1:コノハナ@こないれ投稿日:2018/01/31 00:38:09 ID:oMzUY7Ow
デンリュウ「はぁーそうかい、伝説かい。いいご身分だよな!」
ヌオー「デンリュウ落ち着いて。ルギアまだ何も言ってないから」
メガニウム「ほら、仲良くしないと……」
デンリュウ「でもヨルノズクのことはどうなんだよ!」
メガニウム「…………それは、だって……だって……!」
ブラッキー「泣くなよ……」
デンリュウ「けっ! お前さえ来なけりゃあな! なぁオイ!!」
…………。
ああ……。
うずまき島に帰りたい。
2:ゴローニャ@タンガのみ投稿日:2018/01/31 00:38:41 ID:oMzUY7Ow
4:カモネギ@ゴージャスボール投稿日:2018/01/31 00:40:07 ID:oMzUY7Ow
いつものようにうずまき島の最深部で引きこもり生活をしていた俺は
突然ヘッドライトに照らされた。
何せ1ヶ月ぶりに見た光だ。
何も見えなくなった俺は
意味もわからないまま電撃を浴びせかけられ
遅まきながら戻った視界が最初に捉えたのは
ヨルノズクが催眠術の構えを取る瞬間。
そこで記憶は一旦途絶え
目が覚めたら見知らぬ地でコイツらに囲まれていたというわけだ。
5:メタグロス@グラシデアのはな投稿日:2018/01/31 00:41:11 ID:oMzUY7Ow
どこぞの田舎町の家の庭で目が覚めた俺に
デンリュウがキレ気味に色々と教えてくれた。
俺が今置かれた状況を整理するとこうだ。
・眠らされたあと、コイツらの親トレーナーに捕まった
・ここはトレーナーの自宅であり、明日ポケモンリーグに向けて出発する
・その前にコイツらから俺に色々と言っておくべきことがあるらしく、深夜になってようやく回復した俺を庭に連れてきた
6:メガリザードンX@ブリーのみ投稿日:2018/01/31 00:41:54 ID:oMzUY7Ow
これはあまり重要な情報ではないが
うずまき島からこの町まで俺がコイツらを運んだらしい。
全く記憶はないが
確かにいつのまにか"そらをとぶ"を習得している。
赤ゲージ昏睡状態の俺にそういう指示を出すトレーナーということで
印象はすでに最悪だ。
7:プテラ@GBプレイヤー 投稿日:2018/01/31 00:42:37 ID:oMzUY7Ow
そして今、『言っておくべきこと』をコイツらが言っているところなのだが……。
メガニウム「ヨルノズク……なんでだよぉ……」
ブラッキー「なんでも何もないよ。そういうものなんだし」
デンリュウ「クソが……なんでこんな奴のせいで!」
ヌオー「まぁまぁ……気持ちは分かるけどさ」
どうにも話が見えてこない。
俺が何か不穏因子になっていることだけが漠然と伝わり
ただただ居たたまれないばかりだ。
8:ニャース@ふしぎなタマゴ投稿日:2018/01/31 00:43:10 ID:oMzUY7Ow
ラチがあかないので思い切って尋ねてみる。
なんでそんなに怒ってるんだ?
デンリュウ「なんでもクソもあるか! お前が入った6枠目はな、ヨルノズクの席なんだよ!!」
つまりずっと旅してきた仲間を押し退けて俺がパーティに加入したと。
まぁそりゃいい気はしないな。
ヨルノズクには催眠かけられた思い出しかないので俺としては印象が悪いが
多分さぞいい奴なんだろう。
9:クレッフィ@きいろのはなびら投稿日:2018/01/31 00:43:42 ID:oMzUY7Ow
で、伝えたいことってのはなんだ。
デンリュウ「何もねぇよ!」
いや最初にあるっつったのお前だろ。
10:ブーバー@おおきなマラサダ投稿日:2018/01/31 00:44:33 ID:oMzUY7Ow
デンリュウ「つまりだな……!」
ヌオー「いい加減にしなよデンリュウ」
ヌオーがデンリュウを手で制す。
ヌオー「ごめんね。デンリュウちょっとこういうところあって……」
ブラッキー「ただ、メガニウムも落ち込んでるし、デンリュウもこの通りだ。……ま、振る舞いは考えてくれってことだな」
……さいですか。
11:メガミミロップ@レベルボール投稿日:2018/01/31 00:45:58 ID:oMzUY7Ow
要約するとつまりこういうことだろう。
『お前のせいで空気最悪だからな』と。
デンリュウとメガニウムが俺をよく思っていないのはまず間違いない。
ヌオーとブラッキーも冷静に振舞ってはいるが
どうも言葉の端々に棘がある。
それだけヨルノズクがいい奴だったんだろうなぁ……。
12:マグカルゴ@ポイントマックス投稿日:2018/01/31 00:46:42 ID:oMzUY7Ow
へいへい言われなくても分かってますよ。
そもそもトレーナーだとかチャンピオンだとか
そんなものにハナから興味なんてない。
コイツらにコイツらの大事な旅があるのなら
俺は覚えたての"そらをとぶ"で実家に帰るだけだ。
13:グライオン@ぼうごパッド投稿日:2018/01/31 00:47:27 ID:oMzUY7Ow
わざ
→"そらをとぶ"
しかし ふしぎなちからに かきけされた。
トレーナーの支配を逃れることはできないらしい。
デンリュウ「けっ……。よろしくな」
……畜生、どうしろってんだよ。
15:メガフーディン@もりのヨウカン投稿日:2018/01/31 00:57:06 ID:WIwdV0vA
ルギアの陰キャ感すこ
16:フタチマル@とけないこおり投稿日:2018/01/31 00:58:14 ID:0bJh4UVU
これはしゃあない
支援
21:ハリマロン@エレキシード投稿日:2018/01/31 01:19:25 ID:sQtT9SQo
うずまき島にずっと引きこもってたんだろうなぁ
26:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:03:11 ID:oMzUY7Ow
手持ちポケモン生活1日目。
朝からいきなり庭に追い出されてぼっち飯だ。
家の中でボールから出るにはサイズが大きすぎたので仕方ない。
27:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:03:43 ID:oMzUY7Ow
一緒に生活していればそのうち打ち解けるだろうかと思ったが
まさか早速不可抗力で孤立するとは。
これでは溝は深まる一方だ。
陰口叩かれてやしないだろうか。
するだろうなぁ。
28:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:04:44 ID:oMzUY7Ow
家の窓からパーティメンバーの食事風景をチラ見する。
苛立った様子のデンリュウをヌオーがなだめている。
メガニウムは相変わらず落ち込んでいるようだ。
一晩中泣いていたのか目元が少し腫れている。
そんな3匹を眺めるブラッキーはやれやれ系主人公みたいな顔をしている。
もしかしたら実際にやれやれと言っているかもしれない。
トレーナーはメンバー内に生じた確執など知らぬ顔で
呑気に手持ちの食事を眺めている。
印象は悪くなる一方だ。
29:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:05:28 ID:oMzUY7Ow
とりあえず4匹には特に変わったことはない。
気になるのが
4匹の輪から若干距離を開けてオオタチが黙々と食っていること。
6匹パーティなのに昨日の夜いたのは俺含め5匹。
ということはあのオオタチが6匹目か?
ならあの微妙な距離はなんだ?
30:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:06:09 ID:oMzUY7Ow
気になって凝視していると
オオタチがこちらの視線に気づいたか
俺の方を振り向いた。
咄嗟に目をそらし、食事に集中する。
1、2……3秒。
……もう大丈夫か。
人間観察を続けるべく窓に目線を戻す。
なっっっ!?
バカな! まだ見ている!!
31:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:06:32 ID:oMzUY7Ow
ぼっちのオオタチが同じくぼっちの俺に勝手な共感を抱いているのだろうか?
だとしたらお門違いだ。
俺は穏当にことを済ませることを望んではいるが
輪の中に入りたいとまでは思っていない。
32:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:07:00 ID:oMzUY7Ow
オオタチが怖かったので
あの後は黙々と下を向いて食べ続けた。
今後もこっちを見てくるようであれば
何かしら対策を考えなければならないかもしれない。
34:アズマオウ@ねむけざまし投稿日:2018/01/31 22:10:23 ID:jxNnmcEk
一瞬ものひろい要員だから浮いてるのかと思ったがものひろいなのはオオタチじゃなくてマッスグマだった
どんな立ち位置なのだろう支援
36:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:37:14 ID:oMzUY7Ow
リーグまでは空を飛んでいくものと思っていたが
どうやら徒歩のようだ。
そういえば前アルセウスがそういうルールにしたと言っていた気がする。
手持ちが6匹制限なのも確かアルセウス決めたことだ。
レギュラー落ちしたヨルノズクの件は実質アルセウスのせいと言える。
俺が自分の意思でパーティを離脱できないのも多分アルセウスのせいだ。
アンタにはガッカリだ。
37:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:38:01 ID:oMzUY7Ow
海を越え滝を越え
26番道路を進んでいく。
同じくリーグを目指しているであろうトレーナーとの戦闘が多発するが
トレーナーが俺を戦闘に出す様子はない。
変に伝説を見せびらかして騒ぎになっても困るという判断だろう。
38:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:38:35 ID:oMzUY7Ow
デンリュウ「あんな奴いなくたって勝てんだよッ!」ドゴッ
キレ気味に繰り出されるかみなりパンチ。
トレーナー「おお、気合い篭ってんな。いいぞ!」
篭ってんのは気合いじゃなくて憎しみだ。
不正解、マイナス10点。
39:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:39:22 ID:oMzUY7Ow
そういえばここまでのトレーナー連戦
オオタチも戦闘に出ていない。
オオタチではなくヨルノズクが外れている以上は何かあるんだろうが……
と、そこで思考を打ち切る。
こちらからオオタチのことを考えているというのはなんとなく悔しい。
あまり深くは考えないことにしよう。
40:◆aIiv212DRk投稿日:2018/01/31 22:41:18 ID:oMzUY7Ow
バトルや休憩中は暇だったので
今朝の人間観察の続きをしていた。
相手の心理を理解して対話の主導権を握り、早めに上手い具合の関係に落ち着きたい。
が、よく考えると他のポケモンとの関わりなど全くなかった俺にはさっぱりな分野な気もする。
それでもまぁ
彼らの性格や関係がざっくりとは掴めてきた。
と思う。
44:ソルロック@オレンジメール投稿日:2018/02/01 19:52:44 ID:YdDN6UsM
アルセウスとばっちりで草
イッチの文章もいいし>>40のイラストも可愛いし支援だ
47:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:02:06 ID:UuOMcTmo
26番道路をようやく超え
休憩も兼ねて昼食をとることになった。
布陣は今朝と同じく
いつもの4匹、若干離れてオオタチ、さらに離れて俺。
ハブられたのではなく他のトレーナーの目を考えて森の影に隠れているだけだが
まぁどのみち距離は取ると思う。
48:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:02:33 ID:UuOMcTmo
例のごとく遠目から会話を眺める。
4匹はこれまでの旅を振り返る話題で盛り上がっているようだった。
半笑いを浮かべてときどき頷くオオタチが少し居た堪れない。
49:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:02:53 ID:UuOMcTmo
デンリュウ「言うてコガネはそこまで苦戦しなかったよなー」
ブラッキー「そうなのか? 鬼門ってマサキが言ってたけど」
ヌオー「麻痺と"どろかけ"であんまり"ころがる"当たらなかったからねー」
デンリュウ「そーそー。むしろフスベの方がキツかった」
ブラッキー「あーアレ。完全に催眠おみくじだったな。MVPはヨルノズクだ」
メガニウム「ヨルノズク……。29番道路からずっと一緒だったのにな……」
デンリュウ「あ……。ま、まぁ元気出せよ。な?」
メガニウム「うん……」
50:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:03:55 ID:UuOMcTmo
ヨルノズクの話題が出るや否や
一気にお通夜と化した空気。
流石に気が滅入る。
何を思ったかオオタチがこちらを見て苦笑いしている。
目は合わせない。
51:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:04:30 ID:UuOMcTmo
どうやらエース格らしいデンリュウを中心に27番道路の攻略も順調に進む。
このパーティは結構強い。
俺が戦わなくても済むのはいいことだ。
今俺が活躍したところで空気が悪くなるのは確実なので
できれば最終決戦まで俺の出番がないのが理想だ。
欲を言えばそのまま解雇されるのが望ましい。
52:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:04:53 ID:UuOMcTmo
旅と並行して俺の人間観察も少しずつ進んでいく。
休憩のたびに4匹の思い出語りに花が咲いているので
情報の補完にちょうど良い。
53:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:05:12 ID:UuOMcTmo
ブラッキー「俺がいなかった頃の話聞くとちょっと羨ましくなるよ」
ヌオー「バッジ4つ目の辺りだったっけ?」
デンリュウ「っていうと色違いのオドシシ見てねぇのか! ボールなくて逃したやつ!」
ブラッキー「え、俺が来る前そんなのあったのか!?」
ヌオー「アレは勿体無かったねー……」
54:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:05:36 ID:UuOMcTmo
色違い云々はどうでもいいが
どうやらブラッキーはだいぶ加入が遅かったようだ。
今ではパーティに違和感なく馴染んでいるということは
その馴れ初めが現状を打破するヒントになるかもしれない。
ヌオー「それにしても懐かしいね。初めて会った日」
ブラッキー「ああ。正直心細かったけど、すんなり受け入れてくれたよな」
ならなかった。
56:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:05:58 ID:UuOMcTmo
畜生、俺と何が違うというんだ。
……まぁ結構違うな。
ブラッキーは他のメンバーを押しのけてはいないし
加入した瞬間から能力で他を圧倒してもいない。
ひょっとすると時間が解決する問題なのかもしれないが
そもそも旅が最終盤なので時間がない。
ダメだ
どう足掻いてもうずまき島に帰りたくなる。
57:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 20:06:26 ID:UuOMcTmo
それにしてもこれだけ会話を聞いて
オオタチの話題が一切出ていないのが不気味だ。
もしかしたら俺にしか見えない霊か何かなのかもしれない。
それなら今こっちを見ているのも合点が行く。
だが決して目は合わせない。
60:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 21:58:53 ID:UuOMcTmo
ちょうど日が沈んだところで27番道路も無事制覇。
チャンピオンロードのふもとにテントを張り
今日はひとまず野宿のようだ。
61:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 21:59:12 ID:UuOMcTmo
設営が終わりテントの中。
トレーナーは寝袋の中で身を小さくしている。
夜はまだ冷える季節だ。
人間が野宿するには寒いだろう。
62:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 22:00:00 ID:UuOMcTmo
ふと思い立ってボールから出て
トレーナーと傍のボールに軽く覆いかぶさる。
善意ではない。
ただの点数稼ぎだ。
上げられるうちに好感度を上げておき
今後俺がバトルに出た際に予想される不和を軽減したい。
63:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 22:00:28 ID:UuOMcTmo
寝袋の脇に転がっているモンスターボールから何か聞こえてきた。
デンリュウ「けっ、点数稼ぎかよ」
……見透かされるんだから困ったもんだ。
64:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 22:00:44 ID:UuOMcTmo
かといって今更ボールに戻るのもきまりが悪い。
その体制のまま目を閉じ
今日一日の観察で得た情報を整理しつつ
今後のことを考える。
65:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 22:01:17 ID:UuOMcTmo
やはり問題はデンリュウだろうか。
デンリュウがアンチ俺を貫いている限り
穏健派のヌオーや中立的なブラッキーもこちらには歩み寄りづらいだろう。
メガニウムに至っては戦闘中に突然泣き出す程度にはメンタルが不味いので
完全にお手上げである。
ちなみにトレーナーは『具合でも悪いのかな』とかほざいていた。
悪いのはお前の頭だ。マイナス10点。
66:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 22:02:18 ID:UuOMcTmo
とにかく
このままの関係は非常に良くない。
俺としてはポーズとして和解してくれるだけで十分なのだが
現状それすらも望み薄だ。
アルセウスと交渉して世界の理を変えてもらった方が早いかもしれない。
それならヨルノズクを入れて7匹パーティにできる。
なんなら俺がうずまき島に帰ることも可能だ。
67:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/01 22:02:55 ID:UuOMcTmo
そんな突拍子もない現実逃避をする程度には
俺にできることは限られている。
差し当たって今できることは
ボールの中からこっちを見ているオオタチに気づかないふりをすることだけだった。
78:カラサリス@ラッカのみ投稿日:2018/02/02 06:16:24 ID:2tmKFZPU
めっちゃ面白い
絵もかわいい!
68:カプ・レヒレ@ものしりメガネ投稿日:2018/02/01 22:09:12 ID:R/S2a62g
これはオオタチが裏の支配者まである……?
71:ボルトロス@ジュカインナイト投稿日:2018/02/01 22:21:25 ID:v.0DFwhY
おいトレーナー
79:メガリザードンX@プテラナイト投稿日:2018/02/02 06:20:44 ID:yD7zPius
やっぱトレーナーって最低だわ
83:ヨーテリー@ともだちてちょう投稿日:2018/02/02 10:12:25 ID:3Nu1w62o
旅パは殿堂入りまで変えない派なんだが見てて辛い
87:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:05:27 ID:5A9OuMY.
手持ちポケモン生活2日目。
いよいよもチャンピオンロードに突入。
二日目でいよいよもクソもないが。
長い引きこもり生活が体に染み付いているので
薄暗く湿っぽいこの空間が心地よい。
88:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:05:53 ID:5A9OuMY.
しばらく進むと
妙に表面が滑らかな巨石が道を塞いでいる。
トレーナー「……やっぱりね」
トレーナーが何事か頷きながら
余裕ありげに俺の隣のボールに手をかけた。
岩の前に繰り出されたのはオオタチ。
何が始まるんだ?
89:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:06:42 ID:5A9OuMY.
トレーナーが「たのむ」と抑揚のない声で一言言うと
オオタチは返事も頷きもせず
徐ろに数歩進んで巨石に手を触れた。
巨石が鈍い軋みと地響きを鳴らしながら動き出す。
マジか。
90:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:07:10 ID:5A9OuMY.
オオタチが何のためにここにいるのかようやくわかった。
この巨石は
アルセウスが出来心で世界中にちりばめてしまった障害物の一つなのだろう。
オオタチはそれを退かして道を開く鍵としてここに連れてこられているのだ。
確かアルセウスは『細い木が自信作』とか言っていたと思う。
今後世界の製作には一切関わらないで欲しいものだ。
91:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:07:44 ID:5A9OuMY.
昼休憩。
今日はなぜか俺の分の皿も
他の5匹と並べて配置されている
トレーナー「この辺誰もいないから、お前も一緒に食べれるぞ!」
余計なことを。10点減点だ。
92:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:08:13 ID:5A9OuMY.
確かに洞窟に入ってからトレーナーの気配はないが
勘弁してほしい。
コイツらの隣で飯が食えるほど俺のメンタルは強靭じゃないんだ。
93:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:08:46 ID:5A9OuMY.
自分の皿を持って岩陰に向かう。
ブラッキー「……なぁ、ルギア」
やめろ声をかけるな。何考えてんだ。
デンリュウ「別にいいだろコイツが勝手にどっか行っても。ほっとけよ」
吐き捨てるように言うデンリュウ。
その通りだ。
94:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:09:13 ID:5A9OuMY.
5m離れた岩陰でポケモンフーズを齧る。
今日はオオタチのみならず
ブラッキーやヌオーも時折こちらをチラ見している。
先ほどの短いやり取りのせいで
余計な気を回しているのだろうか。
95:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:09:42 ID:5A9OuMY.
視線が昨日の3倍に増え
結局食事が喉を通らなかった。
会話もどうも頭に入ってこなかった。
こんなことなら変に同席を避けたりせず
あのまま一緒に飯を食うのが正解だったかもしれない。
96:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:10:02 ID:5A9OuMY.
対俺の方針の違いでヌオーやブラッキーまでデンリュウとギスギスしだしたらどうしようか。
やめて。俺のために争わないで。
…………胃が痛い。
97:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:10:57 ID:5A9OuMY.
午後の探索でも巨石が定期的に立ちはだかり
その度にオオタチが"かいりき"を振るう。
穴に落としてどうこうするギミックまであった。
アルセウスめ、どこまでもバカにしてやがる。
目を離した隙に自動で元の位置に戻るAIまでついてるんだからタチが悪い。
98:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:11:34 ID:5A9OuMY.
無言で岩を押すオオタチの目にハイライトは灯っていない。
いつからパーティにいるんだろうか。
最初からあの役回りだったんだろうか。
他のメンバーはオオタチのことをどう思っているんだろうか。
オオタチは俺のことをどう思っているんだろうか。
疑問は尽きない。
99:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:12:45 ID:5A9OuMY.
しかしパーティの誰もがオオタチについて触れていなかったということは
触れてはいけない闇があるのだろう。
それなら俺も詮索すべきではないはずだ。
それにオオタチがその闇を受け入れ
職人として寡黙に職務を全うしているのなら
その生き様は一流というべきものである。
むしろ俺も見習うべきことなのかもしれない。
100:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:13:10 ID:5A9OuMY.
チャンピオンロードは思ったより長かった。
洞窟の中なので時間はわからないが
トレーナーがテントを張り始めたということは
もう夜になったのだろう。
101:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:13:36 ID:5A9OuMY.
昨日より一層底冷えがするテントの中で
トレーナーは小さく身震いしている。
だがまたデンリュウに毒を吐かれてもアレなので
今日はボールの中で大人しくしていることにした。
そもそも俺はこのトレーナーが嫌いだし
点数が稼げないと分かった今
暖をとってやる理由はない。
102:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:14:09 ID:5A9OuMY.
ふと物音に目がさめる。
暗闇の中
ボール越しに目を凝らす。
目の前にオオタチがいた。
……なんで?
103:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:14:54 ID:5A9OuMY.
やっぱりそういう霊なんだろうか。
とりあえず目をそらして
消えるのを待ってみる。
しかし消えるどころか
俺が入っているボールがオオタチに持ち上げられ
そのままテントの外まで連れ出されてしまった。
疑問符で頭が埋め尽くされる。
104:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:15:31 ID:5A9OuMY.
ボールの開閉スイッチが押され
テントの外で二人きりで向き合う。
オオタチ「やぁ。ずっと話したかったんだよ」
こいつ喋れるのか!?
105:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:16:36 ID:5A9OuMY.
いやそりゃ喋れるよな。
……で、話したかったって何を?
オオタチ「まぁ……ただの世間話さ」
オオタチは自嘲気味に笑いながらそう言うと
とつとつと語り始めた。
107:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:17:53 ID:5A9OuMY.
バッジ0個の頃からパーティにいたこと。
最初は戦力の一角として戦っていたこと。
その頃はまだパーティメンバーと笑って毎日過ごしていたこと。
109:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:18:57 ID:5A9OuMY.
いあいぎりを覚えいわくだきを覚えた頃から
徐々に戦闘に出される機会が減っていったこと。
かいりきを覚える頃にはどうしようもないほどにレベル差が開いていたこと。
レベル差とともにメンバーとの隔たりも開いていったこと。
もうずっと何も話していないこと。
110:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:19:27 ID:5A9OuMY.
オオタチ「色々わだかまる気持ちはあるけど、今は無心で岩を押してるよ」
オオタチはそう締めくくって
話に一区切りつけたようだった。
111:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:20:18 ID:5A9OuMY.
話しぶりや他のメンバーからの性格から察するに
気後れしたオオタチが自分から身を引いてしまったのだろう。
他の4匹も次第に気まずくなり
いつしかオオタチの話題に触れること自体がタブーになった
といったところだろうか。
一つ言えるのは
俺にそんなこと言われてもぶっちゃけ困るということだ。
112:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:20:43 ID:5A9OuMY.
オオタチ「自分語りに付き合わせちゃったね」
全くだ。
オオタチ「あはは、ごめんね。……でも、君には話しておかなきゃなって思ってさ」
……なんで。
オオタチ「だってさ、君までこうなったら……嫌だろ」
…………。
113:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:21:13 ID:5A9OuMY.
……俺とお前は違う。
別にあいつらと仲良くしたいんじゃない。
オオタチ「……そっか」
そうだ。見当違いの同情だ。
114:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:21:43 ID:5A9OuMY.
オオタチ「そうかもね。勝手に共感してただけかもしれない」
その通りだ。
オオタチ「でも……」
なんだよ。
オオタチ「これがバトルのための旅じゃなかったら、ずっと仲良くできたかな」
オオタチ「僕も、君も」
115:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:22:17 ID:5A9OuMY.
今更意味はないのに
なんとなく目を逸らしてしまった。
バトルが目的じゃなかったら俺はそもそも捕まっていない。
それに
オオタチがパーティから距離を置いたのは
どうあってもオオタチ自身の選択だ。
仲良くしたいと思うんだったらそうすればいいだろと思うのは
俺がロクにポケモンと付き合ったこともない引きこもりだからだろうか?
116:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:22:57 ID:5A9OuMY.
別にあいつらはオオタチを拒みはしないと言ってみた。
俺とオオタチの立場の違いも説明してみた。
オオタチ「……そうだね。でもダメなんだ」
それでもオオタチは
伏し目がちにただそう言うのだった。
……じゃあもうしらねーよ。
117:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:23:39 ID:5A9OuMY.
オオタチから解放されて
ボールに戻り目を閉じる。
さっきのオオタチの情報を足し合わせて
俺が加入するまでの旅のことを少し考えていた。
二日間で聞いたことだけでも
随分といろんな出来事があったようだ。
それはそれは長い旅路だったのだろう。
119:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/02 23:24:54 ID:5A9OuMY.
メガニウムがヨルノズクの件で丸二日以上メンヘラしているのは
過ごした時間の重みがそれだけあるということだ。
オオタチがパーティの輪に戻れないのも
距離が離れたまま過ごした日々の重みだ。
そして今になってもまだ戻りたいと願うのもまた
距離が離れ始めるまでの日々の重みなのだろう。
どのみち短期採用の俺には関係ない話だ。
108:ゲノセクト@つめたいいわ投稿日:2018/02/02 23:18:15 ID:epuqpBA2
ぼく、ひでんわざはばらけさせた
ぼくえらい
123:ビブラーバ@だいだいバッジ投稿日:2018/02/02 23:32:55 ID:oxSa2cbc
かつてビーダルやらマッスグマやらを完全に秘伝技要員にしていたワイ罪悪感でいっぱい
124:マクノシタ@きのみ投稿日:2018/02/02 23:34:30 ID:NIjLz4Jc
>>123イカタロ
125:ソルロック@エスパージュエル投稿日:2018/02/02 23:39:01 ID:dL5dhwUE
143:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:36:12 ID:GkhlMkwY
手持ちポケモン生活3日目。
なぜか人がいないチャンピオンロードを迷いながらも進む。
昨日からずっと纏っているシルバースプレーの臭いがそろそろキツい。
野生ポケモンが寄り付かないほどの忌避感を手持ちポケモンは我慢しているわけだが
このトレーナーはそんなこと考えたこともなさそうだ。
部分点で3点減点。
現在の持ち点は67点とそれなりに高評価に見えるが
減点のペース的にはあと5日もすれば0点になる。
144:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:36:53 ID:GkhlMkwY
ようやく出口と思しき小さな光が見えてきたところで
心が歪んでそうな顔した赤髪の少年がツカツカと歩み寄って来た。
赤髪「まてよ。今からポケモンリーグ挑戦か?」
トレーナー「ああ。……お前も来てたのか」
不良じみた口調でオラついてくる赤髪に事も無げに返事を返すトレーナー。
お前こんなのと友達なのか?
付き合う人間は選べ。マイナス5点。
145:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:37:30 ID:GkhlMkwY
赤髪「ふざけるなよ。俺より弱いくせに」
トレーナー「これまでの戦績俺の全勝だろ」
赤髪「……ふっ。ここまで他のトレーナーが一人もいなかっただろ?」
トレーナー「確かにいなかったけど……まさか!」
赤髪「そうだ! 全部俺が倒したのさ!」
トレーナー「…………!」
146:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:37:53 ID:GkhlMkwY
梅雨払いをしてくれたとは結構なことだ。
それにこの道中
負けて引き返すトレーナーとすれ違うことすらなかったということは
コイツは負かした相手に"あなぬけのひも"を渡して責任を取っているということになる。
案外いい奴なのかもしれない。
さっきのマイナス5点は帳消し。
ついでにこの赤髪にプラス10点だ。
147:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:38:38 ID:GkhlMkwY
赤髪「今までの俺と思うなよ! 最高最強のポケモンを手に入れた! 俺には誰も勝てない!!」
そう啖呵を切ってボールを突き出す赤髪。
赤髪「さあ……俺と勝負しろ!!」
因縁(多分)のライバル(多分)バトルだ。
148:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:39:07 ID:GkhlMkwY
トレーナー「最高最強のポケモン……か」
ん?
トレーナー「いいぜ。俺も見せてやるよ」
待て待て待て。それは良くない。
トレーナー「最高最強、伝説のポケモンをな!」
うっわマジか。
トレーナー「行けっ……ルギア!!」
149:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:39:56 ID:GkhlMkwY
勝負の運びはあまりにもあっけなかったので省略するが
因縁に最も関係ない俺一匹で因縁にカタをつけてしまった。
赤髪は敗因を『ポケモンへの愛情のなさ』と認識したようだ。
あまりの惨敗に正常な判断力を失っているのかもしれない。
このトレーナーが深い愛情を持っていると勘違いされるのは癪なので
一晩しっかり寝てから考え直して欲しい。
150:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:40:40 ID:GkhlMkwY
半ば無意識的にパーティがいるボールの方に振り向いて
慌てて目線を戻した。
今彼らの表情を確認するのはちょっと怖い。
昨日感じた時間の重みを
俺は踏みにじることしかできないのだろうか。
151:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:45:54 ID:GkhlMkwY
深夜。
やはりというか
デンリュウが俺のボールの前に来た。
無言で拾い上げられ
連れてこられたのはポケセンの屋外バトルフィールド。
開閉スイッチが押され
二匹きりで向き合う。
152:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:48:23 ID:GkhlMkwY
あまり長話はしたくない。
単刀直入に尋ねる。
何か話があるのか?
デンリュウ「……俺と戦え」
……いや、なんでそうなるんだよ。
デンリュウ「いいから戦え!!」
声を荒げるデンリュウ。
手に雷をまとい
既に臨戦態勢を取っている。
断っていい状況ではなさそうだ。
何も言うまい。
返事の代わりにこちらも構える。
153:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:49:29 ID:GkhlMkwY
勝負は思ったより長引いた。
といっても一合で終わると思っていたものが
二合続いただけだったが
それでも相当なダメージを受けた。
うずまき島で食らったものよりも
随分と強力な一撃だったように思える。
154:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:50:03 ID:GkhlMkwY
仰向けに倒れたまま
デンリュウが力なく口を開く。
デンリュウ「なんでだよ……」
俺に聞くなよ。
デンリュウ「俺たちの旅だろ。なんで……なんでこうなるんだよ……!」
……本当になんでだろうな。
155:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:50:33 ID:GkhlMkwY
コイツらの旅。
そうは言っても結局のところトレーナーの旅だ。
だからオオタチはああなった。
だから俺は捕まった。
だからヨルノズクは外された。
手持ちポケモンに許されるのは
そんなトレーナーの身勝手に振り回されながら最善を模索することだけだ。
その結果がこれなら
そうとしかなり得なかったと受け入れるほかない。
156:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:51:12 ID:GkhlMkwY
デンリュウ「……ふざけんな。ふざけんなよ。……くっ……うおおおおお!!」
それは何に対しての叫びだっただろうか。
俺か、トレーナーか、それともアルセウスか。
瀕死状態のデンリュウを置いていくわけにはいかなかったので
デンリュウの慟哭をただ黙って聞いていた。
158:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:51:48 ID:GkhlMkwY
デンリュウは叫び疲れて眠ってしまった。
仕方ないので今日はここで徹夜だ。
オオタチ「……ルギア」
……見てたのか。
すまんな。なんか。いろいろ。
オオタチ「……別に、謝ることないよ」
まぁ、それもそうか。
159:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:52:31 ID:GkhlMkwY
オオタチ「君はさ……明日どうするの?」
どうって……
トレーナーの指示には逆らえないのが世界の理だ。
今日の赤髪の奴とのバトルに近いことを何度も繰り返すことになると思う。
……お前が戻りたいと思った場所は無くなってしまうかもな。
すまない。
160:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:53:34 ID:GkhlMkwY
オオタチ「それは……別に気にしなくていいよ」
いやいや
あんな話聞かせといて気にするなはおかしいだろ。
オオタチ「あはは、そうだね。でも昨日言っただろ? ダメなんだって」
何がダメなんだ。
オオタチ「……明日はきっと僕を外してヨルノズクを入れることになる。秘伝技が要らない時はずっとそうだと思う」
…………!
オオタチ「ボックスからじゃ……話もできないだろ?」
161:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:54:27 ID:GkhlMkwY
オオタチ「最後の戦いがどうなろうと、デンリュウたちの関係がどうなろうと、そこに僕はいないんだ」
そう言って寂しげに笑うオオタチ。
オオタチ「じゃあね。最後に話せてよかった」
そう言い残してポケセンに戻っていく彼に
俺は何も言えなかった。
162:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:54:57 ID:GkhlMkwY
俺が来たことでヨルノズクはパーティを追われ
メガニウムは別れを嘆いて心を病み
デンリュウはやるせなさに慟哭し
ヌオーやブラッキーは不穏な板挟みに気疲れし
オオタチは物理的な距離にトドメを刺される。
163:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:55:32 ID:GkhlMkwY
身勝手に振り回されながら最善を尽くすと言った。
その言葉に嘘はないつもりだ。
捕まったあの日から
俺なりに色々と考えたつもりだった。
アイツらに何かギリがあるわけではないにしろ
アイツらにとっての大切なものを壊したいわけじゃない。
それでも結果はこんなものか。
何も変えられないのか。
164:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/03 21:56:12 ID:GkhlMkwY
…………。
……いや。
まだだ。
まだ一つ、残っている。
チャンスは一度だ。
だから…………頼むぞ……!
177:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:25:06 ID:7qgdg7f.
真横から射し込む光に目を側めつつ汗を拭った。
寝なくても朝は来るものだ。
手持ちポケモン生活4日目。
決戦の日だ。
俺にとってもここが山場となる。
178:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:25:50 ID:7qgdg7f.
まずはトレーナーのところに戻らないとな。
仰向けのままいびきをかいているデンリュウを軽く小突いて起こす。
伸びをしつつ起き上がり
辺りを見回すデンリュウ 。
デンリュウ 「……ああ、そういや」
なぜこんな所で寝ていたのか思い出したらしい。
まだちょっと腑に落ちない顔をしている辺り
昨日のアレはよほどの深夜テンションだったのだと思う。
179:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:26:36 ID:7qgdg7f.
デンリュウが俺を見て心底嫌そうに口を開く。
デンリュウ「随分疲れてんな」
ああ、ちょっとな。
デンリュウ「頼んでねぇのに」
頼まれてなくても放置はマズイだろ。
つーかお前がボールに入れてくれないとデカすぎて玄関通れないんだよ。
180:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:26:58 ID:7qgdg7f.
デンリュウ 「ああ……そりゃすまん」
目を逸らしつつ小さく謝るデンリュウ。
ちなみに生活リズムを崩し慣れている俺は徹夜程度では疲れない。
疲れている理由は別にあるのだが
まぁ今説明する必要はないか。
181:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:27:24 ID:7qgdg7f.
デンリュウ「その……なんだ」
なんだ。
デンリュウ「お前が悪いわけじゃないってことぐらいは分かってんだよ」
そうか。
デンリュウ「まぁ、それでもお前のことは認めらんねぇけど」
正直だな。
182:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:27:43 ID:7qgdg7f.
認めなくていい。
むしろ認めてくれるな。
デンリュウ「……あ?」
お前らの旅なんだろう?
…………勝てよ。
デンリュウ「お、おう……」
183:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:28:15 ID:7qgdg7f.
デンリュウは意味がわからないという表情だったが
仲間のために俺を認めないという姿勢は別に嫌いじゃない。
最初は早く妥協してくれと思っていたが
昨日かみなりパンチを食らって考えが変わった。
むしろそこで折れて俺を受け入れるようなら
俺はお前に失望するだろう。
なんてことは小っ恥ずかしくて言えないが。
さ、トレーナーが起きる前に早く戻るぞ。
ボールに入れてくれ。
184:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:29:00 ID:7qgdg7f.
朝。
昨日の話通り
オオタチが抜けてヨルノズクが加入した。
ヨルノズク「いやー、あんときは本当すまん! 急に押しかけて眠らせちゃってさっ!」
ボックスから出てきたヨルノズクは絵に描いたように陽キャだった。
ヨルノズク「くぅーっ、俺もチャンピオンロード行きたかったなー! ま、リーグ戦だけでもよろしくなっ!!」
俺こいつ怖い。
185:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:29:57 ID:7qgdg7f.
重々しい扉をくぐり
トレーナーが挑戦の場に足を踏み入れる。
この瞬間からもう後戻りはできない。
扉が閉まる鈍い音に
俺は人知れず口元を歪めた。
187:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:31:30 ID:7qgdg7f.
イツキ「ようこそポケモンリーグへ! 僕の名前はイツキ。エスパータイプの使い手さ」
イツキと名乗った一人目の四天王は
聞いてもいないのに自身のこれまでの道のりを語っていく。
そして自分語りに心打たれてヒートアップしたか
トレーナーは俺のボールに手をかけた。
トレーナー「だったらこっちもエスパーで相手してやる! 出てこい……ルギア!」
四天王戦、開幕。
189:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:32:03 ID:7qgdg7f.
イツキ「伝説ですか……いいでしょう! ネイティオ、"サイコキネシス"!」
トレーナー「ルギア、"エアロブラスト"ッ!」
エスパーで相手するとか言っといて飛行技を指示する辺り5点減点したいところだが
今回は無しにしといてやる。
なぜなら……
トレーナー「…………え?」
発動するのは "わるあがき" だからな!!
190:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:32:39 ID:7qgdg7f.
鈍く響いた弱々しい打撃音に
この場にいる俺以外の全員が呆気にとられたことだろう。
"わるあがき"。
PPが尽きた時に発動する弱攻撃。
デンリュウと戦った後
俺は徹夜で全てのわざのPPを使い切っていた。
191:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:33:21 ID:7qgdg7f.
ポケモンリーグは一度入ったら出られない。
PP回復アイテムも
今朝ポケセンに戻った時に全部捨てておいた。
つまりこの状況
俺はどうあがいても何の役にも立たない。
自ら木偶の坊となり全てを他の5匹に託すこと。
これが俺に今できる最善だ。
192:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:34:01 ID:7qgdg7f.
トレーナー「なんで…………!? くっ、とにかく交代だ! 戻れ!!」
トレーナーはパニックになりながらも交代を指示。
当然の判断だ。
193:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:34:38 ID:7qgdg7f.
あとはお前たちの戦いだ。
こんなことがあった以上
次からの挑戦では直前にステータス確認をされるのは間違いない。
つまり最初で最後のチャンス。
さぁ……お前たちの旅の結末を見せてくれ!
195:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 20:36:59 ID:7qgdg7f.
デンリュウとブラッキーを中心にイツキを辛くも撃破。
その後も
順調とは決して言えないながら
かけらや薬を消費しつつ四天王を突破して行く。
ギリギリの戦いの中
5匹全員がそれぞれの役割を果たし
長い旅の全てをぶつけていた。
201:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:13:43 ID:xMtFuw.w
デンリュウ「おぉ……らァッ!!」
かみなりパンチが炸裂。
雷鳴とギャラドスの絶叫が轟く。
ワタルはひこうタイプ使いであるという噂はあまりにも有名。
それを見越してのデンリュウ先発はどうやら正解だったようだ。
まずはこちらが主導権を握る。
202:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:14:09 ID:7qgdg7f.
続いて出てきたのはカイリュー
トレーナーも交代してメガニウムに"リフレクター"を指示し
チャンピオン自慢の"はかいこうせん"をいなす。
反動の隙をついてヌオーに交代。
ヌオー「"れいとうパンチ"ッ!!」
キィンと澄んだ音を響かせて
カイリューの横っ腹に炸裂する4倍の一撃。
完全にこちらのペース──
203:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:14:51 ID:7qgdg7f.
──ではなかった。
ヌオー「…………え?」
カイリュー「いい技だが……ぬるい」
なっ……
耐えるのか!?
ワタル「カイリュー──」
……まずい!
ワタル「──"はかいこうせん"!」
204:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:16:28 ID:7qgdg7f.
そこからバトルは一気に劣勢に傾き始めた。
攻撃力、耐久力、機動力全てにおいて完全に上回られている。
リフレクター越しに攻撃を耐えてなんとかカイリューを倒しても
理不尽なことにすぐさま次のカイリューが出てくる。
いつしかリフレクターの効果も切れ
貼り直すだけの余裕も与えてはくれない。
ここまでの連戦で枯渇しかけていた回復アイテムはすぐに尽きた。
こちらもどうにか反撃を仕掛けるが
自力の差がじわじわと侵食し
一体、また一体とこちらのポケモンは力尽きていく。
205:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:17:06 ID:7qgdg7f.
そしてついにその時が来てしまう。
メガニウム「うぅっ……」
トレーナー「くっ……戻れメガニウム」
ワタル「ふぅ。こちらはあと2体か……。ここまで追い詰められたのは久しぶりだ」
ワタル「……さぁ、最後の足掻きを見せてみろ!」
トレーナー「…………くそっ! 行ってこい、ルギア!!」
半分ヤケクソのトレーナーがボールを投げる。
畜生、ここまで来て……!
206:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:18:10 ID:7qgdg7f.
ワタルの目の色が変わった。
余裕がなくなった顔だ。
だが生憎おれは"わるあがき"しかできない。
『詰み』の2文字が脳裏をよぎる。
負けてもう一度ここに来て
今度はPP全快の俺が全てを片付けるのか?
それでいいのか?
そんなわけないだろ。
俺がいなくてもいいってことを
お前たちが証明しないでどうする。
この頭の良くないトレーナーに
お前たちが示してやらないでどうするんだ。
ここで終わるのか?
くそっ、くそっ、くそっ……!!
207:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:20:09 ID:7qgdg7f.
エアロブラストだのハイドロポンプだの言う指示を聞き流しながら。
無様に突進を繰り返しながら。
文字通り"わるあがき"をする。
お前たちの戦いじゃなかったのかと。
これで納得できるのかと。
"はかいこうせん"を浴びて這いつくばりながら
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。
俺を拒むほど大切な旅の重みは
そんなものだったのかと。
叫んだ声はもう自分にも聞こえない。
アイツらには届いているだろうか。
208:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/04 23:22:15 ID:7qgdg7f.
HPが尽きて動けなくなり
俺はボールに戻された。
薄れゆく意識の中
ボールの外から声が聞こえた。
"──そんなわけないだろ。"
……そうか。
お前ら、いいパーティじゃねぇか。
209:ブースター@ライボルトナイト投稿日:2018/02/04 23:24:42 ID:D9mHmE2E
熱い
210:ウルガモス@バーゲンチケット投稿日:2018/02/04 23:36:30 ID:uedqU.Po
デンリュウ…(´;ω;`)
217:トサキント@みどりのプレート投稿日:2018/02/05 19:27:11 ID:QCLVIQ8M
うおー支援
219:メガバシャーモ@きのみ投稿日:2018/02/05 20:05:27 ID:vCcdrOUM
これはムネアツすぎる
222:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:05:31 ID:xMVQVHRk
223:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:06:12 ID:xMVQVHRk
暗がりの中で目を覚ました。
暗闇に目を慣らしていくと
どうやらトレーナーの家の中のようだ。
ポケモンリーグに残らずに帰ってきているということは
俺が気絶したあと
アイツらはワタルに勝ったのだろう。
224:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:06:44 ID:xMVQVHRk
山場を無事超えた安堵に
ひとまずホッと息を吐き出した。
おっと
こうしちゃいられない。
まだ俺にはやるべきことが残っている。
俺は一つ伸びをしてからボールから這い出ると
トレーナーのリュックを持って庭に出た。
225:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:07:18 ID:xMVQVHRk
リュックから手頃なわざマシンを取り出し
ディスクを頭にあてがう。
ルギアは うずしおを おぼえたい。
だが わざを4つ おぼえるので せいいっぱいだ。
うずしおの かわりに ほかのわざを わすれさせますか?
そんな低スペックに生まれた覚えはないが
天の声に指示されるまま"エアロブラスト"を忘却する。
226:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:08:07 ID:xMVQVHRk
続いて"ハイドロポンプ"に"ほえる"を
ついでに"じこさいせい"に"にほんばれ"を上書き。
これで俺のまともな攻撃手段は
忘却不能な"そらをとぶ"を残すのみだ。
227:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:08:33 ID:xMVQVHRk
『初手わるあがき』なんてことが起こった翌日に
技構成がいつのまにか壊滅していたらどう思うか。
普通一般のトレーナーなら
よほど反抗心があると見て
そのポケモンとの関わりを断つのではないだろうか。
228:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:09:09 ID:xMVQVHRk
デンリュウたちが意地を見せてくれたおかげで
俺がいなくても戦えるということは証明された。
ならば使い捨てのわざマシンを使ってまで
いつまた崩壊するとも知れない俺の技構成を修繕する意味も無いはずだ。
229:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:09:46 ID:xMVQVHRk
やるべきこと。
つまり
パーティをあるべき姿に戻すことだ。
いつまでも俺がパーティにいては
結局ボックスに旧メンバーを残すことになる。
俺はやはりこのパーティを離れなければならない。
230:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:10:27 ID:xMVQVHRk
ブラッキー「……正気なのか?」
突然の背後からの声に振り向くと
いつのまにか現在の手持ちが勢ぞろいしていた。
……今の見てたのか?
ブラッキー「窓から見えたんでな。気になって出てきた。ついでに全員起こした」
なんてことをしやがる……
ブラッキー「……本当に出て行くつもりなのか?」
231:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:11:10 ID:xMVQVHRk
いつぞやの昼飯の時も余計なことをしてくれたよな。
ほっときゃいいのに。
ブラッキー「俺はコイツらにすんなり受け入れてもらった」
ブラッキー「その時のことを思い出して、俺はこれでいいのかって思った」
232:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:11:35 ID:xMVQVHRk
知らねーよ、と
ブラッキーの言葉を突っぱねた。
それでもなおブラッキーは口を開こうとしたので
目の前にさっき覚えた"うずしお"を発生させて無理やり話を遮る。
233:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:12:05 ID:xMVQVHRk
メガニウム「ルギア……」
メガニウムは神妙な顔でこちらを見ている。
ヌオー「そっか……」
ヌオーは納得したようだ。
デンリュウ「んだよ……こんなこと頼んでねぇぞ!」
デンリュウはなぜかキレている。
234:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:12:41 ID:xMVQVHRk
ブラッキー「……本気なんだな?」
本気も何も
引きこもる場所がうずまき島からボックスになるだけの話だ。
俺は何も言わずに
激しく渦巻く水の中に"なみのり"と"たきのぼり"の秘伝マシンを放り投げた。
これで何度でも使える秘伝マシンで俺の抵抗を誤魔化される可能性も消える。
235:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:13:43 ID:xMVQVHRk
これが俺の答えだ。
デンリュウ「……そうかよ」
ああ、そうだ。
デンリュウ「だったらもうボックスでもどこでも行っちまえ!」
そうするつもりだって言ってんだろ。
おかしなこと言うやつだな。
236:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:14:46 ID:xMVQVHRk
ああ、そういえば。
もし。これはもしもの話だが。
オオタチがもしお前らとまた話がしたいって言ったら
暖かく迎えてやってくれ。
ヌオー「それって……!」
メガニウム「オオタチが! オオタチがそう言ってたの!?」
……さあな。
それじゃ
今度"うずしお"の秘伝が必要になった時にでも会おうぜ。
237:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:15:21 ID:xMVQVHRk
トレーナーのリュックを拾い上げ
踵を返して家の中に向かう。
これで俺が為すべきことは為した。
じゃあな。
まぁ……
意外と悪くない5日間だったかな。
238:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:16:03 ID:xMVQVHRk
239:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:17:05 ID:xMVQVHRk
ボックスの中のだだっ広い空間にオオタチがいた。
オオタチ「……なんで、ルギアが?」
ある意味当然の疑問だ。
伝えるべきことは伝えておこう。
すぐにオオタチが引き出される。
端っこになぜか置いてある謎のタマゴに気を取られている時間はない。
240:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:17:48 ID:xMVQVHRk
いいかよく聞けオオタチ。
俺は戦力外になった。
オオタチ「どうして……?」
どうしてとかじゃない。なったんだよ。
お前はこれからずっとパーティに居られるんだ。
241:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:18:34 ID:xMVQVHRk
オオタチ「そうか……」
オオタチは何かを察したようだった。
オオタチ「…………でも、何度も言っただろ。戻ったって何も……」
変わるさ。断言する。
243:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:19:21 ID:xMVQVHRk
オオタチ「……どうしてさ」
お前は戦力と秘伝の立場の違いを気にして身を引いたんだろ?
オオタチ「そうだけど……」
なら大丈夫だ。
だってアイツらは俺を受け入れなかっただろう。
最初から強さなんて関係ないんだよ。
オオタチ「…………」
244:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:19:44 ID:xMVQVHRk
転送準備の起動音が鳴り始める。
ボックスの引き出し操作がもうすぐ終わるようだ。
もはや時間はない。
246:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:20:03 ID:xMVQVHRk
オオタチ「……でも」
ああもう、焦れったいやつだな!
オオタチ「っ!!」
247:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:20:44 ID:xMVQVHRk
たった5日の俺でも分かったぞ!
アイツらがいい奴らだって!
あとはお前の気持ちだけなんだ!
言え!
どうしたいのか、言ってみろ!
248:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:21:13 ID:xMVQVHRk
オオタチ「……で……」
オオタチ「みんなで……」
オオタチ「みんなで……楽しく話したいっ!!」
249:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:21:33 ID:xMVQVHRk
ボックスに
オオタチの叫びがこだました。
その言葉が聞けてよかった。
きっとこれでもう大丈夫だろう。
転送装置が作動する。
250:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:22:01 ID:xMVQVHRk
オオタチ「……君もだよ」
転送の光に包まれたオオタチは
オオタチ「君も、いつか……!!」
最後にそう叫んで
ボックスから旅立っていった。
251:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:22:40 ID:xMVQVHRk
ボックスに独り取り残された俺は
片隅に置いてあったタマゴを手持ち無沙汰にいじくりながら
一つ大きなため息をついた。
252:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:23:04 ID:xMVQVHRk
アイツらはいいパーティだった。
だからだろうか。
不覚にも
寂しいと思ってしまったのは。
不覚にも
羨ましいと思ってしまったのは。
253:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:23:37 ID:xMVQVHRk
オオタチの最期の言葉が脳裏に蘇る。
『君も、いつか』……か。
戦いの旅じゃなければ仲良くできたかもしれないと
オオタチはチャンピオンロードの夜に言っていた。
255:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:24:25 ID:xMVQVHRk
もし旅の全てが終わり
あの家に落ち着く日が来るのなら。
俺が伝説の力を持つポケモンでなく
ただのルギアとしてまた会う日が来るのなら。
その時は、きっと──
256:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:25:21 ID:xMVQVHRk
【悲報】伝説俺、パーティに馴染めない
──完
258:◆aIiv212DRk投稿日:2018/02/05 23:26:45 ID:xMVQVHRk
沢山の支援と感想、ありがとうございました。
旅で伝説ポケモン捕まえたあとどうするかいっつも迷う。
260:マケンカニ@ロゼルのみ投稿日:2018/02/05 23:27:21 ID:o9nGB1Qs
乙
アカン…目頭が…
261:チリーン@ひきかえけん投稿日:2018/02/05 23:27:27 ID:a33RyyU6
乙。
読みやすくて絵も良い味だしてて良かった。
264:カラナクシ@いましめのツボ投稿日:2018/02/05 23:28:27 ID:n4F1/m96
262:グラードン@ロックメモリ投稿日:2018/02/05 23:27:31 ID:l4k9fXkg