【ニース時事】フランス南部のリゾート地ニースで14日午後10時半(日本時間15日午前5時半)ごろ、仏革命記念日を祝う花火を見物していた人の列にトラックが突っ込み、84人が死亡、202人が負傷した。負傷者のうち52人が重体。バルス首相は15日、事件を「テロ」と断定。捜査当局は、射殺された実行犯をチュニジア出身のモハメド・ブフレル容疑者(31)と特定した。
現時点で犯行声明は出ていないが、捜査当局は「犯行はイスラム過激派組織の呼び掛けに合致する」と指摘。過激派組織との関連や革命記念日を選んだ背景の解明に全力を挙げる。
仏政府は16日から3日間の服喪を宣言した。ニース入りしたオランド大統領は、負傷者らを見舞った後、記者団に「自由という価値観を持つ全ての人々を攻撃し続ける敵がいる。われわれは長期戦に直面している」とテロ撲滅への決意を強調した。
ブフレル容疑者はトラックで約2キロにわたって見物客をなぎ倒し、警官に発砲。その後、警察との間で銃撃戦になり射殺された。トラックの中には容疑者の身分証などが残されていた。
捜査当局によれば、ブフレル容疑者は情報機関の監視対象ではなかった。一方で容疑者は1月に暴行事件を起こし、有罪判決を受けていた。容疑者はフランスとチュニジアの二重国籍保持者で、3人の子供がいるといい、AFP通信は警察筋の話として、当局が容疑者の元妻に事情を聴いていると伝えた。
今回の事件はブフレル容疑者による単独犯行とみられる。車内からは手りゅう弾やライフルが押収されたが、手りゅう弾は使用不能で、ライフルは偽物だった。捜査当局は、犯行を支援した共犯者やグループの有無についても調べを進める。
現場はプロムナード・デ・ザングレ(英国人の散歩道)と呼ばれる地中海沿いの通り。マルセイユの日本総領事館によると、現時点で日本人の被害情報はない。
パリでは昨年11月、過激派組織「イスラム国」(IS)に関わる容疑者による同時テロがあった。大統領は15日のテレビ演説で、シリアなどのIS拠点に対する攻撃を強化する方針を表明。また、同時テロ以降継続してきた非常事態について、今月26日に解除する意向だったが、3カ月延長する方針に転換した。
革命記念日に当たる14日は、パリ中心部のシャンゼリゼ通りで恒例の軍事パレードが行われるなど国内は祝賀一色だった。