皆さんデスマーチしてますかー。(挨拶)
お久しぶりの島国大和です。
最近のゲームシーンは,PlayStation 4が絶好調,Oculus VRの「Rift」もついに発売され,PlayStation VRへの期待も大と,なかなか熱いですね。
しかし,そんな中でも,何か足りないんですよ。足りない。俺の心にポッカリと穴が。
実際のところ日本のゲームシーンも,アイテム販売に対してガイドラインが出されるとか,一部は熱いっちゃ熱いんですが,そっちは今回放置です。
そういうわけで今回のお題は「国産ならでは」で行ってみましょー。
■偏った予算配分と,研ぎ澄まされた職人芸
まず,こだわりというか,国産ゲームっぽさってなんだろうと考えたんです。
ちょっと前に「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」(以下,MGSV)を遊びまして。
MGSVは,チュートリアルが1時間ぐらいあったり,それが実はあまり本編のチュートリアルになってなかったり(ストーリー上のとある設定のため,本編とはプレイ感覚が異なる)します。
これが海外のAAAタイトルだったら,もっと本編のプログラムに工数を使って,お話部分はプログラムじゃなくてデータでやると思うんですよ。
この場合,“プログラムでやる”というのは,企画者が作った仕様書を基にプログラマがプログラムを新たに書いて実装する,いわばオーダーメイド。デバッグもしっかりやらないとバグります。
“データでやる”というのは,ムービーにしてしまうか,ゲームで表現するにしても,社内のゲーム製作ツールで対応できる範囲でやる,みたいな意味です。プログラマが関わる量は最小限です。
MGSVの場合,本編中に挟まれるムービーシーンは,おそらくですが,まず3Dツールでモーションとカメラワークをつけて,それに音声やエフェクトを追加する仕組みが作ってあるのだと思います。仕組みさえ作ってあればあとはプログラマの関与は最低限ですみますから。
しかし冒頭のチュートリアルは,データとプログラムが複雑に絡み合った作りになっているのが分かり,作り手としてみた場合「うわぁ,めんどくせぇ」という印象なのです。
MGSVは一事が万事この調子で「え,予算をそこに使うの?」という感じです。
このような手法は,ムービーより確実に没入感が出ますが,費用対効果を考えれば,そんな工数かかるところはささっとすっ飛ばして,通常のゲーム中でいろいろ仕掛けたほうがいいわけですよ。
海外AAAタイトルにはMGSV以上のお金をドバーとかけているものもありますが,おそらくコアエンジン製作にコストをかけ,データ部分は横に広げて(製作人数を増やして)いるはずです。基本的に物量作戦で勝負が付く前提の設計の仕方ですね。
ひるがえって,日本人開発者の自分から見ても,MGSVにおける予算配分のイビツな感じは,時代に逆行するあまり新鮮さすら覚えます。効率重視の手法からは生まれない,なにか情念のようなものが感じられるのです。
自分のサイフでない無駄遣いというのは,とても痛快で素晴らしいですよね。
こうやって,毎日どんどん溶けていく予算を見ながら,「よーし,あと●年かけてすげぇゲーム作るぞ!!!」と思えて,実際に素晴らしいものを生み出す人は,ある種の才能を持っています。しかし外から見れば狂人の類でもあり,こういったクリエイターをうまく制御できるかどうかがエンタメ系会社組織の命題ではないかと思います。
もひとつ。
まずキャラクターなどの2Dイラストを高いクオリティで量産できるイラストレーター,パーツごとに切り刻んだイラストを動かすツールを作るプログラマ,そのツールを使いこなせるスキルを持ったモーションデザイナー。
the 職人芸!
これら全部が高いレベルで絡み合ってひとつのゲームですからね。ある種のスキルを持つ人が一人でも欠けたら作れません。ソシャゲのカード絵を「Live2D」とかでちょっと動かそうぜ,ってのとはワケが違うんです。
また,「オーディンスフィア レイヴスラシル」は絵柄のテイストも,なかなか海外産ではできないものですよね。
最近,アジアの開発チームでもこういった日本の影響下にある2Dイラストを描ける人が増えてきました。
はい。そんな感じで。
予算をどこに投下するか。
という所だと思います。ゲームの個性って,究極的には「どこに工数割いたか」ですからね。自由度にこだわったり,残虐描写にこだわったり,おっぱいの揺れにこだわったり,安定した60fpsにこだわったり,映画的表現にこだわったり,厨二的センスにこだわったりです。
■“日本のこだわり”はどうやって生まれたか
実際のところ,こだわりというものは,属人性が高くて,お国柄云々よりは,個人の芸風ともいうべき部分が大きいと思います。
まず,労働環境。
次にゲーム黎明期の市場の強さ。
最後に,生活環境。
こういった条件が揃った中で,たくさんのゲームが作られていくうちに日本的なスタイルが確立されていったんでしょう。
たとえば,カプコンはベルトスクロールアクションの老舗ですが,あれはCP2基盤という当時のカプコンの主力基盤で類似のゲームを複数出すことによって,チームとしてのレベルが上がり,ゲームの完成度がどんどん上がっていったという経緯があります。
ボタンをポチっと押せばシュっと技が出てビシッと当たって敵がのけぞる。
みたいな一連の動作がとことん練りこまれて,現在の「日本風」といわれるモーションの代表的なものになっています。
ほかには,日本ではドラクエの大ヒットを受けて類似ゲームが大量に出たおかげで,RPGにおけるゲームルールとドラマの見せ方が練りこまれ,文法が定まっていったとことも見逃せないでしょう(最近ではJRPGと揶揄されたりもしますが)。
日本の開発現場は,一度ルールが決まった中での切磋琢磨が得意だと感じます。
コレは何か,気質のようなものもあるかもしれません。
最近の海外AAAタイトルを見ていて,そういった歴史を思い出したりします。
■国産ゲーがこだわりを維持できたのはなぜか
気を吐くイカしたゲームはMGSVやオーディンスフィア レイヴスラシル以外にもたくさんありますが,大きな視点でとらえれば,このところ国産ゲームの勢いが失われているように感じるのは否定できない状況です。
かつて,国産ゲーがこだわりを維持できたのは何か。そして何故それが感じられなくなりつつあるのか。コレはもう簡単です。
熱心なプレイヤーの絶対量です。
総務省統計局が公開しているデータを見れば分かる通り,20代を中心とした若年層,つまり“ゲームを熱心に”プレイしてくれる層が減ってますよね。
ファミコンからスーファミ,初代PlayStationの時代あたりまでは,日本に圧倒的に熱心なプレイヤーが数多くいました。よくわからないタイトルを買ってくれる人,海のものとも山のものともわからない新型ハードを発売日に買う人がふつうにいたんです。
え,そんなヘンなゲームで商売が成り立つの?
こうして,ヘンで味わい深いゲームが出ました。それも支える市場があったからです。
ちょっと前にWebでとある人気ゲームシリーズについてのインタビューを読んだのですが,年末商戦リリースの場合,5月にはプレイアブルが完成していて,あとはずっとテストプレイと調整,みたいなエピソードが語られていて,あまりのリッチさにひっくり返りました。
売ろうと思ったら売れる商品が手元にあるのに,半年いじくり回してるわけですよ。もの凄い。今なら絶対「今すぐ売れ!」とか言うエライ人がいますよ。
半年以上調整なんてことができたのも「売れる確信」と,それを支える「熱いプレイヤー層」のおかげだったと思うんですよね。
うらやましいなぁ。そんな開発したいぞ!
ソニー・コンピュータエンタテインメントがソニー・インタラクティブエンタテインメントと名前を変えるのに合わせて,本社をアメリカに移したことや,Xbox Oneが日本市場に重点を置いていない(と感じられる)ことからも分かるように,日本市場の存在感は薄くなっています。
前述したように,ゲーム人口以前に,少子化が進んでいて若年人口ダダ下がりですから。可処分時間も少ないですし。そのうえスマホのゲームと競合します。ちょっと年齢が上がると,ゲームに没頭してられないので,スキマ時間でプレイできるスマホに移行しやすいんですよ。
さらに,ゲーム会社視点で言えば,日本のスマホユーザーは世界でも特異なぐらいお金を使うというのが数字に出てますので,大作なんかを作る暇があったらスマホゲーム作ろうぜってことになるわけです。
実際のところ,スマホを含めた日本のゲームシーン全体としては,今が過去最大級の盛り上がりと経済効果なんですよ。今までゲームをしない人まで巻き込みましたからね。
そして結果的に,コンシューマゲームシーンがちょっと厳しい感じになってるかもしれません。
中型,小型で手堅く売れることを狙うと,版権モノとか続編ものになっちゃいますし。先に挙げたこだわりの2タイトルだって続編ものです。
本当に,もっと国内でもいっぱい売れるといいのに! でも人口が足りない! これでは国産っぽいゲームが作れない!
難しい時代に差し掛かっているなーと思います。
■そんなわけで
今回は相当に強引に,国産ゲームのこだわりに関して書いてみました。
新しい市場にわーいと飛び込むのも,大好きだったこだわりが生き残るように手をかえ品をかえがんばるのも,プレイヤーとゲーム会社と開発者に委ねられているんでしょうね。
「よーし,水着のテラテラ感と,そこから滴る水の為に,開発期間を確保するぞ!」
いいですねー。気が狂ってますよね。
まだまだいろいろなゲームの登場を見たいですし,日本のゲームメーカーにはがんばってほしい。プレイヤーとしても国産ゲームで楽しみたいです。
うーん。大変だ。というあたりで,今回は失礼します。
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