女子生徒を集団リンチ→全裸画像をネットにアップ 死者も続出する、中国「いじめ」の実態 | ニコニコニュース

福建省で起きたいじめ事件。女子生徒が全裸にさせられ、SNSにアップされた
日刊サイゾー

 中国各地で、学生による校内暴力のニュースが後を絶たない。6月22日、ネット上に「江西省永新中学校の学生がリンチに」というタイトルの動画がアップされ、注目を浴びた。動画では7〜8人の中学生と思われる女子生徒が、つまずかせた女子生徒1人を囲んで代わるがわる平手打ちしたり、後ろから蹴り倒したりと、約5分間にわたる暴行の様子が映されていた。被害を受けた女子生徒はクラスの学級委員をしていたことから、嫉妬と恨みの対象となり、暴行を受けたのだといわれている。

 こうした報道が相次ぐ中、過去40件のいじめ、暴力事件から、中国でのいじめとその傾向をまとめた統計が発表され、ユーザーたちから大きな反響を呼んでいる。「法制網」の統計によれば、中国でのいじめでは、外傷を負うケースが9割と暴力行為がほとんどを占めており、集団暴行は75%、うち16.7%は相手を死に至らしめている。

 同統計によれば、校内で起こるいじめの70%が殴る蹴るなど体を使った暴力によるもので、12.5%は器物での攻撃や劇薬を飲ませるというものだった。全裸にした上、陰部を晒すなどの行為も10%を占めたという。ほかにも、レイプや陰部を傷つけるなどの性的暴行や、無視、物を隠す、悪口などの心理的な攻撃要素を含む虐待は、それぞれ2.5%だった。

「地下鉄の駅で、女子中学生のいじめを見たことがありますよ。5人がかりで1人の女子生徒にビンタを食らわせ、最後にはジャージとTシャツを引きちぎって、上半身がブラジャー1枚の哀れな姿にさせられていた。止めに入ったのは僕と1人の老人だけで、ほかの乗客や警備員は無視していた。いじめに対し、社会全体が見て見ぬふりをしている感じがして不気味でしたね」(深セン市在住の日本人ビジネスマン)

 日本では今、LINEいじめをはじめとした言葉の暴力や村八分が主流だが、日本のいじめとの大きな違いは校内暴力というくくりが、同じ学年、同じ学校に止まらないところだ。中学生が小学生を集団暴行したかと思えば、高校1年生が中学生から暴行を受け裸にさせられたり、中学生が小学6年生の児童に暴行を加え、火のついたタバコを服に入れたりと、学年、学校を超えて暴力行為が頻発している。

 特に、女子生徒のいじめは、男子に増して激しい。暴力によるいじめは、男女全体の統計を見ると32.5%で、女子だけの統計では23.9%だった。原因は「話が合わない」が53.8%で、「嫉妬」が21.2%、「相手が嫌い」17.4%、「理由はない」が7.6%だった。

 さらに近年顕著なのは、ネットを使ったいじめだ。掲示板や微信(中国版LINE)、微博(中国版Twitter)などを通じて被害者を攻撃し、リンチ動画や裸の画像などをネットに公開、拡散することで被害者を侮辱する行為は、一部の学生の間では流行のようになっており、プライバシーの侵害に対する感覚が麻痺していると「法制網」は伝える。暴力行為に対する学生の考え方も、51%は「やめるべきだ、するべきではない」という回答だったが、25%が「暴力は当たり前」、16%が「自分とは関係ない」、5%「野次馬としてにぎやかな様子を見る」、3%「適度に参加する」と残り5割の学生が暴力行為に対して肯定的、傍観などの態度を示し、道徳的なモラルが欠落し始めていることがうかがえる。

 こうした暴力事件で、加害者が刑事責任を負うケースは3割にも満たない。中国の刑法十七条では、傷害罪、強姦罪、殺人罪など多くの罪名を羅列しても14歳以下の未成年に刑事責任を負わせることはできず、14歳以上の未成年も18歳までは減刑、再教育することが前提で裁判が争われる。被害者とその家族は大事にしたくないために謝罪を受けて金を受け取るか、黙って転校するなどの選択をする。学校側は業績を守る為に校内で起きた暴力行為を表沙汰にすることが少ないことも、加害者を増長させる原因となっている。

 なぜ、中国ではこうもいじめが社会問題化しているのか。北京市に住む日本人大学講師はこう推測する。

「2000年頃まで、中国の学校では『道徳教育』が重視され、一定の時間を割いて生徒に道徳やマナーを教えていました。しかし03年頃から急激な経済成長と過度な学歴社会化で、そうした授業が英語や数学にどんどん置き換えられ、小さい頃から道徳を教えることがなくなってしまった。また、親たちも『自分の子どもがどうしたらいじめられないか』については熱心に考えるが、『いじめをする側になってはいけない』ということは教えない。教師の側も、いじめる側の親からのクレームを恐れて、傍観者を決め込む者も少なくない。いろんな要因が重なった結果だと思います」

 中国のいじめや生徒間暴力行為の頻発に対し、関係機関である「21世紀教育研究院」は世界のいじめに対する取り組みや、研究結果を発表。アメリカの反いじめ法や日本の文部科学省が各地域の教育委員会と連携し設置した「24時間子供SOSダイヤル」に触れ、法整備や道徳教育の強化、いじめ相談や調査を行う機構の設立などを実施するとしている。
(取材・文=五月花子)