ニトロ再集結!20年ぶり「さんピンCAMP」6時間の全容 | ニコニコニュース

「さんピンCAMP20」フィナーレの様子。 Photo by cherry chill will、Yusuke Oishi
音楽ナタリー

7月10日、東京・日比谷野外大音楽堂にてヒップホップイベント「さんピンCAMP20」が開催された。

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「さんピンCAMP」は1996年7月7日に同じ日比谷野音にて、ヒップホップイベントとしては当時最大級の規模で行われ、今も伝説と謳われるイベント。20年ぶりの復活となる今回は開催前から大きな注目を集め、AbemaTVで全編生中継が行われた。

土砂降りの雨だった20年前と打って変わって快晴に恵まれた7月10日。ステージ中央にはLEDスクリーンの上にDJ卓が設置され、DJ RYOWのオープニングDJに続いて、般若が大きな歓声を浴びて登場した。般若はドスの効いた声で「J-RAPは死んだ! 俺が殺した!」と叫び、「さんピンCAMP」の冒頭でECDが放った名言を呼び起こす。「調子はどうだBBOYパー……いや、ごめんなさい」と、「BBOY PARK」と言い間違えるという冗談を交えながらも「思い出語るよりもチャッチャチャッチャやって未来に進んでいきたいんで」と前置きして「あの頃じゃねえ」で出番を切り上げた。

次に、十影、KUTS DA COYOTE、Y'SによるTHE FOREFRONT RECORDSの面々、DJ TY-KOH、YOUNG HASTLE、KOWICHIによるFLY BOY RECORDSの面々、B.D.、紅桜らがパフォーマンス。出演者の中でもフレッシュな世代のTHE OTOGIBANASHI'Sは、20年前の「さんピン」のときはまだ3歳だったと話して新世代のヒップホップをフリーキーに体現してみせた。

その後も漢 a.k.a. GAMI、DARTHREIDER、D.O、HI-BULLET、MASTERによる9SARI GROUP、IOを中心としたKANDYTOWN、RYUZO、T.O.P.、GAZZILA、SMITH-CNによるR-RATED RECORDSといった人気のクルーや、韻踏合組合、DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!が気合の入ったステージを展開。この日は参議院選挙の投開票日でもあり、漢の「(ステージから見える厚生労働省に)言いたいこと言わせてもらうならファッキューだよ」、NORIKIYOの「安倍(晋三)さん! 税金で食ってねーでやることやって仕事しろよ!」など、政治や選挙の話題に言及するラッパーも複数いた。

中盤の見せ場となったのは、シークレットゲストのRINO LATINA IIとBUDDHA MAFIA。RINOは「20年前の再現をするぜ」という言葉通り、当時と同じく「夕陽のタンガンマン」1曲のみを披露し、CQとNIPPSによるBUDDHA MAFIAは亡き盟友DEV LARGEの遺したBUDDHA BRANDの名曲「人間発電所」でその思いを“天まで飛ば”した。

後半に入り、田我流 feat. stillichimiyaは「さんピン」でRHYMESTERが「耳ヲ貸スベキ」を披露した際のMCのくだりをオマージュ。田我流は「これさ、あの頃の俺が見たらぜってーこう言うんじゃないかな……『やべ~勢いですげー盛り上がる』!」とコールし、メンバーと共に客席に降りて観客と盛り上がった。続くサイプレス上野とロベルト吉野は、日本語ラップのクラシックに加え「ドラえもん」のネタを盛り込んだトラックだったため、権利上の都合でAbemaTVでの生配信はNGに。「こんなもん放送できるわけねーだろ」と笑いつつ「ヒップホップ体操第二」で観衆をまとめあげた。次のNORIKIYOのアクトでは、韻踏合組合と漢も入り混じり、アンセムと化している「一網打尽(REMIX)」をドロップする。NORIKIYOは「これはさんピンCAMPじゃねえよ! 名前はどうでもいい、俺たち新しい伝説作りに来てんじゃねえの!?」とオーディエンスに強く問いかけた。

日が暮れかけた頃登場したのは、唯一のバンド編成であるOZROSAURUS。武史(B / 山嵐)、Bunta(Dr / TOTALFAT)、YD(G / Crystal Lake)、GUNHEAD(Track Make / HABANERO POSSE)らが奏でる強靭なサウンドにMACCHO(MC)の卓越した高速ラップが乗り、観客をどんどん引き込んでいく。MACCHOは「この空間にオジロ知らない大バカヤローはいねーよな!? じゃあ、オジロだったらこの曲は間違いねえって知ってるヤツだ」と言い放って代表曲「AREA AREA」「WHOOO」を披露した。

DJ 8MANのアクトを経て、いよいよヘッドライナーのANARCHYへ。観客は、入場時に配布されたANARCHYのロゴ入りフラッグを振りながら彼のパフォーマンスに見入る。ANARCHYは「WHATEVER」で「なんて言われてもいい 好きな事ばっかやってる僕らはなんて言われてもいい」というフレーズを繰り返し歌い、MCでも「自分に限らずいろんなアーティストの日本語ラップを聴いてほしい」と訴えるなど、ヒップホップラバーを代表してトリを務め上げる。そして「今日はこのステージで1つのチームが復活してくれる!」とシークレットゲストの登場を宣言した。

そのゲストはNITRO MICROPHONE UNDERGROUND。GORE-TEX、DELI、BIGZAM、XBS、SUIKEN、DABO、MACKA-CHIN、S-WORDとDJ HAZIMEがわらわらとステージに現れると、会場は大歓声に包まれる。およそ5年ぶりに勢ぞろいしたメンバーは「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND」「straight from the underground」をハイテンションで披露し、興奮状態の会場を見渡したDABOは「こんなシーンを、待ってたぜ!!」と声を張る。続けざまに「The Chronicle」でも見事なマイクリレーを見せ、去り際にS-WORDは「すべての出演者とお客さんとスタッフにでっかい感謝とリスペクトを!」と言い残していった。

ニトロのパフォーマンスをステージ上で観ていたANARCHYは、「先輩たちを観れて興奮してます。ただし先輩にいいとこ持ってかれて終わるANARCHYじゃないです」と言い、自身の名を広く知らしめた「Fate」、さらに初期の楽曲「Growth」を送る。そしてこのイベントについて、KOHH、AKLO、SALUの名前を挙げて「なんでここにいないのかな!? 一番ホットなヤツらが来るのがさんピンでしょ。これはディスじゃなくて最大のリスペクト。次は裏切んなよ」と率直に意見を述べた。最後の「Right Here」では出演アーティストたちも再登場し、「仲間とここまで来た」のフレーズに乗せて「さんピン」のフィナーレを祝った。

約6時間にわたって、現在のヒップホップシーンを代表するアーティストたちが熱い競演を繰り広げた「さんピンCAMP20」。ANARCHYのアクト後、一部のオーディエンスからLAMP EYE「証言」を求める“証言コール”が起こるも、暗転してイベントは幕を閉じた。

Photo by cherry chill will、Yusuke Oishi