海外で注目の園子温監督が、現在開催中の第15回トライベッカ映画祭(Tribeca Film Festival 2016)で上映された映画『マッドリー(原題) / Madly』について15日(現地時間)、ニューヨークのスミス・ホテルでの単独取材で語った。
本作は、現代の六つのさまざまな愛の形を六つの都市で描いた話題のオムニバス映画で、メキシコ出身のガエル・ガルシア・ベルナル、オーストラリア出身のミア・ワシコウスカなども園監督と共にメガホンを取っている。園監督の作品『ラブ・オブ・ラブ(原題) / Love of Love』は、姉夫婦と両親と共に暮らしていた婚約したばかりの妹が、自身の性生活を通して家族を変えていくというもの。
まず、監督を務めた経緯について「プロデューサーのエリック・マホーニーが映画『愛のむきだし』を観たそうで、ある映画祭で、彼から愛の映画を世界各国で撮りたいと言われました」と明かした。
現在日本では不倫やセックスレスなどが話題になっているが、園監督自身は今の日本の性に関してどう考えているのか。「刻一刻とモラルに対して厳しい国になりつつあります。過去には『失楽園』とかがブームで、不倫がロマンチックな時代もあったのに、今は逆転して『けしからん!』という感じになっています。ただ、今でも性に対して欲望を持っていることは変わらないと思いますが、性を閉じ込めているのが今の日本の時代(現在)のような気がします」と答えた。
映画では、家族が(性を通した)愛の共有をしている。「そうですね、決して性に対して否定的ではなくて、ある意味冷え切った家族の中で、(共有する性が)究極の打開策なんです。(新たな扉を)こじ開けてみたら、どんな素晴らしい結果が待ち受けているかわからないから。人はそれぞれ違っていて、モラルという全体的な線引きをして、『けしからん!』という考え方ではなく、人それぞれで愛の自由な概念があるという点を描きたかった」と答えた。
今作で海外の人々とタッグを組んだが、再び海外の仕事を視野に入れているのか。「海外の仕事がやりたくてしょうがないです。逆に言えば、今は日本映画をあまり撮りたくないです(笑)。正直、海外進出は今だと思っていて、今そうしないとダメで、僕自身は海外で撮りたいという気持ちが渦巻いています。今年やれなくても、来年にはやりたいです」と語った。プレミア上映では、園監督作品が観客の反応がいちばん良かったそうだ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)