19日、日本バドミントン協会はバドミントン男子の田児賢一、桃田賢斗らが違法カジノ店で賭博行為をした不祥事に関しての調査終了を報告。銭谷欽治専務理事は「再発防止に全力を尽くしたい」と語ったのだが……。
調査の中で明らかになったのは、バドミントンに限らず、スポーツ界に蔓延する「上下関係」が、多くの選手が賭博に関与したということだ。調査の中で同じくNTT東日本に所属した西本拳太も違法カジノ店に出入りしていたことがわかったが、どうやら行った理由は「田児先輩に『ついて来い』と引っ張られた」ということだったそう。桃田を除き賭博行為が発覚した8人は、すべて田児選手と同じ埼玉栄高校の出身。高校時代から続く先輩後輩の関係は、実業団でも変わらなかったということだ。
体育会系全般に言えることではあるが、先輩からの暴力や社会人でいうところの“パワハラ”は、いまだに蔓延している。礼儀が大切だという言い分は理解できるが、それが暴力や違法行為を助長するものとなる場合も少なくないのが実情だ。よくもまあ古い時代の慣習を引きずっているものだと呆れるばかり。
高校野球などは、注目度の高さもあるのだろうが、よりその傾向が強い印象を受ける。野球部の暴力沙汰による対外試合禁止処分などは毎年恒例のごとく起こり、そのたびに大きな報道がなされる。今年薬物所持、使用で逮捕された清原和博被告などは、甲子園を沸かせたPL学園時代の上下関係について「暴力は伝統」と誇らしげに語り、あれがなければ強くなれなかったとまで語っている。はっきり思うのは、そこまでして強くなる必要などあるのかということだ。同期だった桑田真澄は、まったく別の見解を示しているが……。
最大の元凶は、学生スポーツの一部の指導者だろう。雇った監督なのか体育教員なのかは知らないが、そういった指導者がまず暴力、制裁を「指導」の名のもとに率先して行っている場合が多い。下劣な指導者は結局「競技人」でしかなく、時代を見据えて行動を変えられない「思考停止人間」ということか。その姿を見て、学生たちの暴力のハードルも下がっているに違いない。そんな人間が礼儀だのなんだの教える資格などあるのだろうか。先輩学生の横暴行為に目を光らせるのが「指導」という意味では先決なはずだが、そこを見誤っている人間が多い。単なるサディズムに突き動かされているのか。
無意味な「勝利至上主義」と過剰な「上下関係」が、実業団やプロになっても継続される。こんな下らないことはない。実際、バドミントン界は田児に誘われて違法賭博に手を染め、将来を棒に振った選手が何人も出てしまった。プロ野球の野球賭博なども、似た状況が絡んでいるように思えてならない。田児のような人物を生み出したのは間違いなくこれまで彼が出会い教えを受けた指導者であることも事実。その責任は問われるべきではないか。
暴力を振る一部の指導者は「口で教えることができません」と大々的に宣言しているようなもの。そのみっともなさにすら気づかない愚かさに辟易する。口で説明もできない人間が指導者とはお笑いぐさだ。スポーツ界はまず、こうした学生スポーツを根本から見直すべきである。そうでなければ、今回のバドミントンのような騒動が再び起こるのを止めることはできないだろう。
(文=odakyou)