無地のスーツに身を固め、自己PRはサークルやバイトの話。いつもは作らないさわやかな笑顔で、作りこんだ志望動機を話す。そんな現在の就活の仕組みに、違和感とバカらしさを感じた人のためのサービス「就活アウトロー採用」の説明会が、今年も開かれた。
本サービスは、3年前からNPO法人キャリア解放区が運営してきた。「NEET株式会社」や鯖江市「JK課」を手掛けた若新雄純氏がプロデューサーを務める。
3月9日、東京・目黒の会場に集まったのは、茨城、静岡、北海道など全国各地から足を運んだ21人。現在就活中の新卒者7人も含まれる。既卒者はニート・フリーター・第二新卒と多様で、年齢も21歳から28歳とばらばらだ。
「以前弟が説明会に参加したらオーラが変わったので、自分もと思った」説明会は、納富代表からの「どうして今日はここにきたの?」との問いかけから始まった。即席で5~6人のグループが作られ、それぞれの理由を共有する。
この春大学4年になる男性は「普通に就活するつもりだったが、卒業までの単位が足りず留年が濃厚になった」といい、来年度以降の就活を見通して参加した。ほかにも、「『就活 髪型自由』で検索したらトップに出てきたから興味を持った」という人や「前に弟が参加し、帰ってきたらオーラが変わっていたので自分も行ってみようと思った」という人、「就職先が決まらず、今年で既卒3年目になる。鬱になりかけて、気晴らしに静岡から来た」人など様々だ。
中には「いろいろとこじらせてしまった自分を何とかしたい」との思いで参加した男性もいる。「最初は学校で。その後美大・芸大を受験しようと思って3か月予備校に通ったんですが、お金が無くなって辞めて。どうしようと思って」と悩みを打ち明ける。
納富代表はこうした声から「今回は『もやもやアウトロー』が多いですね」と分析。
「一括採用に疑問を感じつつ、どうしたらいいかわからないで立ち止まった人がもやもやアウトロー、バンドや留学などに熱中していて就活しなかった人たちがアクティブアウトロー」
と、アウトローにも種類があることを説明。これには小さくうなずいたり、苦笑いする参加者もいた。
志望動機ではなく、人となりや相性を重視してマッチング続いて、アウトロー採用の趣旨説明に移った。納富代表は「既存の就活の仕組みを否定しつつ新しいものを作ろうと試行錯誤するのが『アウトロー採用』の場。だから、ESの書き方や面接対策といった支援は一切やらない」と念を押す。強い語調に、会場の参加者の表情も引き締まる。
「内定が出なくて助けてください、という人の駆け込み寺にはなりません。内定だけがゴールの人はここには向いていないので、無理して参加する必要はないと思います」
本説明会で参加を決めた人は、3月に1泊の合宿を行い、その後のワークショップや、企業名を隠した人事担当者とのマッチングイベントを通し、自分を見つめていくという。内定までは1~2か月を予定している。
立ち止まる勇気を持てる人たちは、きっと面白いことをしてくれる「スーツや志望動機などを取り払い、『自分は何者か』という問いと向きあうことを重視しています。人事とは『愛とは』『人間の恥とは』といった対話で人となりを理解し合い、お互いの相性を見極めます」
派遣会社の正社員として働く24歳の男性は
「閉塞感を感じて参加しました。来る前は、何か1つの能力が尖ってて、そこを生かせばすぐにでもばりばり働けます、って人が多いんじゃないかと不安だったんですが、そうじゃなく、自分と似たような人がいっぱいいて安心しました。思ったよりも有意義な時間になりそうです」
と、前向きに参加を検討している様子だった。
納富代表は「新卒一括採用に違和感を持ちながら、その違和感を飲み込んでレールに乗る人が大半の日本で、あえて立ち止まるのは勇気のいること。でも、そうした人たちはきっと面白いことをしてくれると思っています」と期待する。
「コミュ障でも大丈夫か?とよく聞かれますが、機転を利いた答えをテンポよく答える『就活用の話し方』を求めるグループワークとは違います。頭を使ってじっくり考え、自分の意見を持てる人なら大丈夫です」
同様の説明会は3月14日にも開催予定。希望者は「アウトロー採用」のページから申し込みが必要となっている。