気づかぬうちに「ブラックリスト」に登録される若者が増えている。背景にはスマホの存在もあるようだ。

 都内に住む大学2年生の女性Aさん(19)が昨年暮れ、百貨店で買い物をするため、その百貨店のクレジットカードをつくろうとしたときのことだ。店員に、こう告げられた。

「お客様、申し訳ありませんが、カードはおつくりできません。理由は言えませんが」

 Aさんは過去の未払いを思い出し、「ブラックリスト」に登録されているのでは、と直感。母親と民間の信用情報機関「シー・アイ・シー」(CIC、東京都新宿区)を訪ねた。

 CICにはクレジットカード会社など約980社が加盟。会員企業が保有する信用情報(個人の属性・契約内容・支払い状況・残債額など)を集め、会員からの照会に応じて情報提供している。Aさんは、そこで自分の信用情報が印字された紙を見せられた。すると、支払い状況の欄に「異動」の文字──。

 CICによると、この場合の「異動」は、「通常と異なる動き」のこと。これが俗にいう「ブラックリスト」だ。

「返済月から3カ月以上、支払いの遅れがあった場合、異動として登録されます」(担当者) Aさんには思い当たる節があった。高校2年生のとき、携帯電話を買った。3万円近くしたので、毎月千円の24回分割払いにした。毎月届く振込用紙に従って入金していたが、大学に入学した頃から振り込みが滞り始めた。最終的には大学1年の10月に残額を含めてすべて入金し、完済したつもりでいた。ところが、7月にブラックリストに登録されていたのだ。

 いったんブラックリストに登録されると、完済しても5年間は記録が残る。その間は、持っているクレジットカードを利用できなくなったり、新たにクレジットカードをつくれなくなったりする可能性がある。アパートを借りる場合も、契約内容によっては借りられない恐れもあり、生活に支障が出かねない。

 携帯電話会社は未払いがあると、督促状を郵送するが、Aさんの記憶は定かではない。

「毎月千円の支払いだからと思って、甘く考えていました。すごく後悔しています」(Aさん)

 このような事例は、珍しいものではない。CICによると、携帯電話やスマートフォンの購入時のクレジット契約における「異動」の件数は、今年3月時点で約376万件。3年前の2.34倍に膨らんでおり、多くは若い世代という。

AERA 2015年6月8日号より抜粋