第1セット第10ゲームで、ドルゴポロフのセットポイントを4度しのいだ錦織。その我慢が実り、次のゲームでブレーク。「取れたのが不思議なくらい」という第1セットを奪って波に乗ると、その後は完全に試合を支配した。

 プレーのテンポを自在に変える相手に対し、錦織の冷静さが際立った。第1セットのピンチでは、第2サーブで相手の体を狙い、ミスを誘った。一方、チャンスではベースラインぎりぎりのストロークを左右に打ち分け、力強いガッツポーズ。今大会で初めて、「タフな試合だった」と振り返った。

 ここまで1セットも落とさず勝ち上がり、準決勝へ。次は昨年の全米オープン1回戦で敗れるなど、2連敗中のペールが相手。この機会に苦手意識を拭い切れれば、3連覇への弾みにもなる。

 大会前から熊本地震のことを気にかけていた錦織。この日、避難所にマットレス1000枚を送ることを明らかにした。「家に戻れない方たちが、少しでも気持ちが楽になれば」。遠く離れた異国の地から、被災者に向けた錦織からのメッセージだ。