金型屋兼プロレスラーで、“最強プレゼンター”!? 「スーパー・ササダンゴ・マシン」って? | ニコニコニュース

撮影=河野英喜
日刊サイゾー

 人気プロレス団体、DDTプロレスリング(以下、DDT)で、パワーポイントを駆使してプレゼンを披露する異色のマスクマン、スーパー・ササダンゴ・マシン。『アフロの変』(フジテレビ系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などのバラエティ番組にも出演し、話題を集めているが、本業は家業である新潟の金型工場・坂井精機株式会社の専務取締役だ。

 そんな謎に包まれたこのスーパー・ササダンゴ・マシンがこのたび、なぜか『スーパー・ササダンゴ・マシンによるコミュ障サラリーマンのためのプレゼン講座』(ポニーキャニオン)なるDVDをリリースした。一体どんな人物で、何が目的なのか――。その実像に迫る。

――バラエティ番組などへの露出も増えて、認知度が上がった一方で「スーパー・ササダンゴ・マシンって何者?」という疑問を持つ人も多いと思います。金型工場とプロレスラーと芸能活動、どれが本業なんでしょうか?

スーパー・ササダンゴ・マシン(以下、ササダンゴ) 今は金型工場がメインですよ。プロレス活動や芸能活動でもらったギャラは、すべて坂井精機株式会社の口座に入るようになっていますから。完全にビジネスマンです。資本主義の豚です。

――すべては、金儲けのためにやっていると。

ササダンゴ それと、承認欲求を満たしたい、自己実現をしたいから、マスクをかぶってプロレスや芸能活動をしているようなもんです。

――今は松竹芸能に所属していますけど、なぜ松竹に?

ササダンゴ 今のマネジャーに「我々と一緒に手を組みましょう、一緒に儲けましょう」と声をかけられまして。「一緒に面白いことをしましょう」はいろいろと言われますけど、ストレートに「手を組んで儲けましょう」と言われたのは初めてだったので、「ここだ!」と。

――そっちのほうが、ビジネスマンとしてはわかりやすいですね。今回リリースしたDVD『スーパー・ササダンゴ・マシンによるコミュ障サラリーマンのためのプレゼン講座』は、どんなきっかけで制作することになったんですか?

ササダンゴ 『アフロの変』のプロデューサーに、私がDDTでやっている「煽りプレゼン」(編注:プロレス会場でササダンゴが客に向けて、相手とどのような試合を行うかをパワーポイントを使ってプレゼンする定番パフォーマンス)を、別の方法で形にしたいと言われまして。

――DVDでは老舗プロレス雑誌「週刊プロレス」(ベースボール・マガジン社)編集部への自分自身のプレゼン、ケンタッキーフライドチキン(日本KFCホールディングス株式会社、以下KFC)への新商品の、焼肉店でどのように注文を組み立てるかという「孤独の焼肉」プレゼンの3本立てになっていますが、KFCがこの企画を受けてくれたのが、失礼ながら意外でしたね。

ササダンゴ そうなんですよ! あのKFCさんが! 企画段階で、上場企業にもプレゼンしようということになっていまして。まぁ、ぶっちゃけ、私くらいになると大企業のトップにも知り合いがいるわけですよ(本当に)。でも、それは「使っちゃダメ!」というルールを設けられまして。それやっちゃうと、実際にプレゼンするときの緊張感がなくなっちゃいますから。それで、スタッフが100社以上の企業、具体名は出せませんが、KFCクラスの有名企業なんですけど、そこにオファーを出しまして、唯一OKしてくれたのがKFCさんなんですよ。

――KFCに新たなメニューをプレゼンしていましたが(詳細、結果はDVDをご覧ください)、やはりプロレス会場で行うものと違いますよね。

ササダンゴ ちゃんとした偉い人も出席してくれましたからね。プロレス会場とは、真逆ですよ。プロレスは客層がわかっていて、そこに合わせて雰囲気を作っていくんですけど、今回は偉い人もいて、しっかりしたプレゼンの現場に私が放り込まれ、果たしてどうなるか!? という内容ですからね。

――DVD内でのプレゼンの内容も、実際に見るとわかりやすいというか、親しみやすい感じで、すごく好感が持てました。

ササダンゴ 構成がどうだとか、こういうテクニックを使って効果的に魅せるとか、そういった技術的な話はしていないですからね。そこは、マイクロソフトとかアップルの仕事だと思うんで、私はただ実験して検証してるといった感じです。

――そういったアプローチの仕方が、逆に現役のサラリーマンには新鮮に映るんじゃないかと思います。本業でも、プレゼンしたりする機会は多いんですか?

ササダンゴ 本業では一切やっていません!

――え!?

ササダンゴ 金型産業は基本的に受注生産ですし、もともと仕事で得意げにプレゼンしてる奴が大嫌いですから。

――え!?

ササダンゴ ドラマとか見てても、プレゼンする奴ってだいたい嫌な奴じゃないですか。老舗旅館を買収しに来た外資企業の奴で、最終的には東京から帰ってきた若女将にやっつけられたり。

――まぁ、ドラマとかのイメージだと、そうかもしれませんね。

ササダンゴ プレゼンする奴は悪役なんですよ。でも、それがプロレスラーだったら、成立するじゃないですか。

――なるほど。では、実際にちゃんとしたプレゼンをしてみて、いかがでしたか?

ササダンゴ 手応えしかないですね。

――ちょろいもんだと!

ササダンゴ 感覚的な話になりますけど、プレゼンって魔法、黒魔術みたいなもんで、人の心を簡単に魅了してしまうんですね。だから私くらいのレベルになると、安易に使っちゃいけないなと。ここぞというときに使うべきだということを実感しました。

――では、いずれ本業で発揮するときが来るということですね?

ササダンゴ いや、やりません。やっちゃうと忙しくなっちゃうから!

――忙しいのは、喜ばしいことじゃないんですか? 芸能活動も、あまり忙しくしたくないんですか?

ササダンゴ はい、あまりやりたくありません。

マネジャー いや、やりますよ!? やりますからね!?

ササダンゴ ……。はい。やっぱりやります。

――(笑)。芸能活動でいえば、『NHK高校講座』の「社会と情報」(4月28日放送スタート、全20回)でプレゼンターを務めますよね。

ササダンゴ 今の高校って、“社会と情報”という授業もあってですね。現代の高校生は生まれたときからインターネットやSNSがあって、「どうやったら炎上しないか」や「ネット上の画像を二次使用するときのルールとエチケット」なんかも教えているんですよ。そのカリキュラムに「プレゼンテーションの仕方」も入っていて、今は“プロレスラーもプレゼンができる時代”ということで声をかけられたみたいです。

――2008年に刊行した著書『八百長★野郎』(エンターブレイン)の中で、ミスター高橋さん(編注:元新日本プロレスのレフェリー。2001年にプロレスの舞台裏を語った著書『流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである』(講談社)で物議を醸した)と対談してて、その中で「今の高校生はプロレスをまったく見たことがない」という話をしていましたよね。今の高校生もプロレスは見ないのかなと思ってしまうんですけど、感触としてどうですか?

ササダンゴ どうなんでしょうかね。でも、私は高校生にプロレスを見てほしいとは思ってないですから。

――え!? そうなんですか!?

ササダンゴ うちの団体(DDT)でも、小学校~高校の間にプロレスしか見ていないような奴、飯伏幸太はじめみんな頭おかしいですから。人としてどうかしてるんで、若いうちは見ちゃダメだと思います。映画やライブやテレビ番組を見て、部活、恋愛をちゃんとするべきですよ。

――意外ですね。プロレスラーの方は「若い人たちにも見てほしい」と、口をそろえて言いますけど……。

ササダンゴ 高校生にプロレスを見せようとしている大人たちは、全員悪魔ですよ! 真面目に「若年層を取り込もう」と言っている奴は、たいていクズ野郎です。

――僕も子どもの頃からプロレスを見ているので、いささかショックです。

ササダンゴ あなたもクズですよ! 若年層を取り込もうとするな! 金のある奴をしっかり押さえろ! ということですよ。プロレスファンに若い女の子が増えていると言いますが、では「30~40代男性が、金を払って見てくれているか?」というのが私のテーマです。その世代が金を払って見たいものをちゃんと作れていますか? と。若い女の子に人気なのもいいですが、その世代のおじさんたちが楽しめるものを、私はちゃんと作りたいんです。

――ちなみに僕もそうですが、この「日刊サイゾー」の読者層っていうのが、ちょうどその世代、30~40代男性なんですよ。

ササダンゴ 女の子にキャーキャー言われているプロレスラーは、かっこいいですよ。でもね、男として、彼女や女友達に「プロレス面白いから一緒に見に行こうよ。かっこいいんだよ」って誘われても嫌でしょう? 女の子が騒いでいるのを見て楽しんでくれるおじさんファンもいるけど、それはそれで変態の部類でしょう。

――ま、言わんとしていることは、なんとなくわかります……。今の30~40代って、もともとプロレスが好きで、でも今はプロレスから離れてしまった人も多いんですけど、そういったファンが戻ってきていると思いますか?

ササダンゴ 思わないです。みんなアイドルに行って、戻ってこないですよ。プロレスや総合格闘技を見ていた人は、ハロプロやAKBに行き、マッスル(編注:DDT内で行われていたエンタテインメント性の高いプロレス興行)を見ていた人は、BiS(2014年に解散)とか過激なほうに行って、そこを卒業したら今度は、生ハムと焼うどんに行ってますよ。DDTのスタッフたちですら「生ハムと焼うどん、いいよね!」って言ってますから。

――そのアイドルに奪われたファンを取り戻すには、どうすればいいですかね?

ササダンゴ もう戻ってこないですよ。戻ってこないくていい! いま私が考えているのは、そういったファンから、アイドルそのものを奪うしかないということです。アイドルの貞操を奪うしかない! 復讐ですよ! 共存共栄はないですから!

――……。ちょっと過激になってきたので話題を変えます。ずばり、今後の展望は?

ササダンゴ 当然、ありますよ。

――お! なんですか?

ササダンゴ 2020年の東京オリンピックに、照準を合わせています。

――突然、壮大になりましたね。

ササダンゴ 開会式や競技のすべてに、演出で総合格闘技でやっているような“煽りVTR”が導入されるんじゃないかとにらんでいるんですよ。それとプレゼンをセットにして、世界に発信すればいいんじゃないかと。

――実現したら盛り上がりますね。

ササダンゴ あとは、開会前と開会後にスポーツニュースに呼んでもらえるように、仕掛けていきたいですね。フジテレビの『すぽると!』あたりが……。

――『すぽると!』は終わりましたよ……。

ササダンゴ ……。じゃあ『Going! Sports&News』(日本テレビ系)で……。

――では、そういった番組にも、ぜひプレゼンを。期待しています!
(取材・文=高橋ダイスケ)

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●マッスル坂井Twitter @abulasumasi