2016年4月16日,スクウェア・エニックスは東京・EX THEATER ROPPONGIにて,今年で発売6周年を迎える「NieR」シリーズのコンサート「NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノ シロ 再生ノ クロ」を開催した。
同イベントでは,世界中のゲームファンから絶賛されているシリーズの名曲の数々はもちろん,待望の新作「NieR:Automata」の新曲や実機プレイなどを披露。ヨコオタロウ氏を始めとする開発陣や,声優の門脇舞以さん,石川由依さんらによるトークショーも行われた。
本稿ではその模様をジックリとお届けしていくので,NieRファンにはぜひとも最後まで目を通してほしい。
【出演者】(※敬称略)
歌:エミ・エヴァンス
【セットリスト】
―Talk Live Part1―
04.イニシエノウタ/デボル
―Talk Live Part2―
07.NieR:Automata New BGM #1
―Talk Live Part3―
09.エミール/犠牲
―アンコール―
■深遠な物語と共に蘇る名曲の数々
ピアノ,ギター,ストリングス四重奏という編成で行われた今回のコンサート。幕開けとなる1曲めは,“ハジマリノウタ”としてこれ以上相応しい曲は無いであろう「夏ノ雪」。NieRという世界観そのものを音楽に乗せたような,美しくも儚い音色にウットリと聴き惚れる。演奏中はゲーム本編の映像がスクリーンに映し出されており,とても6年前の作品とは思えぬほど鮮明に,プレイしていた頃の記憶を呼び起こしてくれた。
続いては,NieRといえばこの曲を思い浮かべる人も多いであろうフィールド曲「光ノ風吹ク丘」。ボーカルを務めるのはもちろん,本シリーズの楽曲を語るうえでは欠かせない歌姫,エミ・エヴァンスさんだ。まさしく“光ノ風”と表現するに相応しい,どこまでも透き通った歌声が会場を包み込む……。
3曲めは,しっとりとしたピアノソロから,サビへかけて徐々に盛り上がりを見せる「カイネ/救済」。歌詞の一つ一つに想いを込め,歌い上げていくエミさんの姿が,気付かぬうちに溢れた涙で滲む。作中屈指の名曲を,こんなにも早いタイミングで披露してくれるとは,実に贅沢なコンサートである。
コンサートパートの第一部が終わると,本イベントの司会を務めるエミール役の声優・門脇舞以さんが登場。会場へ向けて「いかがでしたか?」と尋ねると,万感の思いが込もった盛大な拍手が会場に鳴り響く。門脇さん自身も「当時の気持ちを思い返して,うるっとしてしまいました」と感慨深そうにコメントしていた。
続いて,シリーズ全体の楽曲を担当するMONACAから,岡部啓一氏と帆足圭吾氏が登壇。NieRの試作段階でヨコオ氏から声が掛かり,本シリーズの楽曲を担当することになった岡部氏は「最初に2〜3曲作り,試作品に入れ込んでは修正の繰り返しでしたね。ずっとNieRの曲を作っていたわけではありませんが,トータルで2年ほど関わっていました」と,当時を振り返る。加えて,「当初はあまり期待されていない作品だったこともあり,リラックスして自由な曲作りができた」とも語った。
そして,NieRにおいては岡部氏の右腕とも言える存在であり,今回のコンサートにおけるライブアレンジも手掛けた帆足氏。「今までで一番の仕事」を尋ねられると,少し悩む素振りを見せたものの「魔王」を挙げた。
ここで,ボーカルを務めるエミさんも登場。岡部氏は共通の知人を介して知り合ったエミさんについて「アーティスティックでオンリーワンな歌声を持つ方であるため,“ここぞ”という時にお願いしたいと思っていました。そこでちょうどNieRのお話をいただき,エミさんの歌がイメージにぴったりだと思ったので満を持してオファーしたのです」と,エミさんがNieRに関わることになった経緯を説明。
そんなエミさんだが,自身もNieRのサウンドトラックが大のお気に入りとのこと。「NieRに参加することができて,恵まれていると思います。おかげで大きなホールで歌えましたし,温かいファンの皆様にも出会えました。NieRの曲は歌えば歌うほど愛しくなるので,ぜひ歌い続けたいです」と,作品に対する感謝の想いを語った。
■トラウマメーカー・ヨコオタロウ
再びライブパートに戻ると,神秘的な歌詞が印象的な「イニシエノウタ/デボル」を披露。優しく語りかけるようなエミさんの歌声が,会場いっぱいに広がる。その後は「休息」からの「愚カシイ機械」へと続き,エミさんのボーカルに加えて中川奈美さんが登場し,コーラスを担当した。
そして二度めのトークパートは,最新作「NieR:Automata」のメインキャラクター・2Bを演じる声優・石川由依さんのセリフ朗読で幕を開ける。ゲーム本編の映像がスクリーンに流れ,門脇さん,石川さん,プロデューサーの齊藤陽介氏,ディレクターのヨコオタロウ氏がステージに登場。ちなみにヨコオ氏は,インタビューなどでお馴染みのエミールマスクを着用しており,視界が悪いため齊藤氏に小さな子供のように手を引かれて現れたため,その姿に会場から笑いが起こっていた。
開発陣が勢揃いしたところで,最新作の「NieR:Automata」について。2Bを演じる石川さんは「彼女はアンドロイドの中でも冷静沈着で,感情を表に出すタイプではないです。でも,正義感やほかのキャラクターに対する愛情も確かにあって,とても人間らしい優しさを秘めた子だと思いながら演じています」とコメント。その一方で,ヨコオ氏が「いつもどおり,殴って殺して殺されたりする作品です。そこに相応しい人達を用意しようと思って,キャラクターを作りました」と通常営業でぶっちゃけ,齊藤氏から「言い方が乱暴だよ(笑)」とツッコミが入った。
また,石川さんは本作に関わった感想として「皆様には最後まで,エンディングまで見てほしいという想いが強いです」とコメント。エンディングという言葉に訓練されたファン達がざわつくと,ヨコオ氏は「今回はハッピーエンドだと思って作っているんですよ」と話し,会場からはドッと笑い声が上がった。
すでに「こちら」の速報記事でもお伝えしたとおり,ここで新たに9S(CV:花江夏樹さん)とA2(CV:諏訪彩花さん)についての発表があり,花江さんと諏訪さんからのビデオメッセージが上映された。
なんと花江さんは小学生の頃,夢中になって「ドラッグ オン ドラグーン」(以下,DOD)をプレイしていたらしく,NieRシリーズがその続編にあたると知って喜んだとのこと。アフレコに関しては「一生ぶん,泣き叫んだんじゃないかと思うくらい,良い意味で“もう二度とやりたくないシーン”がたくさんあり,演じ甲斐がありました」とコメントし,いろいろな意味でファンの期待感を煽ってくれた。
また,シナリオについても,終盤にかけてキャラクターに感情移入したところで“いつものエンディング”が待ち受けていることを明らかにし,会場をザワつかせる。自身もDODの“赤ちゃん”エンディングがトラウマになっているという花江さんだが,「そのエンディングに呆然としている僕を見ていた母親が,PS2のコンセントを引き抜いたんですよ」と,トラウマメーカーとして名高いヨコオ作品の罪深さを実感できるエピソードを語ってくれた。今回もそれに近い衝撃が味わえるということなので,大いに期待したいところだ。
一方,諏訪さんは,NieRに対して「ビッグタイトル」というイメージがあり,最新作への出演が決まったと聞いた際には非常に驚いたとコメント。音声収録の休憩中に,自身を起用した理由をヨコオ氏に尋ねたところ“大人っぽい声を出せる人”を基準に選出したとの答えが返ってきたという。しかし,ヨコオ氏とはアフレコで初めて顔を合わせた諏訪さん。現場入りした際にその可愛らしいルックスから「あの声を出していたのは,本当にこの人なのか?」と驚かれたらしい。
役柄に関しては一匹狼な雰囲気のA2を演じるにあたり,「意識してクールかつ,強さを出せるように演じました」とのこと。普段は口数が少ないものの,戦闘時には荒々しくなるタイプらしく「収録では何回“クソ!”と言ったかわかりません(笑)」と,A2というキャラクターのパーソナリティをうかがわせる裏話をしてくれた。
「NieR:Automata」の楽曲に関して,先行公開されている2曲について齊藤氏が「評判いいみたいですよ?」と言及すると,ヨコオ氏は「前作からゲームよりも音楽が良いよねって評価があって,岡部さんにジェラってます」と正直すぎる気持ちを暴露。
その流れで,続いてのコンサートパートでは「NieR:Automata」からタイトル未定の新曲,2曲が披露。そのうちの1曲めは中川さんがボーカルを務める楽曲で,低音から高音のキーまでを自在にカバーする神業的な歌唱力で会場のファンを圧倒。ギターがボーカルを支えつつ,曲が進むにつれて徐々にストリングスが盛り上がっていく……スクリーンではゲーム本編のバトルシーンが流れていたが,まさしく戦闘に相応しい,戦意を高揚させてくれるような力強いイメージの楽曲だった。
そして2曲めは,重厚感のあるピアノの旋律に乗せてNicoleさんがソウルのこもった歌声を披露。無国籍感の強いイメージがあるNieRの楽曲として考えると実に洋楽的というか,ともすれば“異端”とも思える雰囲気だが,そんなことはどうでもよくなるくらい歌詞もメロディも常識外れに美しい。「NieR:Automata」が単なる前作の後追いではなく,さらに深く記憶に焼き付くような“新しい作品”になるだろうと予感させるような曲だった。
……ここで一度休憩時間を挟み,門脇さんと齊藤氏によるグッズ紹介コーナーがスタート。グッズの感想や製作にあたっての裏話など,休憩時間にも関わらずサービス精神が旺盛な一幕となった。ちなみに,一部のグッズは4月22日の12:00よりスクウェア・エニックス e-STOREで通信販売される予定なので,気になるという人は忘れずにチェックすべし。
■エンディングは有料ガチャ!?
再び舞台の幕が上がると,門脇さん,齊藤氏,ヨコオ氏,岡部氏が登場。今回は特別に開発中のROMでプレイ画面を見せてくれるということで,会場から大きな歓声が上がった。
コントローラーを握るのは,プラチナゲームズの田浦貴久氏。スクリーンには,廃工場のようなステージに佇む2Bと9Sの姿が映しだされている。グラフィックスに関してはNieR特有のシックな雰囲気を出すため,前作を徹底的に研究して光の加減や空気感を表現しているとのことで,全体に退廃的な美しさが漂っている。
なお,少し前まではお供である9SのAIが優秀過ぎた(?)ために,プレイヤーよりも先に敵を殲滅してしまう,会話しなければいけないNPCまで殺しに行こうとするなど,問題行動が多かったことをヨコオ氏が暴露。これには田浦氏も苦笑い……という感じだったが,嬉しいニュースもあり,今作ではキャラクターを切り替えることで9Sを操作することもできるということが明かされた。サポートタイプらしく,特有の能力を使ったギミックも考えているとのことだ。前作ではサポートキャラであるカイネを操作したいという希望がさまざまな制約によって叶わなかったため,今作ではそれを実現したという。
また,「プラチナゲームズには真面目な方が多いので,シナリオをめちゃくちゃにしようとすると怒られます。エンディングを有料ガチャにしようとしたら,すごく怒られました」と,あまりにも衝撃的な裏話を披露し,会場を爆笑の渦に包み込んだヨコオ氏。それを受けて齊藤氏は「こういうこと本気で言うから怖いんですよ。実際のところ有料ガチャにはなっていませんが,とんでもないエンディングにはなっています」と宣言。しかし,ヨコオ氏は「そんなことないですよ。ハッピー感のあるア●パ●マンみたいな終わり方をします」と反論。最終的に田浦氏へ意見を求めるも,「いい感じに終わった……ように見せかけるのがうまいですよね(笑)」と,なんとも不穏な結論に至っていた。
そして,ここでNieRの6周年を記念して,4月22日〜5月16日の期間中,「ニーア レプリカント」がPlayStation Nowで80%オフで配信されることが発表された。まだNieRの世界に触れたことが無いという人,新作に備えておさらいしたいという人には,このタイミングでぜひともチェックしてほしい。
トークコーナーが終わると,いよいよ最後のライブパートへ。その1曲めは,ストリングスのみをバックに中川さんが歌う「エミール/犠牲」。スクリーンに流れるゲーム本編の映像も相まって思わず目頭が熱くなり,続いて披露された「魔王」で涙腺は完全に決壊。ゲームをやり込んだファンであれば,どちらも心穏やかには聴いていられない,ひたすら美しくて悲しい曲だ。
ラストナンバーは,エミさんが歌う「Ashes of Dreams」。まさしく作品を象徴する曲であり,歌声に合わせてスクリーンに歌詞がゆっくりと流れていく演出がまたニクい。物語の始まりから終わりまでが,走馬灯のように脳裏を駆け巡る。心打たれたイベントの数々が,つい昨日のことのように思い出される……。
これでプログラム上は楽曲が出尽くしたが,会場が暗転してもなお鳴り止まぬ拍手に応え,岡部さんが登場。「あらためていろいろな人の力で,NieRは支えられているのだと実感しました」と,NieRに関わるすべてのスタッフやファンへ感謝の気持ちを伝えた。アンコールに応え,エミさんと中川さんが「オバアチャン」を歌い上げる。
……こうして,NieRファンにとって夢のような一夜は終りを迎える。出演者一同,いつかまたコンサートを開催することを会場に向けて約束し,「NieR Music Concert & Talk Live 滅ビノ シロ 再生ノ クロ」は大喝采に包まれながら幕を閉じた。コンサート終了後の囲み取材の模様をお届けして,本稿の締めとしたい。
■コンサートを終えて……
――コンサートの開催おめでとうございます。まずはコンサートのご感想をお願いします。
岡部氏:
齊藤氏:
石川さん:
門脇さん:
ヨコオ氏:
田浦氏:
ヨコオ氏:
田浦氏:
――前作に関わった方々におうかがいします。今でこそエポックメイキングなゲーム音楽として高く評価されているNieRの楽曲ですが,リリース当時から「これはイケる」と手応えを感じていたのでしょうか?
岡部氏:
齊藤氏:
ヨコオ氏:
齊藤氏:
ヨコオ氏:
――いやいや,我々は本気でゲーム史に残る名曲だと思っていますよ! それを踏まえて,「NieR:Automata」について。そこまで評価された作品の続編ということで,楽曲作りにプレッシャーがあると思いますが,いかがでしょうか?
岡部氏:
齊藤氏:
岡部氏:
――いつか再び今回のようなコンサートを開催したいとのことですが,具体的な展望はあるのでしょうか?
岡部氏:
齊藤氏:
石川さん:
門脇さん:
ヨコオ氏:
齊藤氏:
田浦氏:
――ちなみに今回はキャパシティ900人ほどの会場でしたが,規模的には十分でしたか?
齊藤氏:
――J'Nique Nicoleさんを起用した決め手を教えてください。
岡部氏:
ヨコオ氏:
岡部氏:
――エンディングを有料ガチャに……という話には衝撃を受けました。
齊藤氏:
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