熊本地震を受けて、多くの報道陣が現地に押し寄せたが、それが様々なトラブルを引き起こしている。
ネット上で問題視されているのは、「関西テレビの中継車がガソリンスタンドで行列を無視して横入りした件」「NHKが取材を嫌がるそぶりを見せた被災者にカメラとマイクを突きつけた件」「日本テレビが深夜の避難所で強烈な照明をつけてレポートを行った件」「慌しい避難所から中継を行ったTBSのクルーが生中継中に被災者に『邪魔だ』と注意された件」「日本テレビ『ミヤネ屋』のレポーターが焼き芋製造の車の後部ドアで雨宿りしていた女児2人をどかせて焼き芋を作っている男性にインタビューを行った件」などだ。
このほかにも、現地で取材を行う男性アナウンサーが自身の弁当をツイッターで紹介して炎上したり、一部のマスコミが被災者につらそうな表情を作らせる、いわゆる「絵作り」を強要していたことがネット上で暴露されたりと、その問題の多さは話題に事欠かない。
今回被災した阿蘇地域に住む男性も「たしかにヘリの音はうるさい。最初はイライラしていましたが、ずっとなので慣れてしまいました。それよりは、道端に停められた大量の報道陣の車の間を縫って自衛隊や消防の車が移動する状態のほうが大問題かなと思います」と話す。
この男性によると、阿蘇地域では元からマスコミに不信感を抱く人は多かったという。
「このあたりは阿蘇山から煙が上がるとよくテレビや新聞の人が来るんですが、周辺の自治体は火口から5キロ以上離れているので実際灰なんかまったく積もらないんです。なのに表面にほんの少しだけ積もっている土地を必死に探してはそこだけの写真や映像を撮ってニュースで使う。地元の人はみんなそれを知っているから、最初からマスコミはそんなものと思っています」
もっとも、震災報道の問題点に関しては、阪神大震災や東日本大震災でも多くの指摘がなされていた。東日本大震災で被災した岩手県に住む男性は、震災発生時はマスコミの問題を考える余裕はなかったが、数年経ってそのレッテル貼りのひどさを痛感することが増えたという。
「震災から何周年みたいな番組がひどいんです。そういう番組はよく、海沿いの何もない荒れた原っぱを映して『今はすっかり人の姿も消え、変わり果てました』などとやっています。でも、そこの地域はもともと人なんか住んでいないし、もっと言えば町の中心部だって元から人なんか出歩いていないわけです。震災に関係なく最初から過疎の問題を抱えていた地域なのに、マスコミの人たちは話の筋がぶれるからとそこに関してはほとんどスルー。とりあえず震災番組を作るうえで納得の行く映像やコメントが取れればいいということなんでしょう」
岩手県内で被災した他の男性も、同様の指摘をする。
「実は、震災によって町が再開発されたことで仮設とはいえ、住宅や商店などが1カ所に集められて、住民の買い物や生活が格段に便利になったり、家自体の設備が良くなったりという良い側面もあるんです。ただ、これまで何度も取材に来た人にその話をしたけど、報じられることはほとんどありません。我々はあくまで、『深い傷あとに苦しみ続けなければいけない』存在のようです」
これからは、自分たちの価値観を押し付けて、傍若無人な報道を繰り返すマスコミのあり方も変わらないといけないだろう。
※イメージ画像:「Thinkstock」より