太陽の日差しを忠実に再現するLED照明器具「CoeLux」をイタリアの大学発ベンチャーが開発し、話題を呼んでいる。天井に取り付けるパネルタイプの照明で、赤道直下、地中海、北欧の3地域の太陽光を再現できるという。まるで、天窓から本物の自然光が降り注いでいるようだと評判だ。この製品のような「ディスプレイ」の技術は、どこまで進化しているのだろうか。開発の現在地について、ITジャーナリストの一条真人さんに教えてもらった。
「主にテレビですが、ディスプレイは画素数の増加によって高精細な映像表示が可能になったり、サイズが大きくなったりと、性能は年々向上しています。また、最近は平面ではなく湾曲した『曲面テレビ』も開発され、ディスプレイの形状も進化しています。さらにスペックの向上だけではなく、タッチ操作ができるディスプレイを家電に取り込む技術も急速に進んできましたよ」(一条さん、以下同)
例として教えてくれたのは、今年の春にアクアから発売予定の大型液晶ディスプレイ付き冷蔵庫「DIGI(ディジ)」。基本ソフトにAndroidが採用されインターネット接続も可能で、今後はもっと応用的に使われ、ゆくゆくはテレビ映像も表示できるようになるかもしれないという。
また、最近は4Kテレビが話題だが、さらに高画質な「HDR(ハイダイナミックレンジ合成)」という革新的なディスプレイ技術が、テレビに搭載され始めている。
「映像の色や明るさの幅を広げるHDR技術は、もともとアメリカで映画の企画をしている会社・ドルビーが、『現実世界さながらの映像で映画を作る』ことをコンセプトに、HDRに対応できる機材を映画監督に売り込んだことで広がったもの。最近になって一般消費者向けのテレビにもHDRが採用されるようになりました。このように、ディスプレイの進化というのは、エンタメの流れを汲むことが多いんです。オンデマンドビデオでもHDRで制作されたコンテンツ配信がスタートする予定なので、私たちが目にする映像の質は、より現実世界を視覚するものに近づいてくるでしょう」
さらに、今後は“ディスプレイ”と聞いてイメージするハードのカタチも変わってくるそう。たとえば、ソニーから発売されたポータブル超短焦点プロジェクター「LSPX-P1」は、至近距離から20~80インチくらいまでの高精細な映像を紙や壁に投影することができる。これにより、液晶ディスプレイに出力する必要がなくなるのだ。
「ほかにも、360度の映像が楽しめるサムスンの『Gear VR』は、ディスプレイの代わりとなるゴーグルにスマホを装着して、スマホに映る映像を楽しめるようになります。これまでのように、映像はテレビで楽しむという社会常識自体が、大きく変わる転換期に差し掛かっているのだと思います」
技術の進歩にともなって、ディスプレイのクオリティが向上するだけでなく、様々な形で応用されるようになった時代。ディスプレイの進化は、私たちの視覚や操作の可能性をさらに広げてくれるだろう。
(末吉陽子/やじろべえ)
【関連リンク】
■一条真人の公式ブログ