75歳以上のドライバーを対象に認知症対策を強化した改正道路交通法が、12日施行された。認知機能検査が3年ごとの免許更新時以外にも、信号無視や逆走など18の違反行為があった段階で臨時に課されるほか、認知症の疑いがあれば医師の診断を義務化。チェック機会を増やすことで症状の進行具合をいち早く把握し、事故を未然に防ぐのが狙いだ。
警察庁は年間約5万人が検査などを通じて受診が必要になり、3割は認知症と診断され免許取り消し・停止になると見込む。各地の警察は運転に不安を覚える人に免許の自主返納を促しており、「生活の足」を失う高齢者のサポートも引き続き課題となる。
従来の検査は更新時に限られ、「認知症の恐れ」の1分類と判定されても、特定の違反がなければ受診は不要だった。2016年に認知症が原因で免許取り消し・停止となった人は1844人(暫定値)。新制度では検査機会の増加などで約5万人が受診し、免許取り消しなどが8.1倍の約1万5000人に上ると推計されている。
新制度の円滑な施行には医師の協力が不可欠となり、全国の警察が約3100人の協力を確保。高齢者が受診先に困った場合に紹介する。
改正法では一律2時間半だった更新時の高齢者講習も見直された。検査で問題なかった人は2時間に短縮される一方、1分類や「認知機能低下の恐れ」とされた2分類の人は3時間に拡充した。臨時検査でも結果が悪化していれば受講が必要になる。
75歳以上で見ると、免許人口は16年末513万人を超え、この10年間で倍増した。同年の自主返納は最多の16万人余りに上ったが、死亡事故は459件と横ばいが続く。上昇局面に転じる恐れもあり、警察庁は有識者を交えて幅広く対策を検討している。