政党『支持政党なし』の代表が語る今後 ――万が一、我々が与党になったら日本がおかしくなりますよ(笑) | ニコニコニュース

 10日に投開票が行われた参院選。結果はご存知の通り、自民党の27年ぶり単独過半数獲得に終わったが、その一方で、ある党のポスターが密かに注目を集めていた。

 その政党は「支持政党なし」。なんとも奇をてらった名前だが、どのような党なのだろうか? 今後、台風の目となるかもしれない同党について、代表の佐野秀光氏にインタビューを行った――。

――惜しくも初議席獲得には至りませんでしたが、まずは、今回の参院選の率直な感想を聞かせてください。

 もしかしたら1議席取れると思っていたので残念です。とはいえ、我々に投票してくれた64万人の方々には満足してもらえたのではないかと思っています。彼らの「支持政党がない」という意志自体は世に示すことができたので。

 街頭演説も渋谷や新宿、蒲田で行いましたが、好意的な声が多く、なかにはサインまで求めてくるような人もいました。ただ、ネットは厳しい意見ばかりで、現実との隔離を感じました。

――選挙運動や供託金の準備はどうされたのですか。

 今回、我々は10人の候補者を擁立しました。基本的に事務員はいないので、ポスター貼りも選挙カーの運転も、すべて候補者自らがやりました。主に昔から会社にいる社員や女房、親戚です。いかに効率的に10人を立てるのがひとつの壁でしたね。

――比例が2人、選挙区が8人だと供託金の総額は……。

 供託金は合計で3600万円ですね。これは政党というか私が個人のお金から政党に貸す形でまかないました。

――えっと、佐野さんにとってその額は問題ない?

 問題なくはないですよ(笑)。もちろん、大変です。大金ですが、でも、僕の価値観ではこのお金で一軒家を買うよりも、選挙で訴えたいという気持ちが強かったですね。

――獲得した64万票に”勘違い票”が含まれているという批判もあります。

 たしかに、「支持政党なしという党名が紛らわしい」という声はよく耳にします。ただ、我々は決して騙そうとしているワケではない。今回も投票所に行けば、政党名、略称、その横には候補者名まで書いてあります。”勘違い票”は100%ないと思っています。

――期間中は奇抜なポスター戦略がSNSでも拡散され、注目を集めました。

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 あれは最初から決めていました。ポスターの位置は公示日の6月22日の8時半までに受付をした人から、抽選で決まるのですが、完全にランダム。なので、我々は候補者4人が受付の列に並び、後から来た人にどんどん順番を譲っていきました。

 8時半以降は、順番でポスター位置が決まるので、そこから一斉に申し込みをしました。トイレの交代要員まで確保して、1人たりとも、別の人が列の間に入り込まないよう苦慮しましたね(笑)。

――ポスターには政策のみを記し、顔写真もありませんでした。

 あれも最初から決めていて、だって、有名な候補者ならいざ知らず、我々みたいな無名な候補者の顔なんて、いちいち覚えていませんから(笑)。あと、当初は1枚ずつ色を変える案もありましたが、それだと袋を4つ持たないといけなくて大変だし、貼り間違える可能性もあったのでやめました。

――そもそも「支持政党なし」結党に至る経緯は。

 ’13年、当時の政党(安楽死党)で参院選に出馬したのですが、選挙後、無党派層が30%もいたことを知り、彼らの受け皿を作らなければと思いました。これまで支持政党がない人々の声は、消去法で別の党を選ぶ、もしくは白票を投じるしかなく、それを変えたかったです。

 ただ、市長選や知事選には基本、出ません。やはり、そういうところは政策がないとダメなので。我々は与党でも野党でもなく、支持政党がない人の心の受け口になることが大事なんです。万が一、与党になったら日本がおかしくなりますよ(笑)。

――「政策なし」を掲げるようになった経緯は。

 我々のような小さな政党が「あれやります、これやります」と掲げても結局、嘘になってしまう。それなら、できることだけやったほうがいい。党として賛成、反対を表明する代わりに、国会に提出された全法案についてネットで解説をしたうえで、国民の声を集め、その結果に応じて議決権を行使する予定です。

――ネット投票をした結果、佐野さんの意思とは全く逆の票を投じなければなりません。そのあたりの葛藤は?

 もちろん、自分の気持ちと反対の議決権を行使しなければならない可能性もあります。たとえば、本来、法案を提出した政党は全員が賛成に回るものですが、我々は提出した法案に対し、議員10人中7人が賛成、3人が反対に投じることもありえます。

 一部の団体や党の意見に左右されたり、極端なポピュリズムに陥ったりする懸念もないわけではない。ただ、この声が1000人から何十万人と広がっていけば、そういう一部の人たちに左右されることはなくなるのではないかと現状は考えています。

――参院選直後ですが、今後の予定は?

 ひとまず今度の衆院選に立候補する以外は決まっていません。ただ、今回の選挙を含め実感したのは、支持政党なしを結党して、政策をなくしたら、急に支持が集まったということ(笑)。明確な政策を掲げていた頃と比べて、社員や親戚、無所属の地方議員さんとか協力してもらえる人が増えました。

 また、今までの選挙というのは、既存の政党がいかにして無党派層を騙して、票を奪い合うかに終始していたのかに気づいた。今はインターネットがあるので、誰でもお金をかけず、簡単に意思表示ができます。

 ネットでもいいから、国民の声を国会に届ける仕事こそ、本来、議員がしなければいけない仕事。その意味で、今の日本に我々以上に、国民の声をストレートに伝えられる政党や議員はいないんじゃないか。本当にそう思っていますよ。

<取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/難波雄史>