アマチュアからプロまで、多くの作家が参加している小説投稿サイト「小説家になろう」。そこには「チート系」「俺TUEEE系」や「異世界転生」など、少しばかりの偏りは否めませんが、ウェブならではの自由さから生まれる個性豊かな作品たちが読み切れないほど集まっています。
【2016年春アニメ】飛ばしちゃうのがもったいない必見オープニング&エンディングBest6
そんな「小説家になろう」ですが、4月からスタートしたアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」のほか、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってるだろうか」「この素晴らしき世界に祝福を!」など、多くのアニメ化作品を生み出していることから、次はどんな名作が生まれてくるのかと、多くのアニメファンから注目を浴びています。
しかし、そこにあるのは膨大な量の作品群。試しに読んでみようと思っても、どれから手をつけたらいいものか……。そうして「小説家になろう」というサービスは知っていても、これまで読んだことがないという人も多いことでしょう。
オススメはやっぱりランキングや検索を使って好みにあった作品を探すのが良いのですが、そのとっかかりとして、今回はちょくちょく「なろう」を利用している筆者が独断と偏見で選んだアニメ化まで行ってほしいなと思っているオススメ作品をご紹介します。
地龍のダンジョン奮闘記!
目が覚めると地龍に転生していた主人公。
まあ、成ってしまったものは仕方が無いと地龍生活を謳歌するが、ある時主人公は自分が人間たちにとって極上の素材であることに気付く。
俺はゲームで言うところの素材じゃないんだ!
ヤバい!このままでは人間達に狩られてしまう!
これは地龍に転生した主人公が自分の身と惰眠を守るためにダンジョン製作やらゴーレム作りやら色々頑張る物語である(一般的に見れば過剰防衛と言えます)地龍のダンジョン奮闘記!(あらすじ)
ここ最近のお気に入り、それが本作「地龍のダンジョン奮闘記!」シリーズ。作者はよっしゃあっ!さんで、過去に短編を投稿している以外、初めての長編作となります。
主役である地龍の名は「アース」、最初は名無しの地龍でしたけど、家族(眷属)と深い絆で結ばれて「名付け」が行われるあたりからストーリーが本格的に動きだしていきます。
特徴としては「目が覚めたら龍に生まれ変わっていた」というありがちな転生ネタを起点に、「ダンジョンを作る」というゲーム的なテーマを軸に描かれていること。ダンジョンの定番であるクリーチャーとしての「ボス」を主役にして、アント型モンスターやゴーレム型モンスターなど、個性豊かなキャラクターたちを添えて、コメディ時々シリアスな世界が繰り広げられています。
筆者が気に入っているのはどこまでも軽快な気分で楽しめる読み心地。会話や状況を示す擬音を並べることも多いので、こういうのが苦手だという人には敬遠されそうですが、「人間」が主軸にいない作品が好きな人で、かつ筆者のようにゲーマーな人であれば楽しめるでしょう。
お気に入りのキャラは賢者エリベル。骸骨のくせにシリアスなシーンだろうとお構いなしに「うわようじょかわいいはぁはぁ」と興奮しちゃう賢者はもう賢者じゃないだろうという気がしますが、しかしそれが良いのです。興奮しちゃう賢者はぁはぁ。
更新ペースはだいたい2〜3日に1話といった感じ。今のところ172エピソードが公開されています。
傭兵団の料理番
僕は料理が好きだ。でも、買い物の帰りにどこかの国に迷いこんで傭兵部隊の料理番をすることになりました。
何故こうなったのか分かりませんが、生き残るために美味しい料理を作ることにします。
…………これは、後の世で伝説となった英雄たちの部隊で、彼らを支え続けた偉大な料理人の話。傭兵団の料理番(あらすじ)
「ダンジョン飯」など、ここ最近は「料理」をテーマにした作品がトレンドとなっていますが、本作「傭兵団の料理番」もタイトルの通りに「料理」を作品の軸に据えたもの。異世界に迷い込んでしまった料理好きな少年が傭兵団に拾われるところから物語が始まります。
基本的には主人公が「料理」でさまざまなの難題を解決していくというストーリーが展開していまが、前編は主人公の視点で語られ、後編で他キャラの視点で主人公の行動や活躍がみられるという構成なのが特徴。そういったいろんな視点で1つの物語を描くような作品が好きな人にオススメですね。
定期的にラブコメ要素をぶち込んでくるのも気に入っていて、料理で胃袋を掴まれたヒロインたちがあの手この手で落とそうと奮闘する姿は微笑ましいものです。まぁ、結局は主人公の恋人である「料理」にひれ伏すわけですが。
作者は語利人さん。今作が初投稿の作品となり、これまでに49話が公開されています。更新ペースは不定期となっています。
裏切られた勇者の復讐譚、異星人と日本人のSF宇宙ラブストーリーも
二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む
魔王を倒し、世界を救えと勇者として召喚され、必死に救った主人公、宇景海人。
彼は魔王を倒し、世界を救ったが、仲間と信じていたモノたちにことごとく裏切られ、剣に貫かれ死んでしまう。
そのときに、彼は誓った。
もし次があるのなら、信じるという言葉にすがるのはやめよう、と。
もし次があるのなら、できる限り残虐にこいつらに復讐しよう、と。
もし次があるのなら、今度こそ間違えないようにしよう、と。
「あぁ、お前ら全員、絶対に殺してやるよ……」 その言葉を最後に、彼が死んだ。
そして、声が響き渡った。 ………【システムメッセージ・チュートリアルモードを終了します】と。二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む(あらすじ)
「異世界転生」「勇者」とくれば、「あぁ、はいはい。テンプレ乙」と言いたくなる気持ちは筆者もよくわかりますが、本作のユニークなところは「復讐」がテーマであり、いわゆる「周回プレイ」のような2度目の世界が描かれていることでしょう。
主人公の勇者・宇景海人は1度目の世界で「勇者」として、世界を守るために戦ったものの、その強大な力に恐れた「味方」だった人々に裏切られ殺される。そして、その裏切りへの報復、つまり「復讐」を果たすために、2度目の世界を迎えてかつての仲間や裏切り者たちを惨殺しようと奮闘する闇が深い作品です。
本作を筆者が読み始めたきっかけは「なにか仄暗い作品はないだろうか」と探しているとき偶然見かけたことでした。時に残酷な描写もあり、こういった世界が灰色に染まったようなダークな作品は好き嫌いがわかれるところですが、そういった「復讐」だったり「恨み」だったりをテーマにした作品が好きな人であれば、「二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む」は試しに読んでみてはとオススメできる作品です。
作者は木塚ネロさん。これまでに74話が公開されており、更新ペースは週1回ほど。今回が第2作目となり、過去作も「使い捨て逃走ダンジョンで人類を殲滅しよう!!」と残虐描写のある作品となっています。
銀河連合日本
二〇一云年、日本に異星人の巨大な宇宙船が飛来した。この未曾有の事態に世界各国は動揺し、それまでの世界秩序を根底から覆す事態に陥ってしまう。
……彼らは極めて友好的であったが、地球世界全体ではなく、「日本」という特定の国家のみと交流を持ちたいと言う。他の地球国家にはまったく興味がないらしい。
更にはその異常なまでに発達した彼らの科学力を惜しみなく日本に公開、提供する異星人。地球の各国、特にアメリカ、ロシア、中国、EUは、異星人の日本に対する対応に世界のパワーバランス崩壊を危惧する。
なぜ異星人は、地球の小さな島国である「日本」に固執し、日本にしか興味を示さないのか。それには遥か昔の日本のある物語と、一人の異星人女性が関係していた……銀河連合日本(あらすじ)
宇宙を舞台に繰り広げられるSF作品が好きな人にオススメしたいのが「銀河連合日本」。私たちが暮らしている世界の情勢を毒抜きして反映しつつ、外交や政治を軸にしたスタンスで「遠い宇宙から日本(地球)に異星人がやってきた」という世界が描かれています。
やや政治的なネタを使ったパロディが目立つ、アクの強い作品ではありますが、そういった物をパロディはパロディとして笑える人なら存分に楽しめるでしょう。
日本に伝わえる「かぐや姫」のお伽話、ここ最近話題になっている「VR」など、古今を問わないバラエティ豊かなネタが詰め込まれ、スペースシップでの艦隊戦や超技術兵器による戦闘など、「スターウォーズ」のようなスペースオペラも繰り広げられるなど、軽い気持ちで読み始めた筆者を引き込んで、じっくりと読ませてしまう奥深いストーリーが展開されています。
そこにはキャラの魅力もしっかりとあって、カレー大好き異星人のフェルさんをはじめ、魔女の異名を得る戦闘民族系トカゲ女子のシエさん、愛すべきバカの道を突き進む「ヤル研」のメンバーたちなど、誰も彼もがなかなか忘れられないような強烈な個性を発揮しています。ちなみに筆者は外伝に登場するメルちゃんがお気に入りです。フェルさんもセットなら100倍おいしいです!ありがとうございます!
作者は松本 保羽さん。すでに本編が完結済みで、現在はアフターストーリーとなる外伝が連載されています。これまでに公開されたのは100話となり、更新頻度は1ヶ月に1〜2話程度ですが、本編・外伝ともに1話のボリュームがかなり多めです。