佐野研二郎氏(43)デザインのパクリ疑惑発覚、白紙撤回から7か月余り──4月25日、選考やり直しとなった東京五輪エンブレムのデザインが決定された。デザインは最終候補4案のうち、東京都在住のアーティスト、野老朝雄(ところ・あさお)氏(46)がデザインしたA案に決まった。
すると始まったのは、テレビ局による報道攻勢だ。朝から民放のワイド番組で野老氏の経歴や作風、近年の作品、人柄を紹介するほか、夏野剛氏(51)ら選考委員が生出演し、作品や選考に関して説明を行った。しかし、各局の報道に「持ち上げすぎ」と違和感を持った人が多いのも事実だ。
東京五輪のエンブレム選考にあたっては、4月8日から17日までエンブレム委員会がインターネットおよびはがきで意見を募集した。その結果は東京2020大会の公式サイトからPDFで閲覧できるほか、TBS系『ひるおび』でも紹介されている。
「A案は『日本らしさ・東京らしさ』が72%あったのに対し、『スポーツの力』を感じた人は5%しかいませんでした。また、『暗い』といったネガティブな意見も目立っていましたね。今回、インターネット上ではA案を支持する意見も多かったけど、それ以上に不評の意見が目立ちました。木目を基調とした新国立競技場にエンブレムを飾ると『葬式みたい』と感じる意見には確かにそうだな、と感じさせるものがあった」(スポーツ紙記者)
■不人気案の圧勝で浮上「出来レース?」の声エンブレム委員会の意見募集のほかに、ヤフーなどのメディアでも人気投票が行われている。結果はA案よりもB案やD案のほうが人気だった。もちろん、各メディアの人気投票が国民の総意ではないが、A案の人気が芳しくないことが認知された結果となった。
「エンブレム委員会21名による最終審査ではA案が13票と圧勝しましたが、感覚的に乖離していると感じた人がたくさんいたのでしょう。新聞でも『不人気エンブレム圧勝』という見出しがつき、『公募とは名ばかり』『公正さに疑問』と、辛辣な記事が出ました。発表の前にNHKが速報でA案決定を報じており、出来レース説、リーク説も浮上。なにかと不手際が目立つ決定でしたね」(前出・記者)
二転三転したエンブレム問題は今回もスッキリ決着、とはいかなかったようだ。
文・佐々木浩司(ささき・こうじ)※1980年群馬県生まれ。スポーツ誌の契約記者を経てフリーに。現在は主に、週刊誌やビジネス誌で活動中。得意分野は芸能、プロ野球、サッカーなど。主な著書に『洗脳のすべて』(宝島社)など。