Rancher Labsが,オープンソースのコンテナ管理プラットフォームRancherのバージョン1.0をリリースした。Docker SwarmやKubernetes,あるいは同社のCattleを介して,さまざまな基盤インフラストラクチャを対象としたDockerコンテナのデプロイが可能だ。Rancherは基盤となる計算ファブリックを管理し,RBAC/ACLでセキュリティ保護されたWebベースUIによるコントロール機能を提供する。さらに,複数のパブリッククラウドベンダやプライベートの仮想化クラウド,ベアメタルの組み合わせを対象としたデプロイを可能にする。ロードバランスや永続化ストレージといったサービスも,組込みでサポートしている。
InfoQは先日,Rancher Labs創設者4人の中の,セールスおよびマーケティング担当副社長のShannon Williams氏と,CEOのSheng Liang氏と席を共にする機会を得て,GitHubを通じてオープンに開発され,18ヶ月のアルファ版を経て一般公開されたプラットフォームについて議論した。Willams氏はRancherについて,コンテナおよび関連インフラストラクチャのデプロイと管理に関する完全なソリューションを提供するもので,Dockerコンテナでデプロイされるアプリケーションの一般化によって多くの開発者が行なっていると氏の考える,‘既存のコンポーネント部品から自身のプラットフォームを構築する’必要を取り除くものだ,という自身の考えを示した。
またWilliam氏は,Rancherコミュニティが開発チームによるリードとサポートの下で活動を行なっていること,プラットフォームに先日導入されたKubernetesサポートは統合上の‘現実的要求’から追加されたものであること,などのコメントをした。KunernetesやDocker Swarm, Cattleなどによる独自アプリケーションのデプロイに加えて,Rancherアプリケーションカタログを経由したオープンソース製品のインスタンス化も可能だ。このアプリケーションカタログのコンテンツは,Rancherと多くの共通点を持つプラットフォームである,Cloud Foundry PaaSのエコシステムServer Brokersと類似点が多い。
Rancherアプリケーションカタログには現在,Elastic SearchやGluesFS,Jenkinsなど,さまざまな分野のアプリケーションをデプロイするためのテンプレートがDockerコンテナとして提供されている。関連のGitHubリポジトリを経由して,新しいテンプレートをコントリビュートすることも可能だ。
Liang氏はRancherについて,“コモディティとして利用可能な[クロスベンダ]クラウド”を実現する可能性がある,と述べている。複数のパブリッククラウドベンダをサポート可能であることは,単一ベンダへの依存度を低減する(および,それに伴う可用性向上)だけでなく,‘クラウドブローカエコシステム’というビジョンから期待できるようなコスト削減策という意味も持っている。Rancherは先日,‘信頼性と可用性の高いAWSスポットインスタンスとGCP Preemptible VMの利用’を実現するSaaSプラットフォームのSpotinstと提携した。正規料金の計算リソースからより安価で不安定なリソースへとコンテナワークロードを移行し,リソースが再利用された場合に元に戻すことによって費用の節約を図る。
Rancherプラットフォームの今後の作業としては,Apache Mesosなどサポート対象となるコンテナスケジューラの追加,‘Windows Server 2016 GA ships’移行のMicrosoft Windowsサポートなどが考えられる。今後の開発はユーザのニーズや一般的なユースケース,コミュニティのコントリビューションを中心に進めていきたい,とWilliams氏は述べている。そして両氏とも,Rancher GitHubリポジトリにアクセスして開発に参加するように,開発者に対して奨めている。
Rancher 1.0 GAリリースのより詳しい情報は,Rancher Labsのブログで確認することができる。