須田剛一氏率いるグラスホッパー・マニファクチュア最新作『LET IT DIE』PAXデモプレイリポート&インタビュー【PAX EAST 16】 | ニコニコニュース

文・取材・撮影:編集部 ミル☆吉村

●ボストンでついにプレイアブル出展!

 アメリカ東海岸時間の2016年4月22日、マサチューセッツ州ボストンでゲームイベントPAX EAST 2016(※PAXはPenny Arcade Expoの略)が開幕した。

 ガンホー・オンライン・エンターテイメントブースでは、グラスホッパー・マニファクチュアがプレイステーション4用タイトル『LET IT DIE』を初プレイアブル出展。というわけでPAX版デモを早速プレイしてきた。

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●SUDA 51(ゴーイチ)の最新作はパンイチスタート。

 PAXデモは、マッドな遊園地風のエリアからスタート。プレイヤーキャラは武器も防具も何も持たない、いわゆるパンイチ(パンツ一丁)の状態でスタートし、まずは落ちている箱を開けてジャケットを手に入れ(まだ下半身はパンツ丸出し)、目の前の敵を殴り倒して武器を手に入れつつ、奥地へ進んでいく。

 ここで重要なのが、装備には耐久度があって使い続けると壊れてしまうため、敵を倒して新たな装備品を奪いながら戦わないといけないということ。ジャンル名を「サバイバル“ド”アクションゲーム」と銘打っている通り、装備やアイテムを現地調達してやりくりしながら切り抜けていくサバイバル要素が大事なのだ。

 装備アイテムは、まず防具は頭・上着・下半身の3系統が装備可能。武器は左手と右手それぞれに3スロット登録しておくことができ、いつでも十字キーで切り替えできる。武器には近接武器以外に銃系の武器も存在し、双方に両手武器も存在する。

 素手で始まり、金属バットを手に入れ、片手用のハンドガンや両手持ちのマグナムを入手し、両手持ちのアックスをゲットして……といった感じに進んでいくのだが、各武器にはメイン攻撃以外にサブ攻撃、Rage(怒り)ムーブと呼ばれる特殊攻撃や、瀕死状態の敵に繰り出すフィニッシュムーブも用意されているので、やれることのバリエーションは序盤から意外と多い。敵を倒して新しい装備がドロップすると、まず試したくなる(なお装備そのもの以外にブループリント/設計図が手に入ることもあった。制作はできなかったが、恐らく素材を集めて作成できるのだろう)。

 ちなみに回復は、エリア内にたまにうろついているカエルやネズミを捕獲して「食事」することで実行可能。その場での直食いやアイテム化が可能なほか、なぜか踏み潰すと能力ブーストができるキノコにもなる。こうした「いつ、どこで回復するか」といった選択もあるし、経験値によるレベルシステムもあるので、アクションRPG的とも言える。

●他プレイヤーの分身が敵として登場

 そんな感じに進めていくと、次第に「使い勝手のいい武器でとにかく進むことを優先するか、それとも雑魚はそこそこの武器で相手して、ナイスな武器はいざという時のためにとっておくか?」といった選択が必要なのがわかってくる。

 というのも、雑魚敵は相手の攻撃モーションを見極めて相手していけば難なく倒せるのだが、たまに敵として別のプレイヤーの能力を反映したキャラクターが出現し、しかもこれが「オンライン対戦か?」と一瞬思うぐらい、格段に性能が違う動きをするのだ。

 公式サイトなどにオンライン要素として「非同期型オンライン」と書いてあるのに気が付いた人もいると思うが、これは実はリアルタイムに誰かが操作しているのではなく、他プレイヤーのキャラクターの能力を反映したものが、敵として登場するという仕組み。


 リアルタイムに人間が操作するキャラクターほどの嫌らしさはないものの、アグレッシブに攻めてくるので、こういった時に、とっておきの武器が耐久度が下がっていて壊れたりすると目も当てられない。少なくとも、そこそこマシな武器に持ち替えて、性能差は冷静に立ち回りでフォローするといった対応が必要になる。

●頂上(てっぺん)取るために、異形のボスを殺れ

 エリアの最後には、グラスホッパー作品らしいマッドな造形のボスも登場。突進してきたり、肩辺りから生えた人形だか死体だかをぶん投げてきたり、地面を殴って範囲攻撃してきたりするこのボスを倒すとPAXデモは終了。完了者には死神マークのピンバッジが配られていた。

 なお死亡時は、保険屋さんという設定らしい女性キャラクターが出てきて、復活するかどうかを選べる。記者は道中で1回、ボスで1回の合計2回コンティニューしてクリアーすることができたのだが、どうやらPAXデモでの上限は3回までだった模様。

 では、PAXデモが1エリアのプレイを体験できるものだとして、『LET IT DIE』の全体像はどんな感じになっていくのか? グラスホッパー・マニファクチュアを率いるおなじみ須田剛一氏と、本作のプロデューサーを務める石川周志氏に話を聞いた。

●新たなチャレンジとそれを貫くコンセプト

――今回、一般に試遊できる形で出展されるのが初めてになります。遊んでみて結構RPG要素が入っていて新鮮でした。過去作は主人公のキャラクターが個性としても能力としても強いゲームが多かったと思うのですが、その辺りのコンセプトの違いを教えて下さい。


須田剛一氏(以下、SUDA 51) これまではストーリーベースのゲームを作ってきたんですが、今回はF2P(基本プレイ無料)というのも決まっていて、運営も絡んでくるタイプのゲームなので、「遊び」をコアに考えて作ってきました。
 もちろんストーリーや設定もあるんですけども、そこで走らせるゲームではなくて、あくまでプレイヤーがその世界に(既成の主人公ではなく)自分として入ってもらって遊んでもらう。そういうコンセプトから始まっていて、(本作に発展する土台となった)『リリィ・ベルガモ』から『LET IT DIE』に変わった時に、よりそういう方向性にしましょうというのが、プロジェクトの決め事のようなものになりましたね。

――PAXデモではゲームを始めるといきなりパンイチでスタートしましたが、RPG的に自分を投影するキャラクターを作っていくゲームだと、キャラクターメイクなどが用意されていることも多いかと思います。本作の場合ではどうでしょうか?


石川周志氏(以下、石川) まだ詳しくは話せないのですが、そういった要素もあります。
SUDA 51 でも基本はパンイチスタートなのは変わりません。

――非同期マルチプレイとして他プレイヤーの分身が敵として登場しますが、「これはリアルタイムでオンライン対戦してるんじゃないか」というぐらい機敏な動きで襲われたので驚きました。このあたりの仕組みを教えて下さい。


石川 いろんなプレイヤーが死んだ時の「デスデータ」を収集していて、それが自分のプレイ中に出てきます。今回は仮データとして作ったものが入っているのですが、その元となったプレイヤーの強さを反映したAIで動くので、他のエネミー(敵)と比べると圧倒的に強いです。
SUDA 51 もともと、他のプレイヤーのデータが敵として出てくるというコンセプトがあったのですが、より強調した感じですかね。

――ラストにグラスホッパーらしい、異形のボスが出てきたのも面白かったです。


SUDA 51 お家芸というわけじゃないですけど、これまでいろんなボスファイトを作ってきたので、そういった通常のバトルとは違った、(流れを変える)クッションになるものをちょっとずつ入れています。
石川 F2Pでも、ちゃんとそこにカタルシスがあって、区切りや目標になるものを入れたかったので、そのアクセントとなるようにボスファイトなどが入っている感じですね。

――その先の、本作における究極的な目標はあるのでしょうか? 例えばストーリーベースのゲームであれば、成し遂げるべき目標があって、それを阻害するラスボスがいて……といった構成になると思うのですが。


石川 ゲーム的には「塔の最上階を目指す」という大目的があって、「そのために強い自分になる」というのがプレイヤーに与えられる使命となります。そこを目指していろいろなことをやって強くなっていくという流れですね。
SUDA51 とにかく「頂上(てっぺん)に登る」というのが究極的な目標です。

●サブシステムなど

――派生攻撃であるRageムーブとGoreフィニッシュについて教えて下さい。


SUDA51 Rageムーブは、ゲージを貯めてRageモードに入って△ボタンを押しながら攻撃することで、通常よりダメージの大きい攻撃を出せるというものです。(基本ムーブで戦いながら)Rageを貯めてRageムーブを出していくというのが、基本的な戦略の1サイクルになっていますね。これを使いこなすと強い敵でも倒せるようになります。
石川 Goreフィニッシュは狙っていかないと出せないんですけど、決まると経験値だったりにボーナスが入るので、強い敵に対してRageムーブを使いつつGoreフィニッシュを目指すようにすると、よりよい報酬が期待できます。
 Rageムーブも武器ごとに違っていて、敵を足止めするRageなどもあります。そこも自分の好みと敵の状況に合わせて使っていくというのも遊びのひとつですね。

――カエルやネズミのような動物をいちいち食べたり踏んだりして回復したりアイテムにするというのが面白かったんですが、あれはどうしてそういう形になっているんですか?


SUDA51 あの世界で生き残るサバイバルとして、やはり「食う」という行為が必要だと思ったんですね。しゃがむと捕まえることができて、直食いもできます。食べると回復ができて、踏むとキノコになります。キノコはあの世界では能力値を上げる要素なので、そこをうまく使い分けていくとゲームが有利に進むような仕組みになっています。

――F2Pゲームだと、よくレイドボスなどがあったりすると思いますが、どういう形かはともかく、何かそういった仕組みはありますか?


SUDA 51 何か、新しいオンラインの遊びというのは用意しているので、もう少しお待ち頂ければ。

――ステージとか武器のコンテンツはローンチから増えていくのでしょうか。


SUDA 51 そうですね、武器や装備を増やしていく予定はあります。
石川 遊び続けて頂いたユーザー様に対してリワード(報酬)的にコンテンツを提供していくことは考えています。

――死んだ際に、保険屋さんのようなキャラクターが何かを消費して復活させてくれましたが、あれはなんですか?


石川 なぜそれで復活するのかといった話はストーリーのコアに関わる話なのでまだ詳しくはお伝えできませんが、プレイしていくと「プレイヤーは何者なのか」というもうひとつのテーマが見えてくると思います。

●装備が壊れる前提でいかに生き残るかというサバイバル

――初のプレイアブルデモでありながら、いきなり装備がバリエーション豊富に出てきたのも楽しかった部分です。


SUDA 51 ありがとうございます。まだ出し惜しみしているぐらいです。武器の種類だけでもすごい量があるので、そこも楽しみにしていただきたい部分です。

――武器などの耐久度を回復する方法はあったりするんでしょうか? というのは、使いやすい武器、あるいはかっこいいから使いたい武器などが手に入って行くと思うんですが、それを使っていくと能力値がヘボくなっていく。そこで回復する仕組みがあったりすると、長持ちもするかなと思ったのですが。


石川 回復というわけではないのですが、「気に入った武器を手に入れ続ける方法」はあります。
SUDA 51 ただ、このゲームでは必ず壊れます。武器も装備も壊れていくのが『LET IT DIE』の基本なんですよね。世の中そんなに都合よくないぞ、というのを体現していきたいなと。
石川 必ず壊れていくので、下手をするとどこかで裸一貫になるかもしれないというリスクがあるのが緊張感にも繋がっていますね。上の階に行けば行くほどそのリスクも高まっていくので、そこは多分面白くなっていくんじゃないかと思います。

――拾った武器をスロットに入れて持つか、ストックか何かに回すかといった選択肢もありました。


石川 今回はアクションの部分だけを切り出したようなバージョンになっていますけども、実際はもっとプレイを積み重ねていく部分、そのサイクルで動いていくところがあります。そこを説明できるタイミングが来たら「そういうことだったのか」とわかっていただけるような仕組みになっていると思います。

――スロットが埋まってきて、ちょっとヘボくなったけど貧乏性で持ち続けるか、思い切って入れ替えるか……といった悩みが結構ありました。


石川 塔の中で、そういった選択を常にユーザーに問うような設計になっています。

――今回のPAXデモで、一番注力したところ、ここを見せたかったというところはどういった部分になりますか。


SUDA 51 ボスなどもそうなんですが、敵を倒して武器や装備を現地調達して、チェンジしながら戦っていくという、そこですかね。そこの仕組みは自分たちとしてもチャレンジでしたし、壊れるという部分も含めて、どう受け止めてもらえるかという怖さでもありました。すごく時間をかけたところなので、どういう反応があるか楽しみにしているところです。
石川 そうですね。武器がロストして残らないというのを体験してもらって、フィードバックを受けつつ、そこを日和らないでどう作り続けられるかが結構重要だと思っています。

――なくなることにフォーカスするとネガティブに聞こえる人もいるかもしれないですけど、新しい武器をゲットして試すのも楽しいんですよね。マッドな世界で血みどろの戦いをしながら、臨機応変にやっていく感じというか。


SUDA 51 そう思ってもらえるのは嬉しいですね。
石川 臨機応変という言葉はその通りで、その場その場で最適解を見つけていくのがこのゲームのコアになると思っているので、そこを楽しんでもらえるように頑張っています。

●新たな「グラスホッパーのゲーム」としてのチャレンジに期待して欲しい

――今回のデモはアメリカ仕様ということよろしいですか?


SUDA 51 表現などは世界共通で、日本が落ちるというようなことはないです。個人的には血の量をもっと増やしたいぐらいですが(笑)。
石川 それ以外に調整中の部分もありますが、アクションゲームとしてのコアの部分の設計は同じですね。

――今後、日本で体験できる機会はいかがでしょう。


SUDA 51 できればTGSで体験して欲しいとは思っていますけれども、まだちょっとわからないですね。

――F2Pだと「P2W」(Pay to Winの略)、お金を払えば勝てるという設計が懸念されることもありますが、『LET IT DIE』の場合はいかがですか。


SUDA 51 P2Wにはならないように、最初から徹底していますね。直接的な課金によって急に強くなって他のプレイヤーを上回れるというのはありえないゲームになります。
石川 アクションが上手い人が、一番このゲームをやりやすい人になると思います。次に、プレイできる時間が多い人ですね。それでアクションがそこまでうまくなくて、プレイする時間もあまりないような人が課金で底上げできるというぐらいのイメージで開発をしていますね。アクションゲームなので、やはり最初に来るのはアクションのスキルとなるように設計しています。

――2016年リリース予定ということで、須田さんのゲーム、グラスホッパー・マニファクチュアの新作として待っている人も多いと思います。今回こうして海外でプレイアブルデモが出たということで、改めて意気込みなどをお願いします。


SUDA 51 結構僕としては珍しいんですけども、ほぼ毎年新作を出していたんですが、ここ3年ぐらいあいているんですよね。なので今はじっくり腰を据えて『LET IT DIE』を作る環境になっています。
 よくファンからも「須田ゲーム」という言葉を聞くんですけども、それよりも今回はより「グラスホッパーゲーム」というものを目指して作っているんです。僕も当然いちスタッフとして参加しているんですけども、それはあくまでいちスタッフであって、グラスホッパーのスタッフひとりひとりのアイデア、作業の積み重ねによって出来上がったものですし、もちろん(親会社である)ガンホーも一緒に協力して、特に森下(一喜・ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長)も参加してやっています。
 なので、ファンにも「グラスホッパーの新しいゲームが生まれる」という形で見て欲しいかなと思います。プレイステーション4というプラットフォームでも、まだ存在しないようなゲームに出来上がっていると思いますし、F2Pというジャンルの中でもチャレンジングなことをしていますので、そこはすごく楽しみにして欲しいですし、応援してもらいたいなと。
 早く遊んで欲しいんですけども、運営が入るゲームですから、サーバーがすぐダウンしないように、その辺りもちゃんと固めてからリリースしますので、頑張っていきたいですね。

石川 F2Pでプレイステーション4でというのも、(本作を)作り始めた時はもっと増えるかなと思っていたんですけども、意外とそこまででもなかったので、そこもチャレンジングですね。


 でもそれで手軽に遊んでもらえる、より多くの人に触ってもらえるという機会を活かして、例えばAAA(超大作)で疲れた後なんかでも遊べて、かつそういうサイクルをずっと続けていけるようなゲームにしたいなと思っているので、ぜひまずは遊んでもらえるという、そこを目指してやっていきたいです。