2006年5月、大手の日本企業3社が中国山東省に農業法人を設立した。設立当初から現在に至るまで、同農業法人は中国において「安全」かつ「高品質」な農作物の生産に取り組んでいる。
だが、同農業法人は設立から最初の5年間は現地の農民の間では「笑い者」だったという。農薬や化学肥料を使用せず、除草もしなかったために単位面積当たりの収穫量が現地農民の半分というありさまで、当然利益を得ることもできなかったからだ。だが、中国メディアの今日頭条はこのほど、この日系の農業法人の取り組みは「価値あるもの」と絶賛する記事を掲載した。
記事は、日系の農業法人が農薬や化学肥料を使用せず、当初は赤字続きだったとしながらも、その狙いは最初の数年間で土地の地力を回復させることにあったと紹介している。牛の糞を主要な肥糧として農薬は極力少なくするなどの循環型農法により、現在は安全で高品質な野菜、牛乳、果物を生産することができている。その農作物は同業者も品質の高さを認めるほどで、売上も大都市で急激に伸びていることを紹介した。
日系の農業法人の取り組みの背景には中国の食品安全問題がある。同問題は中国10大社会問題のなかで毎年トップの座に君臨している極めて深刻な問題だ。貧富の差、腐敗、医療、治安などの問題より、中国人にとってはずっと重大な問題なのだ。人が生きるためには食べることが必要不可欠だが、食品安全問題は健康に取返しのつかない損害をもたらす可能性があるからだ。
中国の食品安全問題を風刺する言葉として、中国には「外国人は牛乳を飲んで健康になったが、中国人は牛乳を飲んで結石になった」、「中国人は食品分野で化学音痴を一掃した」というものがある。目先の利益のために食品に有害な物質を用いても構わないとする考えが良く表れている。
記事は日系の農業法人の取り組みを絶賛したうえで、「5年間、農薬を使わずに損をし続けても、それによって土地は回復し、今ようやく花を咲かせ始めている」と指摘。日系の農業法人の取り組みは、中国の農業関係者に対して、目先の利益を捨てても消費者の健康を考えれば必ず報われることを教えるものとなっているはずだ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)