ガンホー・オンライン・エンターテイメントは,PlayStation 4用ソフト「Republique(リパブリック)」を,2016年4月14日に発売した。
本作はもともと,Kickstarterでのクラウドファンディングの成功によって開発が始まったタイトルで,2013年にiOS向け(Android版は2014年)に,全5章のエピソード形式で順次リリースされていた。その後,PCなどへの移植を経て,今回,初めてコンシューマゲーム機への移植が実現。このPS4版では全5章のエピソードがひとつにまとめられたうえに,日本語字幕によるプレイが可能となっている。本稿ではそのプレイレポートをお届けする。
■ゲーム内に存在するすべての監視カメラが,ゲームの視点を担う
見てはならない「ある物」を見てしまったことから,当局に危険人物としてマークされ,監禁生活を余儀なくされてしまう本作の主人公ホープ。プレイヤーが,“そこ”から彼女を脱出させるという目的のもとに物語が展開していく本作。そのオープニングはセンセーショナルだ。
突然の着信音から電話を取ると,画面には暗い部屋にいる女性の顔が映し出され,恐怖におののく表情でプレイヤーに対して助けを求めてくる。部屋が明るくなると,彼女の肩越しに1台の監視カメラが見える。さらに画面の指示通りにボタンを操作すると,その監視カメラの映像へと切り替わり,部屋全体を見渡せるようになる。
本作でプレイヤーがとるべき行動は,助けを求めてきたホープを施設から脱出させること。そのためのとくに重要な行動が,このカメラを使ったサポートだ。高度な監視システムを持つ施設の内部には無数の監視カメラが設置されている。プレイヤーはこれをハッキングして,ホープや周囲の様子を確認しながら誘導し,その脱出をサポートしなければならない。
建物などに設置された複数の監視カメラを使ってプレイするゲームは,それがゲームのメインシステムではないものも含めると,それなりの数が過去にリリースされていて,筆者もいくつかをプレイした経験があるが,本作はそれらの作品とはひと味違った特徴を持っている。
そのひとつが,プレイヤーは監視カメラでホープをサポートすると同時に,ホープ自身を操作して動かせるということ。ステルスアドベンチャーを謳う本作は,三人称視点のアクションゲームとしても進行していく。そう聞くとなんとなく複雑なゲームのように思えるが,もとがスマホ向けゲームで,さらにこのPS4版はDUALSHOCK 4での操作に最適化されていることもあって,操作自体は決して難しくない。
ゲーム中に[R1]を押すと「OMNIビュー」が展開し,カメラの切り替えや施設へのハッキングを行えるようになっている。このときはホープも含めて時間(画面の動き)がストップするため,建物内を巡回警備しているプリズラック(護衛者)などの動きを気にせずハッキングが行える。OMNIビューを展開していないときのサポート側の立場としては,使用中のカメラの角度とズーム操作のみとなるので,ホープの操作に集中できるというわけだ。
ゲーム中の視点は基本的に建物内のカメラが捉えているものなので,背後からキャラクターを捉える一般的な三人称視点のアクションゲームのそれとは異なる。感覚としては「バイオハザード」シリーズの初期作品などに代表される固定カメラのアクションアドベンチャーに近い印象だ。表現としては一昔前のものではあるが,プレイヤーが第三者として物語に関与しているという設定には実にマッチしたもので,ゲームの緊張感を高めることに成功している。
なお視点となるカメラは,プレイヤー自身が任意で切り替えられるとともに,ホープがカメラの画角外へ移動するとオートで最適なカメラに切り替わる仕様だ。そのため,任意で切り替えない限りホープの姿を見失ってしまうことはない。万が一,見失ってしまったときでも[L3]で即座にホープが映っているカメラに切り替わるので,心配することはない。
■ハッキングができるのはホープの周囲のみ。プレイヤーとホープの連携が重要
本作のルールにおける,もうひとつの大きな特徴として,プレイヤーはハッキングをホープの持っているスマホの回線を介して行っていることが挙げられる。これにより,ハッキングができる範囲がホープの周囲に限定されるため,移動先の様子をカメラで確認するには,ホープ自身が危険を承知で移動しなければならないというもどかしさがあり,独自の緊張感を生み出している。
ゲーム中にプレイヤーが干渉できることはカメラの操作だけでなく,セキュリティの解除やデータのスキャンが行える。さらに,ゲーム中に習得していく「スキル」によって,新たなハッキング能力を身に付けて,ホープをさらに有利な状況に導くことができる。画面に映っているホープにではなく,ディスプレイを見ているプレイヤーに能力が備わっていくというのがまた面白いところだ。
スキルの能力には,要所に設置してあるメールを盗み見る「メールスキャン」,プリズラックの巡回ルートを知る「推測」,近くにある電話などの機器を使ってプリズラックの注意を引く「陽動」などがある。一部の効果の高いスキルの使用には,ホープが持っているスマホのバッテリーを消費してしまうという制限があるのも,スマホを介して進む本作らしい演出だ。
■監視カメラで模索したルートでステルスアクションを構築
冒頭で述べた通り,ゲームは章立てで進行していき,特定の場所までホープを誘導できると,次の章に進むという流れになっている。ホープの目的地は,ストーリー展開に応じてマップに表示されていくのだが,建物は複雑な構造をしていて,さらに要所にはプリズラックが巡回しているため,簡単には進めない。監視カメラやスキルを駆使して,できるだけ安全なルートを模索していくことになる。
ホープは囚われの身であり,女性ということもあって,行動はかなり制限される。プリズラックに抵抗するためには,催涙スプレーやスタンガンなどの消費アイテムが必要で,それらを持っていないときに発見されて捕まってしまうと,強制的に「隔離室」送りとなってしまうのだ。
ステルスアクション自体はさほどシビアではない。走ると見つかりやすくなるものの,足音や物音まで気にする必要は基本的になく,プリズラックの視界に入らなければ発見されることはない。ただし彼らの視界は可視化されておらず,特定のスキルを習得するまでは,カメラで確認しないと居場所も分からないので油断は禁物だ。
■ゲーム内に仕掛けられた細かな“遊び”も楽しい
プレイヤーには,一人の個性的な協力者が存在する。それが「クーパー」だ。実はこの人物,物語の冒頭で登場したプリズラックの1人で,こともあろうに実名でプレイヤーに接触してくるのだ。彼の協力によってハッキングができるのだが,テキスト読み上げソフトの合成音声で妙になれなれしく,さらにメッセージにいちいち顔文字を入れてくるのもいい感じにウザさを出している。
ゲームのコレクト要素としては,巡回しているプリズラックの背後に近づくことで「フロッピーディスク」を入手できるのだが,これに近年のヒットゲームのイラストがあしらわれていて,それに対してクーパーがうんちくを話してくれるのが個人的に面白かった。もとがインディーズ作品ということもあってか,このあたりの“遊び”はいい意味でゆるい内容で,ゲームの味付けにも貢献している。
なお,このPS4版には,ホープの追加コスチュームが用意されている。ゲーム中で手に入る「女子高生」などのほか,早期購入特典として配布されるDLコードで入手できるものがあり,それらの中には着替えることでゲームの難度に影響をもたらすものも存在している。オプションによる難度設定がない本作において,より深くゲームを楽しみたいという人は,ぜひこれらの特典は手に入れておきたいところである。
■ホープとプレイヤーのコンビネーションがうまくゲームとしてまとめられた秀作
インディーズ作品ならではの挑戦的な内容を持ちつつ,コントローラでの操作にも違和感のないチューニングが施されていて,手触りのいいアクションアドベンチャーとして仕上がっていた本作。囚われの美女とディスプレイ越しのプレイヤー(+お節介やきのプリズラック)によるコンビネーションが,バランスよくゲームとしてまとめられていたのが非常に好印象だった。
少し気になったのは一部のシーンの切り替え時に,ローディングによるものなのか,画面がやや長めに止まることがあったことだ。ゲーム画面が,スマホの回線を介した映像という設定もあり,意図的に入れられた画面の崩れなどと同様の演出と捉えればさほど違和感はなく,テンポを求めるゲーム内容でもないものの,いいところで遭遇するとやはり「ん!?」という気分になってしまう部分ではあった。
そうした個人的に気になった点を差し引いても,これまで述べてきたとおり,ゲームとしての完成度は十分に高い。章ごとにエンドクレジットが入る構成などは次の章への期待を大いに高めてくれる。全話がまとまられたPS4版ならば,そのまま続きを遊んでもいいし,インターバルを入れて遊ぶという手もある。パッケージ版,DL版とも価格も非常に手軽なので,この機会に本作の斬新なゲームシステムに触れていただければと思う。
リンク:PlayStation Store「République」ページ
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