愛国教育懸念の寺脇研氏、リベラルの「何でも反対」も問題視 | ニコニコニュース

教育現場に広がりつつある愛国教育をどう考えるか
NEWSポストセブン

 国有地払い下げ問題が国会やマスコミで取り上げられている大阪の森友学園。幼稚園児に「教育勅語」を教えているという事実に世間では衝撃が走ったが、実は中高になれば教育勅語を教える学校はほかにもある。

 伊勢神宮のお膝元にある三重県の皇学館中学・高等学校は、明治の初めに創設され、今年で135周年になる伝統校。同校の教頭は「森友学園とは一緒にされたくない」とした上でこう言う。

「教育勅語が発布された10月30日を『家族に感謝する日』と定め、現在も毎年、教育勅語を書き写す『謹書』を行なっています。教育勅語の中の『友達や家族を大切に』という理念を生徒たちに教えることは、道徳が失われた今の日本に必要なことだと思います」

 青森県の松風塾高等学校では、週1回くらいの頻度で、朝会で教育勅語の『朗誦』を行なっている。

「教育勅語の朗誦は、昭和30年の創設以来の伝統。よそから見たら特異に見えるかもしれませんが、右翼的な学校というわけではなく、生徒たちが国を思う気持ちを育み、立派な大人になってほしいという願いを込めて、教育をしています」(同校教師)

 これらの私立学校は伝統と教育理念に基づいた指導をしているわけで、決して批判されるべきものではない。だが、生徒が気づかないうちに、保守的な思想が教育現場に持ち込まれている場合はどうだろう。

 保守系団体・日本会議の機関誌『日本の息吹』(2015年11月号)では、日本会議と歩調を合わせる日本青年会議所に属し、憲法論議推進委員会副委員長を務める樋口陽平氏が、以下のように語っている。

〈学校に呼ばれて授業したりすることもやっています〉
〈たとえばこの10月上旬には、埼玉県のある中学3年生9クラス約300人の生徒を対象に(中略)徳育・憲法・領土・選挙についての出前授業を開催させて頂きました〉

 憲法改正を推進する団体の副委員長が、政治的中立が求められる学校現場で出前授業を行なうことには疑問が残る。

 元文部官僚で、京都造形芸術大学教授の寺脇研氏は、教育現場に広がりつつある愛国教育を懸念する。

「愛国教育のすべてが悪いわけではなく、“日本は素晴らしい”と教えることまで否定する必要はありません。しかし、子供たちに対してこうした教育を一方的に押しつけるのは行き過ぎた行為と言わざるを得ない」

 こうした動きが止まる気配はない。

「今回の森友学園の問題や、親学(おやがく)や江戸しぐさの浸透、憲法授業などの“隠れ愛国教育”の動きは、全国色々なところで同時多発的に起こっています。このような勢力は昔から存在しましたが、今は安倍政権が盤石で、安倍さん自身の考えが彼らに近いことから、後ろ盾を得たとばかりに至る所で“愛国教育”を推進しており、それに反対しづらい空気も広がっています。

 一方でリベラル派が、短絡的になんでもかんでも反対するのも問題です。『戦争反対』の話と一緒に『資本主義は悪』『自衛隊を認めない』みたいな極論まで議論が広がってしまう。日本がすべて素晴らしいにも、全部日本が悪いにも偏るべきではないんです。その上で『教育現場でここまでは許されるけど、これをやったらダメだ』ということをきちんとチェックしていかなければならないでしょう」(同前)

 教育現場をチェックする大人の目が問われているということだ。

※週刊ポスト2017年3月17日号