改訂の全体的な特徴として挙げられるのは、リスニングとリーディングの境目が薄れたことと、文全体の理解が求められるようになったことの2点だ。
まず、リスニングとリーディングの境目が薄れたとはどういうことか。リーディングのパート7でテキストメッセージやチャットが使われるようになるため、従来のパッセージと比べて非常にカジュアルな表現がリーディングにも登場する。口語表現の攻略がリーディングにも必要になるのだ。
次に、もう一つの特徴である文全体の理解が求められる点だが、その典型的な例はパート6で新たに出題される、空欄に文章を入れる問題だ(従来は単語を入れればよかった)。文全体の流れが理解できなければ手ごわいだろう。
この変化について作家の清涼院流水氏はこう見る。「リーディングにしてもリスニングにしても、全体像をつかんだうえでの情報処理能力がいっそう求められる。従来はスキミングと呼ばれる『つまみ読み』で正答できた問題が、すでに15年から減っている。英文理解の速度と精度をいかに高めるかが鍵を握る」。
ほかにも、会話やトークの中で話し手が暗示している意図を問う設問が加わるなど、「文脈力」が問われる設問が増える。
新傾向になって得する受験者と損する受験者はいるのか。ETSの公式見解によれば、変更後のテストと現行のテストの難易度は変わりなく、たとえば現行の形式で600点を取っていた人なら、改訂後の試験でも同様に600点程度になるはずだとしている。
とはいえ、人によって得点源としていたパートが違うはず。パートごとの問題数の増減がスコアに影響するのではないだろうか。元商社マンで国際ビジネスの最先端を経験した花田徹也氏は「パート1、2、5を主な得点源としてきた受験者や文脈をとらえるのが苦手な受験者には厳しくなる」と指摘。リスニングでは、これまで得点しやすいとされてきたパート1の写真描写問題とパート2の応答問題が、それぞれ10問から6問、30問から25問に減る。リーディングも、パート5の短文穴埋め問題が40問から30問と大きく減少する。
一方で、全体的に文脈依存型の問題が増える。清涼院氏によれば「解答テクニック先行で抜け道を探してきたような人は苦戦を強いられるかもしれない」という。「逆に基本を疎かにしないで、地道に学習してきた人にとっては何の心配もない」と断言する。
5月から始まる新テストまでに準備が万端とはいかない学習者も多いはずだ。すぐに受けるべきか、少し「様子見」をしたほうが得策なのか。
「絶対に受けるべき」と強く勧めるのは花田氏。「ある程度の慣れが必要なTOEICテストは、初回の受験で実力を発揮できるとは限らない。まず5月6月と受験し、その経験値をいかして3回目の7月に自己ベストを出すぐらいのスケジュール感が妥当」。
さらに「改訂された」といっても、実は変更があるのは全設問の1割程度。「満点を狙う人なら1割への対策を怠ることは命取りだろうが、700点台ぐらいまでの人にとっては、正直それほどの影響はない」とTOEIC受験力アップトレーナーのヒロ前田氏はいう。
ただし、新テストを受けるなら、時間配分を知るための「リハーサル」が必須であるのは従来と同様である。前田氏は「設問数の変化に応じて、パートごとの時間配分が変わってくる。現行の形式による時間配分が体に染み込んでいる人ほど、意識的な切り替えが必要」とアドバイスする。
▼損する人
・仕事で英語をまったく使わない人
・SNSやチャットの経験がない、もしくは苦手な人
・口語表現の知識が乏しい人
・英文法の基礎に不安がある人
・日本語の能力に自信がない人
・地道な勉強を避け、小手先のテクニックに頼ってきた人
・長文の内容把握が苦手な人
・旧テストの時間配分から抜け出せない人
・満点狙いで試験を受けている人
▼得する人
・仕事で英語を使う機会が多い人
・日頃からSNSやチャットでコミュニケーションをしている人
・口語表現をよく知っている人
・英文法の基礎ができている人
・日本語の能力(国語能力)が高い人
・基礎からコツコツ勉強してきた人
・長文の内容把握が得意な人
・時間配分を柔軟に変えられる人
・700点ぐらいまでを得点目標にしている人
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清涼院流水----------