「医学部を卒業→テレビ局に就職」が物議を醸す | ニコニコニュース

医学の知識を生かされたドラマが生み出さえることを期待したい
R25

本来、誰がどんな仕事に就こうと、他人がそれに文句を言う権利などないはずだ。しかし就職に際し、非常に珍しい選択をした学生が新聞で紹介され、その選択を巡って議論となっている。

【もっと大きな画像や図表を見る】

話題となっているのは、筑波大学医学部を卒業し、医師国家試験にも合格したものの、この春TBSに入社した女性だ。スポニチは4月2日、「TBSに超異色新人 医師国家試験合格も『ドラマ好き』と入社」という記事を掲載し、この女性を紹介。記事によれば、女性は医療ドラマが好きで医者になろうと思ったが、本当に好きなのはドラマだったと気づき、テレビ局に就職したという。

議論となった理由は、医学部生の教育には多額の税金が使われているからだ。神戸大学病院で働く岩田健太郎医師は4月5日、「医学部卒業後にTBSに入社してはいけないのか。」というブロク記事を公開。「確かに、医学部の教育には多額の投資がなされている」と述べたうえで、

「医学部を卒業して医師になったからといって、臨床医になるとは限らない。研究をするものもいれば、厚労省の官僚になるものもいるし、保健所に勤務するものもいれば、医療ビジネスに参入するものもいれば、作家になるものもいる」


「このような広がりがある世界が医療全体には資するものとなっている。医学部卒業生が全員臨床医療『だけ』に従事していたら、日本の医療界はもっとプアなものになっているだろう」

と綴り、女性の選択を支持した。一方、近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師の榎木英介氏は4月6日、「個人 Yahoo!ニュース」で、女性に対して肯定的な立場を取っているものの、

「やはり医学部卒業生には医師、もしくは医療を生かした職業で社会貢献してほしいというのが、医学部教員として思うところ」

という見解も述べている。

はたして、ネットユーザーの意見はどうかというと、上述のスポニチの記事を掲載したYahoo!のコメント欄では、

「医学部出たなら医者になって人の命を救ってほしいよ」


「この人は医師1人を育て上げるための医学部6年間の国税がいくらかかるか分かってるんだろうか?」
「この人が医学部に合格したために医師を志した人が落ちたと思うと勿体ない」

と、厳しい声が多く、

「何でも挑戦するのは


素晴らしい。
優秀だからできること」
「文豪森鴎外も医者でした。漫画の神様手塚治虫も医者でした。…たまにはいいんじゃないですか?」

など、女性の選択を支持する声は少数となっている。

著名人では、コメント欄で名前のあがった森鴎外や手塚治虫のほか、渡辺淳一、北杜夫なども医師免許を持ちながら別の道を選び、成功を収めている。なかでも手塚治虫の『ブラック・ジャック』は、まさに医学の知識のたまものといっていいだろう。

新入社員に対し、このようなビッグネームを引き合いに出すのは適切ではないかもしれないが、要は、医学の知識を生かす道は医者以外にもあるということ。ドラマ作りに定評があるTBSに入社した彼女の、これからの社会人生活にエールを送りたい。


(金子則男)

※当記事は2016年04月12日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。