが吃音なので、彼女の“リアクション待ち”のシーンがたくさんあってドラマのテンポが超悪いので、視聴率はもっと下がると思います! たぶん!
(文=どらまっ子AKIちゃん)