本来、誰がどんな仕事に就こうと、他人がそれに文句を言う権利などないはずだ。しかし就職に際し、非常に珍しい選択をした学生が新聞で紹介され、その選択を巡って議論となっている。
話題となっているのは、筑波大学医学部を卒業し、医師国家試験にも合格したものの、この春TBSに入社した女性だ。スポニチは4月2日、「TBSに超異色新人 医師国家試験合格も『ドラマ好き』と入社」という記事を掲載し、この女性を紹介。記事によれば、女性は医療ドラマが好きで医者になろうと思ったが、本当に好きなのはドラマだったと気づき、テレビ局に就職したという。
議論となった理由は、医学部生の教育には多額の税金が使われているからだ。神戸大学病院で働く岩田健太郎医師は4月5日、「医学部卒業後にTBSに入社してはいけないのか。」というブロク記事を公開。「確かに、医学部の教育には多額の投資がなされている」と述べたうえで、
「医学部を卒業して医師になったからといって、臨床医になるとは限らない。研究をするものもいれば、厚労省の官僚になるものもいるし、保健所に勤務するものもいれば、医療ビジネスに参入するものもいれば、作家になるものもいる」
と綴り、女性の選択を支持した。一方、近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師の榎木英介氏は4月6日、「個人 Yahoo!ニュース」で、女性に対して肯定的な立場を取っているものの、
「やはり医学部卒業生には医師、もしくは医療を生かした職業で社会貢献してほしいというのが、医学部教員として思うところ」
という見解も述べている。
はたして、ネットユーザーの意見はどうかというと、上述のスポニチの記事を掲載したYahoo!のコメント欄では、
「医学部出たなら医者になって人の命を救ってほしいよ」
と、厳しい声が多く、
「何でも挑戦するのは
など、女性の選択を支持する声は少数となっている。
著名人では、コメント欄で名前のあがった森鴎外や手塚治虫のほか、渡辺淳一、北杜夫なども医師免許を持ちながら別の道を選び、成功を収めている。なかでも手塚治虫の『ブラック・ジャック』は、まさに医学の知識のたまものといっていいだろう。
新入社員に対し、このようなビッグネームを引き合いに出すのは適切ではないかもしれないが、要は、医学の知識を生かす道は医者以外にもあるということ。ドラマ作りに定評があるTBSに入社した彼女の、これからの社会人生活にエールを送りたい。
※当記事は2016年04月12日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。