化合物だけで心筋細胞に=皮膚から直接作製―米研究所 | ニコニコニュース

 人の心臓でポンプ機能を担う心筋細胞を、皮膚の線維芽細胞に9種類の化合物を導入するだけで作ったと、米グラッドストーン研究所のチームが28日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。化合物を導入した線維芽細胞を心筋梗塞を起こしたマウスの心臓に移植すると、部分的に心筋が再生したという。

 化合物を医療用チューブを使って心臓の線維芽細胞に送り、効率良く心筋に変える技術が将来確立すれば、心筋梗塞や拡張型心筋症の治療が容易になると期待される。

 線維芽細胞からの心筋細胞作製は、遺伝子群を導入して人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ってから心筋細胞に変える方法もある。しかし、患者の心臓に移植して機能させるのが難しく、同研究所の家田真樹博士(現慶応大専任講師)らが2010年に、マウスの線維芽細胞に遺伝子群を導入して心筋細胞を直接作る方法を発表した。

 その後、国内外で人でも成功し、遺伝子と化合物やリボ核酸(RNA)を併用する方法が開発された。化合物だけの方法は効率が大幅に良く、コストも下がるという。

 家田専任講師は「9種類の化合物のみで作製できた点は画期的」と評価した上で、「心筋以外に増殖性の細胞ができていないか、幹細胞を経由していないかなど、詳細な検証も必要。化合物のみで生体内でも線維芽細胞から心筋ができれば、画期的な心臓再生医療となる」と話している。